■タウンエースの上位に位置する兄弟車マスターエース・サーフ

1982年にデビューしたトヨタ「マスターエース・サーフ」

1982年(昭和57)年11月8日、トヨタは「タウンエース」の初めてのモデルチェンジを機に、当時人気が高まりつつあったアウトドアブームに対応する乗用ワゴンの兄弟車「マスターエース・サーフ」を発売した。マスターエース・サーフは、タウンエースの内外装を変更することでラグジュアリー性を高めた。

ミニバンのルーツ的な存在のタウンエースのワゴン

1976年にデビューした「タウンエース」は、「ライトエース」と「ハイエース」の流れをくむ商用車系バンとトラック、乗用車系ワゴンで構成。タウンエースのワゴンは、広いキャビン空間を生かした3列シート8人乗りのワンボックス型の乗用ワゴンである。

1976年発売の四角張ったスタイルのトヨタ初代「タウンエースワゴン」

3列シートの構成は、1列目が2名掛けセパレート、2列目は3名掛け分割シート、3列目は3名一体ベンチシート。2列目と3列目は、リクライニングが可能で、さらにフラットにつながることができるので、広大な荷室空間ができ、車中泊が可能で自転車も余裕で搭載できた。

最高出力85ps/最大トルク12.5kgmを発揮する1.6L 直4 OHVエンジンをフロントシートの真下に配置したキャブオーバーで、トランスミッションは5速MTおよび3速ATが組み合わされた。

タウンエース・ワゴンは、余裕の車室内空間と使い勝手の良さが最大の特徴で、日常ユースからレジャーユースまで楽しめるワゴンという独自のマーケットを開拓し、現代のミニバンのルーツ的存在となった。

パワーアップなど商品力強化を図った2代目

1982年11月のこの日、トヨタのワンボックス「タウンエース」が2代目にモデルチェンジした。2代目も、初代同様に商用車系のバンとトラック、乗用車系ワゴンが設定された。2代目は、特にワゴンの商品力アップが図られた。

1982年発売の2代目「タウンエースワゴン」

2代目タウンエースのワゴンは、ビジネスユースが主流の1BOXからの脱却を図り、商用車とは一線を画するスマートなスタイリングと快適な乗り心地、そして多人数が楽しめる車室空間の実現を目指した。

異形2灯式ヘッドライトや大型バンパーを組み込んでスタイリッシュさをアピール、またフロントオーバーハングの延長やフロントウインドウの傾斜角の見直しで室内スペースを拡大。装備としては、上質なフルファブリックトリム、エンジン回転数感応型パワーステアリング、エレクトロニックディスプレイメーターなど、クラストップの快適装備が採用された。

パワートレインは、新開発の95ps/15.5kgmの1.8L 直4 OHVエンジンと5速MTおよび同クラス初のOD付4速ATの組み合わせ。駆動方式は基本FRだが、1985年にパートタイム4WDが追加された。

車慮価格は、114.5万円~189.7万円に設定。当時の大卒初任給は12.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約211万円~349万円に相当する。

上級志向の乗用車ワゴンとして登場したマスターエース・サーフ

トヨタ「マスターエース・サーフ」(当時のカタログより)

上記2代目タウンエースのモデルチェンジ同日に、兄弟車の「マスターエース・サーフ」がデビューした。当時のワンボックス型ワゴンには、アウトドアやレジャーブームの高まりを受け、多くの人と荷物が搭載でき、車中泊もできることが求められていた。マスターエース・サーフは、そのような上級志向の個性的なワゴンを求める層を対象に、トヨタ店系列で販売。ちなみにタウンエースは、カローラ店系列専用車である。

トヨタ「マスターエース・サーフ」(当時のカタログより)

スタイリングは、角型4灯式ヘッドランプや北米仕様向けの大型ウレタンバンパーなどでタウンエースと差別化し、室内についてもベロア調シートや跳ね上げ式アームレスト、対座シートシートなど多彩なシートアレンジ、デジタルメーターなどで利便性とラグジュアリー性が高められた。

「マスターエース・サーフ」のシートレイアウト(当時のカタログより)

機構面のパワートレインやシャシー、サスペンションなどはタウンエースと共通で、車両価格は117.5万円~192.7万円でタウンエースより3万円高額に設定された。乗用車に負けない快適装備を採用し、個性的なスタイリングのマスターエース・サーフは、多人数でレジャーなど広い用途に使う層から高い評価を得た。

トヨタ「マスターエース・サーフ」(当時のカタログより)
トヨタ「マスターエース・サーフ」(当時のカタログより)

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1980年代のキャブオーバー型ワゴンのタウンエースやマスターエース・サーフが従来のビジネスユースから少しずつレジャーユースへと舵を切り始めた。この流れが、その後の「タウンエース・ノア」や「エスティマ」、ホンダ「オデッセイ」へと引き継がれ、1990年代後半の本格的なミニバン時代へと発展したのだ。
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