新時代SUVタイプの高額ショーファードリブン




外観はどちらも直線基調でよく似た雰囲気だが、ボディサイズはカリナンの方が一回り大きく、ホイールベースが300mm以上違うこともあってカリナンの方が伸びやかな印象を受ける。
乗車定員はセンチュリーが4人で、カリナンは4人乗りと5人乗り仕様選択可能だ。どちらも4人乗りは後席に大型のセンターコンソールが備わり、ショーファードリブンとして十分な空間と快適性が備わっている。ただし、荷室空間はカリナンの方が明らかに広い。
内装の雰囲気は両者で対照的だ。どちらも総本革張りで、職人による手作業で細部まで丹念に仕上げられる点は共通だが、カリナンの革と金属とウッドをふんだんに用いた豪華な内装はクルマと言うより調度品のようだ。シリーズIIでは、各所のレザーに微細な穿孔による絵柄が入れ込まれている点も大きな特徴となる。
一方、センチュリーの内装は、アルミと本杢加工を組み合わせた装飾パネルや、刺繡があしらわれたシート表皮など、派手さはないが落ち着いた高級感が特徴だ。天井には大型パノラマルーフが標準で備わり、リヤドアガラスには液晶素子に通電することで白く不透明になる調光機能付ガラスが採用され、障子のように外からの視線は遮りつつも外光は通す仕立てになっている。
また、センチュリーには後席背面にはラゲッジとの間仕切りが備わっており、後席のこもり音や反響音対策などに効果を発揮する。同じような間仕切りはカリナンにもオプションで追加可能だが、センチュリーの場合はこの部分に左右ピラーを結合する補強フレームが通っている。
トヨタセンチュリー
ボディサイズ=全長5205mm×全幅1990mm×全高1805mm
ホイールベース=2950mm
車両重量=2570kg
タイヤサイズ=225/55R20(前後)
ロールスロイス カリナン シリーズII
ボディサイズ=全長5355mm×全幅2000mm×全高1835mm
ホイールベース=3295mm
車両重量=2660kg
タイヤサイズ=255/50R21(前)285/45R21(後)
モーターのようなV12エンジンのカリナンと、モーター駆動のセンチュリー


カリナンのパワートレインは、BMW製V型12気筒エンジンと8速ATの組み合わせだ。V型12気筒エンジンは、稼働時に生じる一次振動と二次振動を理論上完全に相殺できるため低振動で、モーターのように滑らかな回転フィールが特徴となる。
一方のセンチュリーは、本物のモーターを使って走行するPHEVだ。エンジンはレクサス RX450hにも搭載されている2GR-FXSで、フロントに最高出力182ps/最大トルク270Nm、リアに109ps/169Nmのモーターを組み合わせて走行し、EV走行換算距離は69kmでハイブリッド走行時はWLTCモード14.2km/Lの優れた燃費性能を誇る。
モータードライブのメリットは静粛性や燃費性能だけでなく、大トルク高レスポンスによる駆動制御にもある。センチュリーに備わる「リアコンフォートモード」では電子制御ダンパーと後輪操舵システム、ブレーキを協調制御し、加減速時やレーンチェンジ時の車体の傾きや揺れを抑えるとともに、後席にかかる慣性加速度を低減するように制御される。
カリナンにも後輪操舵システムが搭載され、回転最小半径は約6.6mに抑えられているが、センチュリーの5.5mには届かない。両車の性格は、センチュリーがショーファードリブンらしい性能となっており、カリナンはドライバーズカーとしての用途にも応える性能が与えられている。
なお、カリナンには、よりドライバーズカーとしての性能を高めたブラックバッジ(5077万円)もラインナップする。
トヨタ センチュリー
エンジン形式=V型6気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=3456cc
最高出力=262ps/6000rpm
最大トルク=335Nm/4600rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=4WD
ロールスロイス カリナン シリーズII
エンジン形式=V型12気筒ガソリンエンジン
排気量=6748cc
最高出力=571ps/5000rpm
最大トルク=850Nm/1600rpm
トランスミッション=8速AT
駆動方式=4WD
「和」と「洋」の極み




トヨタ センチュリーの価格は2700万円、ロールスロイス カリナン シリーズIIは4645万4040円だ。
ただし、以上の価格はあくまでベース価格であり、カリナンもセンチュリーも内外装の装飾などを好みにカスタマイズできるため、どちらもオーダーの内容によって価格は大きく変動する。とくにカリナンでは、ブラックの天井に光ファイバーで星空を模した「スターライト・ヘッドライナー」が人気の追加装備だ。
両車には大きな価格差があるため、どちらが優れたクルマか単純な比較はできない。少なくとも、あらゆる点により高いコストがかかっているのはカリナンの方となる。
なかでもカリナンの足回りに関しては、エアサスペンションと電子制御式ダンパー、アクティブアンチロールバーなどのコスト高な機構が備わり、さらにステレオカメラで検知した前方の路面の凹凸をスキャン各機構を最適制御することで「魔法の絨毯」と評される優れた乗り心地を発揮する。
日本車らしい「和」の佇まいが備わるセンチュリーと、欧州の高級車らしい圧倒的な「洋」の存在感を放つカリナンは、同じSUVタイプのショーファードリブンであっても対照的な魅力を備えたクルマと言えるだろう。
車両本体価格
トヨタ センチュリー:2700万円
ロールスロイス カリナン シリーズII:4645万4040円
