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自衛隊新戦力図鑑

飛行場が破壊されても戦い続ける

JAS-39 グリペンは、スウェーデンのSAAB(サーブ)社が1990年代より製造する戦闘機シリーズであり、J/A/Sの文字はそれぞれ戦闘・攻撃・偵察の意味を持つ。つまり、さまざまな任務に対応するマルチロール・ファイター(多用途戦闘機)というわけだ。E型はその最新モデルであり、最初の機体が10月20日にスウェーデン空軍へと納入されたばかりだ。

ブラジル空軍のグリペンE。同国はいちはやくE型を採用している(写真/SAAB)

見ての通り、グリペンはステルス機ではない。「いまどき、ステルス機でもない戦闘機なんて」と思う方がいるかもしれないが、グリペンには大きな強みがある。それは「しぶとく戦う」能力だ。冷戦時代、ソ連に近い同国では開戦早々に航空基地は攻撃される可能性が高いと考えた。普通の戦闘機なら、そこでお終いだが、グリペンはダメージを受けた滑走路や設備が充分でない小飛行場でも戦い続けられるように設計されている。

優れた短距離離着陸能力を持ち、わずか500mの滑走距離で離陸し、600mあれば着陸できるという(一般的に戦闘機の運用には2500m程度の滑走路を用いる)。そして、強化されたランディングギア(主脚)は、機体を充分な高さに支えることで、エンジン吸気口に地上の異物が侵入することを防いでいる。

また、「高速道路から発進できる」という話はよく知られている。ただ、これは離着陸の負荷や排熱に耐えられるよう、事前に代替滑走路運用を考えて設計された道路を使うことが前提となっている。実際、スウェーデンは冷戦時代からこうした道路を国内に複数建設して、有事に備えてきた。

道路上から飛び立つスウェーデン軍のグリペン(C型)。グリペンは軽量なため、あらかじめ用意された代替滑走路以外でも運用可能という話もあるようだが、そうだとしても一定の路面強度は必要だろう。また、滑走路として使うためには中央分離帯や標識など、飛行の邪魔になるものを取り外せなければならない(写真/NATO)

加えて、複雑な地上設備がなくとも再補給や再武装ができるように考慮されている点も、大きな特徴だ。サーブ社の小人数の兵員だけで次のフライトに向けた準備を行なうことが可能であり、着陸から20分程度で再び空に上がることができるという。

現在、ウクライナはロシアの長距離ミサイル・ドローンにより国内奥深くまで攻撃を受けており、これは航空基地も例外ではない。逃げ隠れできない航空基地の“脆弱性”という問題に、どう対応し、戦っていくのか――この点で、冷戦期から続くスウェーデンの戦略と、そのために生み出されたグリペンは、ウクライナにとって最適解と言えるだろう。

グリペンは基地施設に頼らず、比較的簡易で移動可能な器材と少人数の要員で再補給ができるように開発されている。こうした地上側の態勢も「しぶとさ」を支えている(写真/NATO)

長く続く戦いへの準備

グリペンのアドバンテージは、コスト面にもある。最新型であるE型は機体単価で言えば、F-35と変わらず安価というわけではないが、飛行時間当たりのコストではF-35が約30000ドルであるのに対して、グリペンEは5000~8000ドルにとどまる。まとまった数を、長期にわたり運用することを考えれば、国家レベルで「しぶとく戦う」力を維持することができる。

これまでウクライナは短期的な入手のしやすさから、既存の機体が多いF-16の供与を求めてきた。一方で今回のグリペン導入は新規製造であり、長期的な調達計画となる。実際、スウェーデン政府高官は「最初の納入は3年以内」「全体として10年以上かかる」と発言している。

飛行するグリペンE。現在のところ、ウクライナ空軍は現在、旧ソ連系戦闘機(MiG-29など)を40機程度、西側供与のF-16を20機程度、ミラージュ2000を数機、保有しているとみられている。グリペンEの生産を待たず、既存機を先行して送る案も出ているようだ(写真/SAAB)

ロシアによるウクライナ侵攻から今年で3年が経過した。ロシアの侵略的姿勢はますます強まり、それは短期的な問題とは言えなくなっている。停戦が実現するにせよ、戦争が続くにせよ、ロシアの脅威が続くなかでウクライナがどう生き残っていくのか――それは悲壮な判断に基づく導入決定と言えるかもしれない。

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