ローダウン&ガラスプリントアンテナでマイナス45mmの全高1545mmを実現

ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」に加わった新グレード「RS」。グランドコンセプトに「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」を掲げ、「ダイナミクス」と「デザイン」というふたつの要素を重点的に強化している。

ホンダ・ヴェゼルRS
ホンダ・ヴェゼルRS

ダイナミクス面では、スプリングとダンパー、EPS(電動パワーステアリング)に専用セッティングを施し、リニアで軽快な操縦安定性を追求。そしてデザイン面では、「プレミアム&スポーティ」をテーマに内外装の各部がブラッシュアップされた。ここでは、デザインの変更点について詳しく見ていこう。

エクステリア:光の当たり方でさまざまな表情を見せる専用フロントグリル

エクステリアを担当したのは、本田技術研究所 デザインセンターの石川厚太氏だ。ヴェゼルRSのエクステリアデザインの最大のテーマは、標準モデルとの差別化を明確にし、「RSならではの特別感」を際立たせること。そのため外観の変更は多岐にわたり、とくにフロントグリルはRS専用として完全に新設計され、一目でRSとわかる独自の存在感を放っている。

エクステリア担当:石川厚太氏(本田技術研究所 デザインセンター)

ホンダにおける「RS(ロードセーリング)」の称号は、サーキット志向のハードなスポーツモデルとは異なり、日常のドライビングシーンにおいてスポーティな走りと洗練されたスタイルを両立することを目的としている。ヴェゼルRSのデザインはこの思想を忠実に体現しており、アグレッシブさを過度に強調するのではなく、「大人のスポーティ」という価値観を基調に据えている。

フロントグリルを構成する格子は上下で面の角度が異なっており、光の当たり方や見る角度によって様々な輝き方をする。これにより、表情豊かなフロントフェイスを演出している。

デザイン開発の初期段階では、よりスポーティさを強調した複数の案も検討されたが、最終的に採用されたのは、全体のフォルムとディテールの質感によって品位あるスポーティさを表現する現在のデザインである。これは、装飾的な派手さに頼らず、本質的な造形で個性を際立たせるというRSの哲学を具現化した結果だ。

加飾についても、従来のクロームメッキに代わり、ブラッククロームや艶のある黒のパーツを効果的に用いることで、華美にならずに上質さと存在感を両立。これにより、RSが持つ「力強さ」と「モダンさ」が融合し、洗練されたスポーティスタイルを実現している。

フロントおよびリアバンパーのロワパーツはRS専用設計とされ、下部にはブラッククロームメッキの加飾が施されている。通常のメッキが持つ「ギラギラ」とした派手な輝きを抑えながら、上質で落ち着いた印象を与える仕上げだ。その加飾を左右いっぱいに広げることで、ワイド感と低重心を際立たせ、ヴェゼルRSのエクステリアに「下半身の力強さ」を視覚的に表現している。
18インチ・アルミホイールはRS専用カラー。切削面にブラックのクリアコーティングを施工しており、「シックで大人な足まわり」を演出する。

さらにヴェゼルRSの大きなトピックのひとつが、低重心化の実現である。スプリングとダンパーを専用設計したローダウンサスペンションの採用に加え、従来のシャークフィンアンテナをガラスプリントタイプに変更したことで、全高はZグレードの1590mmから1545mmへと45mm低下。これにより、走行安定性が高められのはもちろんだが、視覚的にもスポーティな印象を強調している。また全高1545mmという設定は、都市部に多い機械式立体駐車場の高さ制限にも対応しており、デザイン性と実用性、両面の向上に寄与しているというわけだ。

従来のシャークフィンアンテナをガラスプリントタイプに変更することで、全高抑制に貢献。
全高は1550mmまでという制約が多い都市部の機械式立体駐車場。全高1545mmのヴェゼルRSなら駐車が可能だ。

ボディカラーは全5色で構成され、新色こそないものの、RSのスポーティなスタイリングを際立たせる訴求色として「プレミアムクリスタルレッド・メタリック」を設定している。

