ライトチューンでも楽しめる!
トップドライバーのトレーニングマシン!
2025シーズンにスーパーGT参戦200戦、GT500通算25勝という金字塔を打ち立てた松田次生選手。ハコスカからR35まで複数台を所有する“究極のGT-Rオタク”として知られているが、今回紹介するのはGT-RではなくV35スカイラインだ。

「コロナ禍でモータースポーツ活動も制限を受けていた時期に、サーキットでトレーニングに使えるベース車が欲しいと考えて購入したのがV35クーペです。最初はZ33で走ろうと思っていたのですが、中古車相場は100万円オーバー。それならZ33初期モデルと同じVQ35DEを搭載するV35は安いし、乗ったこともなかったので、ちょうどいいなと考えました」と松田選手は語る。

購入時の走行距離は10万kmオーバーで、価格は破格の35万円。しかし購入早々、エビスサーキットのウェット走行で派手にクラッシュしてしまい、鈑金修理に35万円かかったという。

スーパーGTトップドライバーが使用するクルマと聞けば、ハイチューン仕様を想像するだろう。しかし、このV35の中身は驚くほど必要最小限に抑えられたライトチューンだ。
「エンジンルームが汚くて本当に申し訳ない」と松田選手がつぶやいたVQ35DEは、12万kmオーバーでオーバーホールなし。吸排気チューンとリミッターカットのみのライトチューンだ。高回転が苦手なエンジンで、ロングストレートの高速コースでは不利だが、岡山国際サーキットで1分44秒台をマーク。475ps仕様のVQ37VHR搭載Z34(三四郎)が1分42秒台ということを考えると、パッケージバランスの良さがよく分かる。

バンパー中央にはHPIのZ33用水平マウントオイルクーラーを加工装着し、VQ35DEの泣き所である油温上昇を抑制。冷却効率を高めるため開口部を拡大することも可能だが、見た目のバランスを重視してこの仕様に落ち着いた。
足回りは当初、別ブランドの車高調をベースにノーマルの延長線上を狙ったが、三四郎(Z34)で好フィールだったテイン・モノレーシング(FR:20kg/mm)と電子制御式減衰力コントローラーEDFC5の組み合わせに変更。ブレーキは連続周回に耐えられるよう、フロント6ポット&370mm、リヤ4ポット&355mmのエンドレス製で強化した。

以前は18インチで走行していたが、荷重をかけるとタイヤが潰れすぎるため、19インチに変更。ボルクレーシングTE037 6061を前後10.5Jプラス22×19で装着し、タイヤはアドバンA052(275/35-19)。ニスモロゴでさりげなくアレンジしている。

外装はノーマルシルエットを重視し、リヤウイングも純正形状をキープ。「純正にしては悪くない空力性能」と評価するが、鈴鹿130Rではクラッシュしそうになったこともあるという。

パワーアップ目的というより、格好良さやサウンドありきで投入したフジツボのレガリスR。足元やリヤビューなどスポーツカーの視線が注がれるポイントは、クルマ好きの松田選手らしく抜かりなく押さえている。

インテリアはチューニングカーらしさを演出するステッカーやブリッツ・タッチブレインを装備。センターコンソールにセットしたEDFC5でフレキシブルな減衰力調整が可能だ。

サーキットでのドライビング練習用としてブリッドのフルバケットシートを装着。レーシングハーネス用にリヤシートは取り外しているが、軽量化は行っていない。

「僕はどんなクルマでも、まずはタイヤ交換程度のノーマル状態から走り始め、限界値を探ります。V35はボディ剛性が高く、足回りも想像以上に良かった。純正ダンパーを分析するとリバウンドスプリングが採用されていて、3.5L・V6のトルクフルさでオールラウンドに楽しめます。走りのベース車としてV35は本当におすすめです」。

松田選手のドライビングスキルとV35の素性が相まって、羊の皮を被った狼のようなトレーニングマシンが完成した。



