GR86より一回り大きなプレリュードでも後席の使用は限定的




プレリュードの全長はホンダ シビックに近い4520mmでGR86よりも一回り大きく、後席もわずかに広い。しかし、2ドアクーペだけに居住性や実用性への過度な期待は禁物だ。
GR86の後席は原則として子ども用であり、女性でも長時間の乗車は困難となる。プレリュードなら男性の大人がなんとか乗れる広さが確保されているが、それでも長時間の乗車には向かない。どちらも2人乗りと割り切った方が良さそうだ。
荷室容量はプレリュードが264L で、GR86が231L となる。プレリュードの荷室は底が浅いがハッチバックであるため大きな荷物も積みやすい。一方、ノッチバックとなるGR86は開口部がやや小さく、一般的なサイズのゴルフバッグが2個積める広さは確保されているものの大きな荷物の積み込みは少々不便だ。
外観はどちらも美しいファストバックスタイルである点は共通だが、プレリュードのルーフにはレーザー溶接で接合されることでルーフモールがなく、ドアハンドルは格納式の“フラッシュアウターハンドル”とするなど先進的な印象を受ける。
ホンダ プレリュード
ボディサイズ=全長4520mm×全幅1880mm×全高1355mm
ホイールベース=2605mm
車両重量=1460kg
タイヤサイズ=235/40R19(前後)
トヨタ GR86 RZ
ボディサイズ=全長4265mm×全幅1775mm×全高1310mm
ホイールベース=2575mm
車両重量=1290kg
タイヤサイズ=215/45R18(前後)
“e:HEV”と“S+シフト”で純内燃機関車のように走るプレリュード


プレリュードのパワートレインはシビック e:HEVと共通であり、最高出力184ps/最大トルク315Nmのモータースペックもまったく同じだ。システム出力は200ps程度となるため、絶対的な動力性能は235ps水平対向自然吸気エンジンを搭載するGR86の方が上と言えるだろう。
ただし、信号待ちからの発進加速のようなシーンでは回転初動から大トルクを発揮できるモータードライブのプレリュードの方が軽快な走りを見せる。一方、レーススタートでは軽量かつ後輪駆動のGR86が有利となるはずだ。
プレリュードの魅力は絶対的な速さではなく、ハイブリッドカーをスポーツカーらしく走らせられる演出にある。仮想8段変速の疑似シフト動作を組み込んだ“S+シフト”は、モーターの回生ブレーキを駆使することでシフトアップ時の空走感や、シフトダウン時の減速感までが再現されている。
アクティブサウンドコントロールによるエンジン音の演出も相まって“S+シフト”オン時のプレリュードは有段変速機が備わったクルマのような振る舞いを見せつつ、モータードライブならではの鋭い加速レスポンスを発揮する。
もちろんGR86にはATモデルには、本物のスポーツATが搭載され、パドルシフトによる任意のシフトが可能であり限定条件下でオートブリッピング機能も作動する。
しかし本物がスポーティだとは言い切れない。作り物の演出だからこそ五感に訴えかけるスポーツカーらしい要素を雑味なく表現できる。ハイブリッドの低燃費性と相反するスポーツ性を両立させた仕組みがプレリュードの“S+シフト”なのだ。両者のWLTCモード平均燃費はプレリュードが23.6km/Lで、GR86は11.7km/L(RZ 6速AT)となる。
ホンダ プレリュード
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1993c
最高出力=141ps/6000rpm
最大トルク=182Nm/4500rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
トヨタ GR86 RZ
エンジン形式=水平対向4気筒ガソリンエンジン
排気量=2387cc
最高出力=235ps/7000rpm
最大トルク=250Nm/3700rpm
トランスミッション=6速AT
駆動方式=2WD(FR)
同じ2ドアクーペだが、あらゆる点で対極の存在


プレリュードの新車価格は617万9800円であり、361万6000円のGR86『RZ 6速AT』とは2倍近い価格差がある。
プレリュードの価格が高い理由は、プレミアムな内外装や高額なハイブリッドシステムに加え、GR86には採用されていない電子制御ダンパーの搭載に起因する。
加えて、トルクステアを抑制するシビック タイプR譲りの“デュアルアクシス・ストラットフロントサスペンション”や“等剛性ドライブシャフト”の採用など、プレリュードにはFFクーペとしてのハンドリング性能を高めるための複雑かつ高価な技術が価格に反映されているためだ。
またプレリュードの“アジャイルハンドリングアシスト”は、ホンダ車として初めてブレーキ時まで作動範囲を拡大している。電子制御を駆使して走らせる点がプレリュードの大きな特徴だ。高度な電子制御による演出が活きるのは、優れたシャシーとパワートレインの基礎があってこそと言えるだろう。
FFのハイブリッド・グランドツーリングカーであるプレリュードに対し、スポーツカーとしての資質はFRの純内燃機関車かつ価格が抑えられたGR86の方が高い。
プレリュードは電動パワートレインと電子制御を主軸としたグランドツーリングカーであり、同じ2ドアクーペであってもGR86とは根本的に異なるベクトルにあるクルマなのだと言える。
車両本体価格
ホンダ プレリュード:617万9800円
トヨタ GR86 RZ(6速AT):361万6000円