「プレミアムクリスタルレッドメタリック」と纏うヴェゼルRS。

インテリア:レッドのアクセントを随所に配置してドライバーの気持ちを盛り上げる

インテリアにも見どころが多い。担当したのは本田技術研究所 デザインセンターの岩崎麻里子氏だ。ヴェゼルRSのインテリアデザインは「上質さとスポーティテイストの融合」をテーマに掲げ、既存のヴェゼルが持つ洗練された世界観を基盤に、スポーティなエッセンスをさりげなく加えることで、日常の中でも気持ちが高ぶるような空間づくりを目指している。その方向性はエクステリアと共通しており、ホンダの究極のスポーツモデルであるタイプRのようなハードさとは異なり、「控えめでありながら情熱を感じる」バランスの取れたスタイリングに結実している。

インテリア担当:岩崎麻里子氏(本田技術研究所 デザインセンター)

インテリアのテーマカラーは、スポーツ表現の王道ともいえる「黒と赤」のコンビネーション。ブラックを基調にレッドのアクセントを配し、インパネやドアライニングに施されたレッドのピンストライプは、トーンをやや暗めに設定しメタリック感を加えることで、ドライバーの視覚的負担を抑えつつ落ち着いた印象を与えている。

ブラックをベースにレッドのアクセントをあしらったインテリア。王道のスポーティ感だ。

一方でステアリングには鮮やかなレッドステッチが施されているが、これはヴェゼルの他グレードにはない専用の要素。「ドライバーの最も目に入る位置に情熱を感じさせるポイントを置く」という意図を形にしたものだ。加えてルーフライニングにはブラックを採用し、室内の色数を減らすことで没入感を高め、赤のアクセントをより際立たせる効果を生み出している。

ステアリングにはレッドステッチがあしらわれる。ドライバーの目が届きやすいところだけに、視覚的効果は大きい。
ルーフライニングはブラック。広さ感を演出するなら明るい内装色の方が有利だが、ブラックにすると室内の雰囲気がグッと引き締まる。

シートはブラックを基調としつつ、異なる素材を組み合わせて機能性と質感を両立。中央部にはラックススエードを採用し、走行中の身体の安定をサポートするとともに、RSらしい特別な存在感を演出している。サイド部と背面にはプライムスムース(合成皮革)を使用し、耐久性と上質感を確保。さらにベース表皮には凹凸感のあるファブリックを組み合わせ、豊かな表情を持つシートデザインとしている。こうした素材構成は、「見た目の演出だけでなく、機能性を含めてデザインする」というRSの思想を体現するものだ。

リヤシート
フロントシート
プライムスムース、ラックススェード、ファブリックを組み合わせたシート。レッドステッチのアクセントが効いている。

細部にも遊び心が込められており、インテリアには“Amp Up Your Life”のマークがあしらわれている。このマークは現行型デビュー時に導入されたもので、「気持ちの高ぶり」を象徴するデザイン要素。RSでは専用色の赤を採用し、より際立つアクセントとして機能している。

心電図の波形のような“Amp Up Your Life”のマーク。ヴェゼルRSでは、ブラック×レッドで他グレードと差別化を図っている。

ヴェゼルRSは、ヴェゼルの幅広い顧客層の中でも「特別なクルマを所有することで優越感を得たい層」と、「日々の運転やドライブそのものに高揚感や楽しさを求める層」をターゲットとしている。走りとデザインの両面で心を動かす存在を目指したヴェゼルRSが、そうしたユーザーの感性にどこまで響くのか、注目したい。

ホンダ・ヴェゼルRS 主要諸元

全長×全幅×全高:4385mm×1790mm×1545mm
ホイールベース:2610mm
車重:1380kg[1460kg]
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R ド・ディオン式
駆動方式:FWD[AWD]
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LEC
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm
圧縮比:13.5
最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
最大トルク:127Nm/4500-5000rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:40L
価格:374万8800円[396万8800円]
※[ ]内はAWDモデル