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今日は何の日?■ホンダのフラッグシップセダンとして登場したレジェンド
1985(昭和60)年10月22日、ホンダ初となる高級セダン「レジェンド」が発表(発売は翌日)された。バブル好景気でハイソカーのような高級セダンが飛ぶように売れる中でホンダが投入したレジェンドは、高級セダンとしては希少なFFレイアウトでホンダ初のV6エンジンを搭載したことなどで大きな注目を集めた。

ローバー社との共同開発で誕生したレジェンド
ホンダは、1979年に英国のBL(ブリティッシュ・レイランド)社と技術提携を締結し、欧州における4輪車生産の第一歩を踏み出した。提携して2年後の1981年には、初代「バラード」を欧州で「トライアンフアクレイム」としてライセンス生産を開始して人気を獲得した。

高級車「レジェンド」は、ローバー社との共同開発で誕生し、1985年10月のこの日にレジェンド、2年後の1987年に欧州で「800シリーズ」として」発売された。なお、BL社は1986年にローバー社へと改称した。

1990年には、ホンダとローバー社は資本提携を結び、1990年~1994年までの5年間に、両社で多くの共同開発車やOEM供給車を世に送り出した。共同開発車としては、アッパーミドルクラスの「ローバー600」シリーズは、アコード系の「アスコットイノーバー」をベースにしたモデル、小型車ながら上級クラスに匹敵する「ローバー400シリーズ」は、「コンチェルト」の兄弟車、「ローバー200シリーズ」のベースは「バラード」である。
また、1990年代の日本のRVブームに対応するため、ホンダは「ランドローバーディスカバリー」のOEM供給を受け、「クロスロード」と名乗って1993年~1998年まで販売した。シャープなフォルムと優れた4WD性能で、大ヒットとはならなかったが一定の人気を獲得した。
FFでホンダ初のV6エンジンを搭載したレジェンド
レジェンドがデビューした1985年は、シーマ現象やハイソカーというバブル時代を象徴する新語が生まれ、ホンダとしてもそのブームに乗らないわけにはいかなかった。加えて、1986年3月に米国で立ち上げた高級ブランド「アキュラ」のフラッグシップモデルとしての期待も高かった。

レジェンドは、高級セダンとしては珍しいFFレイアウトで、5ナンバーと3ナンバーの両方を設定。Cd値0.32の優れた空力性能を発揮する低いフロントノーズと広い室内空間が特徴の4ドアセダン(1987年に2ドアハードトップも設定)。インテリアも高級車らしくまとめられていたが、華やかな高級装備の面ではやや物足りなさがあった。

パワートレインは、レジェンド用に開発された最高出力145ps/最大トルク17.0kgmの2.0L、165ps/21.5kgmの2.5L V6 SOHCの2種エンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、高級車と言えばFRが定番の中でFFレイアウトを採用。ただし、ホンダらしくFFに起因するネガな面は解消されていた。


車両価格は、248.0万円(2.0L)/313.5万円(2.5L)に設定。当時の大卒初任給が14万円程度(現在は23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約407万円/515万円に相当する。

レジェンドは、ホンダが初めて投入した高級車として大きな注目を集めたが、バブル時代のクルマとしてはやや地味な印象が強く、期待したほど販売は伸びなかった。
ホンダらしく最先端技術を採用し続けたレジェンド
レジェンドは、その後2015年登場の5代目までホンダのフラッグシップセダンとして君臨したが、2022年をもってその歴史の幕を降ろした。その間、ホンダらしく多くの先進技術を採用してきた。

・1987年:マイナーチェンジで国産車として初めて運転席にSRSエアバッグシステムを装備。
・1988年:タービンの開口面積を可変させるウイングターボで全域での過給を実現。
・1989年:世界初のFF車のTCL(トラクションコントロール)システムを導入。
・2004年:4代目に搭載された3.5Lエンジンは、280ps自主規制解禁の第1号として最高出力300psをマーク。
・2014年:5代目には3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載。
・2015年世界初となる歩行者への衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」を採用。
・2021年:自動運転レベル3に適合した“ホンダ・センシングエリート”を搭載した「Hybrid EX Honda SENSING Elite」を100台限定の1100万円で販売し、大きな話題を集めた。

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初代レジェンドは、それまでの高級セダンとは一味違う個性的なスタイリングと軽快な走りで一定の人気を獲得したが、当時爆発的に売れていたトヨタの「マークII」や日産自動車「シーマ」に代表される“ハイソカー”に較べると、販売的には見劣りした。ローバー社との共同開発であったため、当時の日本流のバブリーなクルマではなかったことがその一因だろう。
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