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今日は何の日?■日欧市場をターゲットにしたハッチバック車オーリス
2006(平成18)年10月23日、トヨタは「カローラ・ランクス/アレックス」の後継となる5ドアハッチバック「オーリス」を発売した。先代のカローラ・ランクス/アレックスはカローラベースの欧州市場を意識した5ドアハッチバックだったが、オーリスは基本的には同様のコンセプトだが、ひと回り大きく3ナンバーボディとなった。

オーリスの先代にあたるカローラ・ランクスとアレックス
「カローラ・ランクス」とその兄弟車である「アレックス」は、2001年1月にデビューした。2000年8月にモデルチェンジした9代目「カローラ」の後部を切り詰めた2BOX型5ドアハッチバックモデルである。2BOXハッチバックが人気の欧州市場などに向けたモデルでもあり、海外向けには3ドアも用意された。

カローラ・ランクス/アレックスは、シャシーはセダンと共通、全長はセダンより190mm短くしてトランク部分を取り去り、リアハッチを取り付けて仕立てた。全長は短いが、ホイールベースと全高を拡大して室内空間はセダン並みが確保された。

パワートレインは、最高出力110ps/最大トルク14.6kgmを発揮する1.5L 直4 DOHC、136ps/17.4kgmの1.8L直4 DOHCの2種エンジンと4速ATおよび6速MT(1.8Lのみ)の組み合わせ。駆動方式は基本FFで、1.5L車には4WDも用意された。
安全装備は充実しており、SRSエアバッグ、ABS、EBD(電子制御ブレーキ配分アシスト)を標準装備、VSC(スタビリティコントロール)やTRC(トラクションコントロール)などがオプション設定され実用性の高いモデルだったが、単なるカローラの派生車として評価され、新鮮味をもって受け止められなかったようだ。
基本キープコンセプトながらひと回り大きくなったオーリス

カローラ・ランクス/アレックスの実質的な後継車である「オーリス」は、2006年10月のこの日にデビューした。基本的には、先代のキープコンセプトで日欧を重視した5ドア(欧州向けには3ドアも用意)ハッチバックで、新しいプラットフォームの採用によりボディサイズがひと回り大きくなり、3ナンバーボディとなった。

スタイリングは、トヨタの欧州デザイン拠点が手掛けて、一体感のあるフロントマスクやワイド感あるリアビューが特徴。インテリアでは、欧州の伝統的な建築手法であるフライングバットレス(空飛ぶ梁)風デザインが注目された。



パワートレインは、カローラシリーズで搭載されている最高出力110ps/最大トルク14.3kgmを発揮する1.5L 直4 DOHC、136ps/17.8kgmの1.8L 直4 DOHCの2種エンジンとSuper CVT-iの組み合わせだが、1.8L車にはマニュアル感覚で操れる7速スポーツシーケンシャルシフトマチックが用意された。
車両価格は、標準グレード(2WD)で162.225万円(1.5L車)/191.625万円(1.8L車)に設定。欧州仕込みの完成度の高いハッチバックで欧州では人気となったが、日本ではアピール力に乏しい地味なイメージが付いて販売も伸びなかった。
日本ではイマイチだが、欧州では人気モデルへ
オーリスは2012年にスポーツハッチバックと謳った2代目にモデルチェンジしたが、やはり日本では今ひとつ存在感を示せず、2018年に「カローラスポーツ」を名乗って新型車としてデビューした。一方で海外に目を向けると、オーリスは特に欧州ではヤリス(ヴィッツ)に次ぐ人気を獲得した。

日本でも、1980年代にはハッチバックが人気だったこともあるが、1990年代に入るとミニバンやステーションワゴンのように多くの人や荷物が運べる実用性の高いクルマが人気となり、どうしても室内や荷室が狭くなりがちなハッチバックが敬遠されるようになった。

一方で欧州は、都市部を除けば道路が狭く、コンパクトで使いやすく、高速性能に優れて長距離走行でも快適なハッチバックが人気なのだ。ただし、最近は日本でも2代目以降のプリウスやカローラスポーツ、Mazda3のようなハッチバック車が人気を獲得しており、ハッチバックが不人気という過去の話を覆しつつある。
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オーリスは、欧州志向の強いクルマなので高速走行でも疲れずにキビキビとした走りができる点は評価された。日本市場にもフィットさせるという狙いで、ハイブリッドモデル(2016年4月に投入)をもう少し早く投入しておけば、日本でもファミリー層に支持されたのではと思う。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


