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今日は何の日?■イタリアンデザインとパワフルな走りが特徴のアリスト
1991(平成3)10年31日、トヨタは「クラウン」の主要なコンポーネントを流用した高級スポーティセダン「アリスト」を発売した。ジウジアーロ率いるイタルデザインが手掛けたアグレッシブなスタイリングと、パワフルなターボエンジンによる圧巻の走りが特徴である。

クラウンのコンポを流用した高級スポーティセダンのアリスト
1991年10月のこの日デビューした「アリスト」は、9代目「クラウン」のエンジンやシャシーなど基本コンポーネントを流用した。ただし、アリストは高級スポーティセダンという位置付けであり、クルマとして方向性はクラウンとは大きく異なっていた。

特徴のひとつは、イタリアのジウジアーロが率いるイタル社が手掛けたアグレッシブなスタイリング。低めのノーズとフラッシュサーフェス化されたヘッドランプやグリル、リアエンドのハイデッキなど空力的にも優れていた。

もうひとつの特徴は、高性能エンジンによる優れた走行性能である。エンジンは、「マジェスタ」と同じ最高出力230ps/最大トルク29.0kgmの3.0L V6 DOHC、280ps/44.0kgmの3.0L V6 DOHCインタークーラーツーウェイ・ツインターボを搭載。トランスミッションは4速ATのみ、駆動方式はFRである。ターボエンジン搭載車は、その圧倒的な走りで高性能セダンを求めるファンを魅了した。

サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式で、ピエゾTEMS、TRC、トルセンLSDなどをグレードに応じて設定し、高級セダンらしく先進安全技術も充実していた。

車両価格は、2グレードで380万円(NA車)/474万円(ターボ車)に設定。当時の大卒初任給は、17.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約499万円/623万円に相当する。
アリストは米国ではレクサスGSとして発売
日本市場がバブル景気で沸き返っていた1989年9月、トヨタは米国で高級車ブランド“レクサス”を立ち上げた。小型車の成功で世界を席巻した日本車だが、欧米の高級車に対抗するためには高級ブランドの立ち上げが必要だった。
レクサスブランド立ち上げと同時に1989年に発売されたレクサスの最初のモデルは、日本では「セルシオ」として販売された「レクサスLS」と「カムリ」の上級モデル「プロミネント」がベースの「レクサスES」だった。さらに1991年には、レクサス初のパーソナルクーペ「レクサスSC」が投入され、日本では3代目「ソアラ」として発売された。
そして、1993年に国内で販売されていた「アリスト」を、海外で「レクサスGS」として発売。ただし、日本のアリストにはターボ車があったが、LSはNA車のみの設定だった。
3代目から日本でもレクサスGSを名乗る

1997年に、アリストは2代目にモデルチェンジしたが、2005年8月に日本でもレクサスブランドが開業した。これを機に、アリストは3代目にモデルチェンジを迎えたが、同時にアリストの名は消滅し、日本でもレクサスGSを名乗るようになった。
アリスト改め初代レクサスGS(海外では3代目)は、「GS430」と「GS350」の2車種が設定された。スタイリングは、低く構えたノーズから滑らかな形状のCピラーを経てハイデッキのリアエンドに収束するスポーティなフォルム。インテリアについても、先進技術と最高の素材を融合させ、特にメーターはアルミをメーターフェイスに使って磨き上げた金属光沢が高級感を印象づけた。

ラインナップは、280ps/43.8kgmを発揮する4.3L V8 DOHC搭載の「GS430」と、315ps/38.4kgmを発揮する3.5L V6 DOHCエンジンを搭載した「GS350」の2種で構成。トランスミッションは、電子制御6ATが組み合わされ、駆動方式はFRを基本にGS350には4WDが設定された。
翌2006年3月には、日本のレクサスブランドとして初のハイブリッド車「GS450h」を追加。エンジンは、GS350用の3.5Lだが、モーターとの組み合わせにより4.5L並みの345psを発生することからモデル名を「450」にしたのだ。さらに2007年10月には、347psを発揮する新開発の4.6L V8 DOHCエンジンを搭載した「GS460」が加わり、同時にATが6速から8速ATに換装された。
ちなみに、車両価格は520万円(GS350)/630万円(GS430)に設定された。
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当時のバブル好景気の中でトヨタは、アリストの他にも多くのセダンを投入した。クラウンの上には「セルシオ」、下には「ウインダム」、その下には「マークII 3兄弟(マークII/チェイサー/クレスタ)」、「カムリ/ビスタ」と、今では考えられないラインナップ構成だ。
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