ボディサイズはヴェゼル並み

──ゲートウェイモデルとはどういう意味でしょうか。
廣瀬敏和氏(以下廣瀬):0シリーズの入口。いろんな人に買っていただけるモデルです。サルーンとSUVはどちらかというと北米向けに企画したクルマ。αはアジア向け。そこが大きく違います。









──ボディサイズが違うように見えます。
廣瀬:そうですね。アジアは道が狭いし、渋滞がひどいのでサイズは変えています。0 SUVがCR-Vくらいの大きさなのに対して、αはヴェゼルのイメージです。
──メカニズム面でのサルーンやSUVとの共通点と相違点を教えてください。
廣瀬:メカニズムはかなり違います。インドで作る目的は、クルマを廉価に作るため。そこが出発点なので、インドで作れるものをとにかくたくさん使う考えです。サルーンやSUVは高機能の部品を使っていますが、それを持ってくるとコストが上がってしまい、競合との価格差が大きくなってしまいます。αはとにかくコストの低いものを選んで0シリーズの世界観を作ろうという考えです。
──北米では作れるけど、インドで作れないものとは?
廣瀬:例えば、電池のセルは作れない。だから、部品を買ってきてインドでアッシー(組立)するか、アッシーごと持ってくるか。どういう方法がいいか検討しなければなりません。電池はまだ検討中です。

──モーターはどうでしょうか?
廣瀬:一部のパワーユニット系はサルーンやSUVと共用しています。モーターを含め主要部品はインドで現調(現地調達)したいと考えています。先進デバイス系はインドではなかなか現調できません。現調を使うと商品性が下がるところをどう持ち上げ、同じような0シリーズの世界観の商品を提供できるか、考えているところです。切り口のひとつは、お客様のスマホにアプリを入れることです。スマホをサーバーとつなぎ、経路案内だけディスプレイに映す。インドやタイでのスマホの普及率は高いので、そういうことを考えています。
──高機能なハイテン材(高張力鋼板)も使えない?
廣瀬:そうですね。ホットプレスは使えません。インドで作れる鋼板を使い、福井さんにどうデザインしてもらうかです。
福井拓氏(以下福井):曲率だったりアールのサイズだったりは工法によってサイズが変わってきます。それをそのまま受け止めて作ってしまうと0シリーズの世界観が端末部分でそろわなくなってくる。ですので、なるべく同じくらいの曲率にしたりし、隅々まで0シリーズに感じてもらえるような微調整を廣瀬と一緒に進めました。
0 SUVとα、デザインはどう違う?
──αのデザインはサルーンやSUVと同時並行で進めたのでしょうか?
廣瀬:まったくずれているわけでも同時でもなくて、ちょっとずれた形で進めました。
──インド生産のαのデザインを成立させるために、サルーンとSUVのデザインを修正したようなことはあったのでしょうか?
廣瀬:それはないです。0シリーズの世界観を制約のなかで成立させました。福井は技術的なことをわかってくれているので、非常にやりやすかったです。
──αのこだわりのポイントを教えてください。
福井:ただコンパクトなものを作ったわけではなく、市場に合わせて0シリーズの世界観をうまくボディの中にちりばめています。似たように見えるところには全部手が入っていて、同じところはほぼないくらいにバランスを調整しています。その意味で、全部がこだわったところです。

──フロントのライティンググラフィックがSUVと大きく異なりますが、これは意図的にそうしているのでしょうか?
福井:そうです。とくにアジアではクルマがせめぎ合っている道路事情もあり、存在感を示さないといけないシーンがものすごく多い。アニメーションなどでコミュニケーションするよりは、常にクルマの幅とか存在をしっかり示しつつ、新しいフラットなHマークと親和性の高いグラフィックということで採用しています。
──サルーンやSUVはデジタルのアウターミラーが付いていますが、αはコンベンショナルな物理ミラーが付いている。
廣瀬:デジタル系のカメラはインドではなかなか現調できません。なおかつ、αはゲートウェイモデルなので、ガソリン車から乗り換えてもらう方にとっては鏡のほうが使いやすいだろう。そういう考えもあって鏡を使っています。
──いっぽうで、ドアハンドルはサルーンやSUVと同じフラッシュタイプ。
廣瀬:デザイナーの福井からも、BEVだからクリーンなイメージにしたいということで、上から載せて付けるものはとにかく排除しようと。だからエンブレムもなければ、ドアハンドルもフラッシュアウターだし、アンテナもなくガラスに入っている。こだわった面をいかに雑ものなく表現できるか考えて作ったデザインです。
──インテリアは公開されていませんが、ヒントをいただけないでしょうか。
廣瀬:インテリアで特徴的なのは、スイッチ系をまとめ、なおかつ必要なハードスイッチを残しているところです。渋滞が激しい混合交通の中でエアコンのスイッチを入れたいとなったときに、スクリーンを触るよりはハードスイッチを押したほうがアジアの人には合っているでしょうと。そこでハードスイッチは残しています。
──インドから日本に持ってくるクルマとしてはWR-Vという前例があります。前例があるとやりやすい面もあるのでしょうか?
廣瀬:前例があると、そこよりは品質が上がっていく。実際に上がっているのを実感しています。ホンダらしいところでもあるのですが、いろいろやってみようと挑戦しているところです。
──ありがとうございました。








