運転中に熊に遭遇したら「やり過ごす」が正解

走行中に熊を発見した場合、もっとも重要なのは熊を刺激せず、安全な距離を保つことだ。熊との十分な距離がある場合は、後続車や対向車に注意して緩やかに減速し、熊が進路上からいなくなるのを待とう。
熊が道路を横断している場合は、動きを見定めてゆっくりとすり抜け、速やかにその場を離れるのがもっとも安全だ。その際、急加速やクラクションの使用は、熊を熊を驚かせ興奮させる恐れがあるため避けるべきだ。
熊は警戒心が強い生き物で、本来は人間に近付こうとはしない。しかし近年の熊は人馴れが進み、人間に対する警戒心が薄れている傾向にある。そのためクルマに対しても動じにくくなっている。
とくに子熊を連れた親熊は、防衛本能からクルマに体当たりしてきたり、窓ガラスを割るなどの行為に出る場合がある。熊と遭遇したら刺激しないことと、停車しないことが肝心だ。
停車した場合は、まず安全確保!窓を閉めてドアロックを

熊に進路を塞がれた場合や、至近距離で突然熊と遭遇し停車せざるをえない状況になった場合は、自身の安全確保が最優先となる。窓が空いていたら直ちに閉じ、ドアをロックして熊が車内へ侵入するのを防ごう。
ただし、ハザードランプの使用は状況による。後続車の追突を避けるために可能な限り点灯させておきたいが、ハザードランプの点滅する光は熊を刺激する恐れがある。
夜間のヘッドライトに関しても熊を刺激してしまう。ハイビームであった場合は、まずロービームへ切り替えよう。完全に消灯してしまうと熊の行動や周囲の状況を把握できなくなるだけでなく、後続車からの被視認性が極端に低下してしまうため、夜間は消灯はせずにロービームのままとするのがよいだろう。
熊の様子を伺い、進路が空きしだい対向車や後続車に注意しながら慎重にクルマを進めて、一刻も早くその場を離れることが肝心となる。ハザードやヘッドライトの使用は、周囲の環境や熊との距離などによってケースバイケースと言えるだろう。
ただし、ハイビームやクラクションを使用して撃退する行為は、熊が逃げるどころか興奮させて攻撃的な行動を引き出す危険があるため推奨されない。撃退のためにハイビームやクラクションを使用するのは、絶体絶命の危機に陥った際の最終手段と考えるのがよさそうだ。
熊とぶつかったらどうする?対応方法と保険適用

運転中に熊と衝突してしまった場合、ドライバーには危険防止等措置義務と報告義務が生じる。これは熊との衝突を回避して障害物などにぶつかった場合も同様だ。
その際に注意したいのは、轢いた熊が生きていて襲ってくる危険性があるため絶対に車外に出たり、近づいたりしてはならない点だ。野生動物の死骸に触れると感染症にかかる危険がある。また、轢いたのが小さな子熊であった場合は、近くにいる親熊に襲われる危険もある。
クルマが動かせる状態なら熊から十分に離れた場所に移動させ、ハザードランプの点灯や三角表示板の設置などで二次災害の発生を防止し、それから警察に連絡して事故の状況を報告しよう。
死骸の撤去には専門的な対応が必要であるため、警察の指示を仰ぐか、道路緊急ダイヤル#9910に連絡し、後処理を依頼する必要がある。自動車保険を使う際にも警察が発行する事故証明書が必要となるため、必ず通報するようにしよう。
クルマが壊されてもエコノミー型車両保険は適用外
法律上、熊などの野生動物との衝突事故は、他者への賠償責任が生じない自損事故として扱われるのが一般的だ。
ドライバーや同乗者が負傷した場合は、加入している自動車保険の人身傷害保険や搭乗者傷害保険から補償を受けることができる。熊との衝突を避けようとして生じた電柱やガードレール、民家の塀など他者の損害に対しては損害対物賠償で賄える。
クルマが損傷した場合も車両保険が適用される。これは衝突による損傷だけでなく、熊が車体を叩いたり、窓ガラスを割ったりした場合の被害も補償対象だ。
ただし、車両保険の補償範囲を限定した「エコノミー型」は、多くの保険会社で補償の対象外となっているため、自身の保険内容を確認しておきたい。