訳知りのカスタマイズ。

その完成度はいまなお異次元!

北米を中心に、海外市場で展開するために立ち上げられたトヨタの高級車ブランド、レクサス。そのフラッグシップモデルに位置付けられたのが1989年8月に登場したLS400で、日本では2ヵ月後にトヨタセルシオとして発売された。

エンジンはカタログ値260ps、36.0kgmを誇る、新開発4.0L・V8の1UZ-FEを搭載。LS400はゆとりのパフォーマンスと優れた静粛性を高次元で両立し、各部の精度にも徹底的に拘っていた。その完成度は極めて高く、シボレーやフォードといった北米のメーカーはもちろん、プレミアムセダンというジャンルで盤石の態勢を整えているかのように見えたメルセデスベンツやBMWの立場さえも脅かす存在となった。

「仕事柄、輸入車に乗る機会が多いんですよ。だから、個人的に所有するのも左ハンドル車がいいかなと思いまして。それと、他の人とは被らないクルマということも考えました」とはオーナーの泊さん。そういった条件を満たしてくれるのがLS400だったというわけだ。

ベースは北米仕様。まず濃い目のゴールドとブラウンメタリックで上下を塗り分けた2トーンのボディカラーは、実は全塗装されたもの。ゴールドはメルセデスベンツの純正色を2色混ぜ合わせたオリジナルで、言われなければレクサス純正のように思えてしまうのが技あり。加えて、ボディ同色でまとめられたフロントグリルやホイールも、見た目の印象を変えるのに一役買っている。

北米仕様や日本仕様と違うのはテールランプユニット。欧州仕様は横長ナンバープレートの装着を見越してユニット自体の幅が狭い設計となる。そのため、ナンバープレートの左右にリヤパネルが露出する。

また、フロントバンパーとテール周りにも欧州仕様のパーツが流用される。特にフロントバンパーは北米仕様にも日本仕様にも存在しないフォグランプ内蔵型で、LS400やセルシオのオーナーにとって垂涎のパーツとなっている。純正品の組み合わせで巧みに個性をプラスしているのが見事だ。

ホイールは18インチのBBS RG。ディスク面がボディ下側と同じブラウンメタリックで塗装され、足下に重厚感をプラスする。「軽くツメ折りしてますけど、フロント9J、リヤ10Jという組み合わせは珍しいと思いますよ」と泊さん。

ステアリングホイールはセンターコンソールのパネルに合わせ、4本スポークのナルディウッドに交換。左ハンドルのため、ATセレクターレバーのロック解除&オーバードライブスイッチは左側に付く。

泊さんに話を聞いていて面白いなと思ったことが一つ。それは純正パーツの供給状況についてだった。LS400も初代セルシオも生産終了は1994年。つまり、最終型でもすでに30年以上が経過していることになる。泊さんが言葉を続ける。

「同じUCF10でも、セルシオだと新品で出てこなくなったパーツが多いんです。日本では走っている姿を見かけることもなくなりましたもんね。一方、アメリカでまだまだ現役なのがLS400。純正パーツも普通に入手できるので、この先もしばらく困ることはなさそうです」。

維持していく上で、逆輸入車の方が環境的に恵まれているという現実。プレミアムセダン界に大きな一石を投じたLS400の未来は明るそうだ。

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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