RB20改2.3Lが370馬力を絞り出す!

内外装の隅々に至るまで抜群のコンディションをキープ

R32スカイラインといえば、どうしてもGT-Rの存在感が際立つため、GTS-tのチューニングカーに関する情報は今となっては非常に少ない。だが、そんな周囲の評価とは無関係に、このR32タイプMは新車購入時からステップアップを重ねてきた、まさにオーナーの情熱の塊のような一台だ。

購入後すぐに富士スピードウェイを走らせたところ、あっという間にリミッターが作動。その瞬間がチューニングのスタート地点だった。リミッター解除の後ヘッドライトなどの不調が出てディーラーに持ち込んだが、ECUチューンが原因で対応を拒否されてしまう。そこで相談したショップから勧められたのが、BCNR33純正タービンへの交換。これがすべての始まりだった。

タービン交換と同時にブーストコントローラーも導入。ノック寸前までブーストをかけるセッティングで走ることの楽しさを知ってしまい、ノーマルエンジンのままパワーを求め続けた結果、やがてエンジントラブルに直面。次なるステップでは、オーバーホールを兼ねて82φピストンとRB26クランクを投入し、排気量を2.4Lへと拡大する道を選んだ。

「当時はRB20ベースでフルチューン8000rpmとか、雑誌で見て憧れていたんです。どうせなら自分のR32もその領域まで持っていきたいと思うようになったんですが、結果的には当時の仕様でなぜか6500rpmくらいしか回らなくて…。ファイナルを3.6に変更したり、インタークーラーやタービンを交換したり色々試してみました」とはオーナー。

その後、2度目のオーバーホールのタイミングで現在マシンメイクを一任している“シードレーシング”へと主治医を変更。エンジンはCPの82φピストンにRB25クランクを組み合わせた2.3L×HKS製GT2535タービン仕様へ変更し、制御も純正コンピュータ書き換えからHKS F-CON Vプロに。セッティングをゼロから作り直したことで、それまで原因不明だった回転の伸び悩みも解消。最高出力は372psへと大幅にアップした。

ホイールは90年代に抜群の軽量性能を誇ったリーガマスター。センターキャップ付きのモデルは、現在の復刻されたバージョンには無い。わかる人にはわかる当時モノだ。

ダッシュボードもソリや割れもない抜群のコンディションをキープし。追加メーターや280km/hのNISMOフルスケールメーターは、当時のチューニングカー乗りが憧れたアイテム。

純正を残した内外装に合わせ、運転席にはホールド性と実用性を兼ね備えたBNR34純正シートを組み合わせている。

下回りはアウトバーンで実施するドライアイスブラスト&レーザー処理で錆を落としリペイント。最高のコンディションを取り戻した。

「レブリミットは7500rpmに設定していますが、計算上は5速7000rpmで300km/hに届くようになりました。さすがにそこまで出すことはないですけどね(笑)。今でも筑波をたまに走らせてるんですが、本当に楽しくて満足できるクルマに仕上がってくれました」。

オーナー歴は34年目に突入。時代は変わっても、このR32は現役だ。「できるだけいい状態で、これからも乗り続けたいですね」と語るオーナーの姿勢からは、単なる趣味を超えた“人生の相棒”への深い愛情が感じられる。これからも末永く、この1台とともに走り続けてほしい。

●取材協力:シードレーシング 千葉県柏市藤ヶ谷562-8 TEL:04-7138-6340

「終わりゆく伝説を、新車で手にした男の物語」ワンオーナー走行距離3万キロのBNR32はヤバイ!

生産が終わると聞いて、いわゆる“駆け込み需要”が発生するのはよくある話だ。第二世代GT-Rもボディサイズが拡大して車重も増したBCNR33の登場を前に、「買うならやっぱりBNR32だ!」と思い立った人が多かった。ここで紹介する辻岡さんもその一人だ。

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