CB750FZ/1979年

 日本メーカーによる並列4気筒大排気量スポーツというジャンルは、1960年代末に世界市場へ投入されたホンダ『CB750Four』の成功によるところが大きい。

 高回転域までスムーズに吹け上がる回転フィールと圧倒的なパワーは、それまで2気筒が主流だったロードスポーツの概念を変えてしまうほどのインパクトを持っていた。

 カワサキ、スズキ、ヤマハが次々に対抗モデルを投入し、インライン4がジャパニーズスタンダートとも言われるほどとなった頃、ホンダは並列6気筒1047ccの『CBX(1000)』とともに、『CB900F』(SC01)を1979年型として発売する。

“CB-F”シリーズの始まりだ!

 輸出仕様車はボア・ストロークを64.5×69mmとして、901.8ccの排気量を獲得。1979年6月には自主規制で750ccを上限としていた国内にも『CB750F』(RC04)をリリース。排気量は748.7ccで、ボア・ストロークは62×62mmのスクエアエンジンであった。

 ジュラルミン鍛造製のセパレートハンドルと長い燃料タンク、後退したステップポジション設定。フロント19インチ、リヤ18インチの足回りには、アルミ製のコムスターホイールを履く。

 燃料タンクからサイドカバーへ流れるような一体化したデザインと、テールカウルが後端で若干ながら持ち上がったフォルムで一躍大人気に。

 80年代に入るとバイク人気が高まり、販売登録台数は上昇する一方。大型クラスにおけるCB750Fシリーズの登録台数は、他のモデルを圧倒した。

 空前のバイクブームの中、CB750Fは輸出モデルとともに年毎に進化を果たしていく。

CB750FB/1981年

 1980年のFAは、ハロゲンヘッドライトを標準装備とするなど、小変更に留まったが、1981年のFBでは上面に小さな羽根を備えるエアロタイプのフロントフェンダーや、“裏コムスター”と呼ばれるホイールデザインを採用。インナーチューブ径35mmの正立式フロントフォークには、エア加圧機能が追加された。

CB750FC/1982年

フロントを19→18インチ化。プロダクションレースで圧倒的な強さを誇ったCB1100Rに通じる仕様を盛り込んでいるFCは、日本仕様では最終年式となった。

■年式コード
FZ=1979
FA=1980
FB=1981
FC=1982
FD=1983

Fらしさのキモはタンクにあった!

 さて、丸目のヘッドライトやシルエットの長い燃料タンク、水平基調のラインなど、これぞ“CB-F”シリーズとバイクファンの心に刺さるデザインで人気となっているホンダCB1000F。そのキモとなっているのが“バイクの顔”とも言える燃料タンク、そのデザインだ!

“CB-F”の特徴である天地の抑えられたタンクデザインを現代によみがえらせたのは、開発責任者の原本貴之さんをはじめ、デザインPL安島宗典さんらがこだわった点だと、報道向け発表・試乗会で教えてくれた。

 エアクリーナーケースとのせめぎ合いのなか、16リッターの容量を確保したCB1000Fのタンクは、CB750Fや900Fたちがそうだったように、角張っていて中央部が盛り上がった形状を再現している。

 サイドカバーやダブルシートにつながって、テールエンドが跳ね上がるシートカウルへ至っていく、流麗でエレガントな雰囲気がCB1000Fの魅力であり、それは紛れもなく“CB-F”の進化系であることを物語っている。

影の立役者もいる!!

 乗って気づくのは、ニーグリップしたときタンク下の黒いカバーが大きく役立っていることだ。そして視覚デザイン的にも重要であると、原本さんと安島さんは言う。

 現代のオートバイは、電装部品や配線で見えない部分はほとんど隙間がない。王道的ネイキッドスタイルを完成させるのは、かなり困難であることが想像にたやすくないが、おそらくこの黒いカバーもそうした内部を隠す目的もあるはず。

 ベース車両はCB1000ホーネットであり、メインフレームはタンクカバーに沿っている。これにCB1000Fのために専用設計したフューエルタンクを配置すれば、タンクの下端とフレームラインに間が生じしてしまう。目立たないが、働きの大きいカバーであることに納得がいく。

 シルバーのボディに、ネイビーとブルーのラインが引かれた“スペンサーカラー”(ウルフシルバーメタリック・ブルーストライプ)などで、目を惹くCB1000Fだが、こうした作り込みによって“エフ”らしさが構築されている。

 開発陣の話を直接効くと、感心するばかりである。

■試乗レポートはこちら

バルブタイミングにこだわりアリ、ファンネル長に変更あり! ホンダCB1000Fの万能性に驚いた