次のステップは700馬力オーバー!?

解析と成熟を重ねるドラッグ仕様

デビュー当初からストリート系ドラッグマシンとしての可能性を追求してきた、シードレーシングのスカイライン400R。これまでのチューニングは、ブーストアップからハイフロータービン、さらにはHKS・GT4135フルタービンへと段階的に進化し、650ps仕様で11秒807という記録を叩き出している。

そのシードレーシングが次のステップとして選んだのが、ギャレット・G25タービンへの換装だ。

「これまでの経験から、400Rのエンジンは制御系も駆動系も非常に優秀で、ノーマルのまま650psクラスのパワーをかけても壊れないことがわかりました。常時、水冷式インタークーラーのデータを読み取っていますが、温度が上昇するとエンジン保護のため点火を落とすなど、しっかり守ってくれる。結果、エンジン本体がダメージを負うケースは少ないんです」と語るのは代表の香田さん。

続けて、「反対に、純正タービンは常に過回転ぎみで壊れる例が多い。純正タービンは22万rpmでリミッターが入るのが通常制御なのですが、ブーストアップすると計算上は25万rpmに達する。つまり常にオーバーレブ状態なんです。純正タービンが壊れると破片を吸い込み、エンジン本体までダメージを受けることもある。だからパワーを求めるなら、早い段階でタービン交換に進むのがベストだと思います」とのこと。

当初、G25はスペース的に装着が厳しいと見られていたが、エンジンルームに逃げ加工を施す必要もなく、驚くほど自然に収まったという。正回転と逆回転の設定が用意されていること、センターコアの冷却水が自由な方向から取り出せる設計、Vバンド式の固定方法などが大きく寄与している。制御系はECU-TEKを使用し、現車合わせで緻密にセッティングを施した。

アクチュエーターは純正の電動式をそのまま流用。スプリング圧を利用する機械式とは異なり、ECUセッティングと連動した緻密なブーストコントロールが可能になる。

VR30DDTTはエキマニを介さず、ヘッドから直接タービンへつながる構造のため装着性は良好だが、一次排圧が高い点がネック。これを下げることができれば、点火時期をさらに追い込めるため、今後の検討課題となる。

エンジンマウントは海外製アルミリジットタイプを組み合わせ、タービンやアウトレットのクリアランス確保を前提に選んでいる。

タービンの大型化に伴い、燃料系も強化。吐出量を増やすインタンク式燃料ポンプに加え、直噴インジェクター用のポンプ、さらにはインジェクター自体も海外製の大容量タイプへ変更し、供給量を底上げしている。

水冷式インタークーラーのラジエター(ヒートエクスチェンジャー)は純正サイズでは容量不足。そのため、純正の倍以上の大型ラジエター、流量を増加させるウォーターポンプ、大容量リザーバータンクなどで構成し、吸気冷却を徹底する仕様へアップグレード。もちろん、本体の水冷インタークーラーも大容量の社外品だ。

海外の情報では、デフケースが強度不足で歪みやすいという報告が多い。そこで開発されたのが専用ブレースパーツで、装着後は走行会で酷使していてもデフ周りのトラブルは一度も出ていないという。

トラクション性能向上のため、リアアーム一式は調整式+ピロ化。サスペンションは複数セットを試している段階で、現在は純正ショック+ダウンサスでテスト中とのこと。

「ただ、今後さらにパワーを上げていくとATが持たなくなるかもしれませんね。アメリカでは1000ps対応の強化ATが出ているので、壊れたら載せ替えるつもりです」と香田さん。

バーンナウトすらできなかったノーマル状態から、ECU解析と改良を重ねてきたシードレーシング。タービン仕様が変わるたびに最適なセッティングを施し、その潜在力を丁寧に引き出している。ドラッグレースという極限の高負荷環境で鍛えられるからこそ、本当の実力を測ることができるのだ。

●取材協力:シードレーシング 千葉県柏市藤ヶ谷562-8 TEL:04-7138-6340

【関連リンク】
シードレーシング
https://www.seedracingcar.com/