ここまでハイチューンなパルサーはレア過ぎる!
2.0L化やドクミッションも投入し戦闘力アップ
1995年のモデルチェンジでリリースされたN15系パルサー。当初はSR18DEを搭載するGTIが最上位となる構成だったが、WRCからの撤退でGTI-Rが廃止となったこともあり、チューニング系ユーザーが離れたムードがあった。

この状況に一矢報いる新たな戦略として投入されたのが、ライバルのシビックを上回るスペックを持つSR16VEを搭載したVZ-Rの追加設定だった。可変バルブタイミング&リフト機構を備えたNEO VVLを組み合わせたSR16VEエンジンは軽快でハイパワー、軽量コンパクトな車体との組み合わせで、ワンメイクレースやS耐マシンとしても採用されサーキットを駆け抜けた。

この素性の良さを活かしつつ、過給によってパワーを増強したのが、シードレーシングが手がけるVZ-R。先日まではHKS・GT2スーパーチャージャーを組み合わせていたが、更なる刺激を求めるオーナーの依頼で新たにギャレット・GT2781Rタービンを使ってリフレッシュ。420psもの暴力的なパワーを備えるFFストリートファイターへと変身させた所だ。
「スーパーチャージャーを選択していた時は、低速のトルクが有り余りすぎてホイルスピンが止まらなかったんですよ。ターボ化によって適度に低回転域のトルクが削られ、高回転までパワーが伸びていくことで回転をワイドに使える用になりオーナーさんも大満足とのこと。スーパーチャージャー仕様のころよりパワーを上げたのに乗りやすくなっているんですよ」と語るのは代表の香田さん。

もちろん過給機をポン付するのではなく、エンジン本体もフルに手が加えられている。腰下はプリメーラ用のSR20VEから流用し、ピストンやコンロッドはエクストレイルのSR20DET用で圧縮を下げる。なお、ヘッドはSR16VE用をそのまま使用している。
「同じ1.6LクラスのFFではシビックが比較対象になりますよね。でもシビックは定番のチューニングメニューが確立されているんですが、マイナーだったパルサーには定番メニューがないんですよね。だから自由な発想で色々試すことができるのは、逆に作り手としても楽しいところです。それでいてSR系はバリエーションも色々あるので、排気量アップも簡単にできちゃいましたしね」。

エキマニはシードレーシングでワンオフ、タービンはアクチュエーター式のギャレットGT2871Rをセットしている。

ターボ化に合わせてエキマニからマフラーまでを一新。特にマフラーは80φでワンオフ、キャタライザーも装備しつつももスムーズに排気できるレイアウト目指した。

スーパーチャージャー時代もインタークーラーは前置きレイアウトを採用していたが、ターボの出力には容量不足が懸念されたため大型化している。

制御系はHKS F-CON Vプロを利用。燃料系に関してはスーパーチャージャー時代に構築したもので、サードのインタンクポンプやニスモの740ccインジェクターを組み合わせる。

ミッションはオーナー自らがオーストラリアから輸入した5速ドグミッションを装着する。欧州スポーツモデルやスーパーバイクにも絶対に負けたくないというオーナーの本気っぷりが伝わるパーツだ。

車高調はピットロードM製。パワーアップに合わせて今回、エンドレスの4ポッドキャリパーをフロントに装着し、16インチホイールの仕様を前提に280mmローターを選んだ。

年に2回ほどのサーキット走行にも行くが、普段はストリートで楽しむため、エアコンなどの快適装備も残されている。インテリアは使いやすさと快適性を最優先している。

ボンネットは軽量化とともに排熱性を高めるためカーボン製に変更される。社外パーツが少ない車種のため、選択肢が限られるのが難点だという。

フロントフェンダーは社外のファイバー製をベースにダクト加工を施したワンオフ。アーチ形状も変更されており、より精悍なスタイリングを作り上げている。

ブレーキのアップグレードと225サイズのタイヤを収めるため、リヤフェンダーは自然な形状で叩き出しを行なっている。

ちなみに、現在は燃料計のキャパが飽和しているので、今後アップデートでさらなるパワーを得ることも可能とのこと。尽きることのない好奇心と探究心を糧に、さらに進化を目指すパルサーは、定番スポーツカーの陰に隠れた逸材なのである。
●取材協力:シードレーシング 千葉県柏市藤ヶ谷562-8 TEL:04-7138-6340
【関連リンク】
シードレーシング
https://www.seedracingcar.com

