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今日は何の日?■GT-R初のマイナーチェンジで2011年モデル登場

2010年(平成22)年11月17日、日産自動車は2007年に誕生した日産「GT-R」の初めてのマイナーチェンジで2011モデルを発売した。GT-R 2011年モデルは、“世界最高のマルチパフォーマンスと意のままに操る快感”を開発テーマとし、大幅な性能アップが図られた。
スカイラインGT-Rの後継として誕生したGT-R


スカイラインがGT-Rを初めて名乗ったのは、1969年に設定された3代目“ハコスカ”「スカイライン2000GT-R(10型)」である。
スカイラインGT-Rは、デビューの年のJAFグランプリレースで優勝を飾り、以降1972年まで国内レースで破竹の49連勝という金字塔を打ち立て、ここに速くて強いスカイラインGT-Rの歴史が幕開けた。


スカイラインGT-Rは、続いて1973年の4代目“ケンメリ”でも110型GT-Rが設定されたが、排ガス規制に対応できず、わずか3ヶ月という短命モデルに終わった。その後、一時GT-Rの名は封印されたが、1989年にエンジンを2.6Lに拡大したツインターボ“RB26DETT型”エンジンを搭載したスカイラインGT-R(BNR32型)で復活した。


そして、9代目BCNR33型(1995年~)、10代目BNR34型(1999年~)とスカイラインGT-Rがラインナップされたが、2002年に強化された排ガス規制に上手く対応できずに、スカイラインGT-Rは一旦生産を終了することになった。


R35型GT-Rでスカイラインの冠が取れ日産GT-Rが誕生

R34型から5年のブランクを経て2007年に登場したのが、R35型GT-Rであり、それまでのスカイラインの冠が取れて、「日産GT-R」を名乗った。

最大の特徴は、エンジンがそれまでの2.6L 直6ツインターボ(RB26DETT型)から、3.8L V6 DOHCツインターボ(VR38DETT型)に変更されたこと。最高出力は、R34型の最高出力280ps/最大トルク40kgmから480ps/60kgmへと大幅に向上し、トランスミッションは6速DCTで最高速度は300km/hを超えた。

スタイリングはより流線美が強調され、円形テールランプはスカイラインGT-Rからの伝統を継承。フロント縦置きエンジンのフロントミッドシップレイアウトで、駆動方式は電子制御トルクスプリット(アテーサ4WD)システム、サスペンションは4輪マルチリンク、ブレーキはイタリア・ブレンボ製のベンチレーテッドディスクと基本仕様は先代と同じだが、エンジンのパワーアップに対応した改良が加えられた。
車両価格は、標準グレード777万円、プレミアムエディション834.75万円。当時の大卒の初任給は、19.8万円(現在は約23万円)程度なので、単純計算では現在の価値で標準グレードが約903万円に相当する。
GT-R2011年モデル

2007年に誕生したGT-Rは、2008年モデル、2009年モデル、2010年モデルと年次改良を続けたが、2011年11月のこの日、初めてのマイナーチェンジを行ない、集大成となる2011年モデルを発売した。
GT-Rの2011年モデルの開発テーマは“世界最高のマルチパフォーマンスと意のままに操る快感”。エクステリアは世界トップレベルの空力性能を持つ、より精悍で安定感あふれるフォルムを採用。さらにバンパー開口部、グリル開口部を拡大し、開口周辺の立体感を増すことで安定感を演出。インテリアについては、新形状のナビゲーションモニター周りのパッドとフィニッシャーを採用し、ステッチラインも変更することで豊かな質感とスポーティさが演出された。

パワートレインは、3.8L V6 DOHCツインターボ(VR38DETT型)で、最高出力530ps/最大トルク62.5kgmまでパワーアップ。ターボチャージャーのブースト圧やバルブタイミング、空燃比などのチューニングによって、性能だけでなく燃費も8.6km/L(JC08モード)に向上。また、高性能感を演出するため、エンジンカバーが赤色に変更された。


ハイパワーを支える足回りについても、サスペンションの改良や前後ショックアブソーバーに新開発のアルミ製フリーピストン仕様を採用。ブレーキについても、制動力と高温時の耐フェード性やペダルコントール性、耐久性を向上させる薄型大径ローターが採用された。

車両価格は、869.4万(Pure edition)~1575万円(Spec V)に設定された。ローグレードの価格に大きな差はないが、トップグレードは初代(843.75万円)に較べて倍近く高額になった。

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日産GT-Rは2025年8月、ついに18年の歴史に幕を下ろした。18年間、一度のフルモデルチェンジすることなく、年次改良を基本にして性能を磨き上げた希少なモデルだ。高級車をフルモデルチェンジするには莫大な開発・生産コストがかかるが、台数が少ないとそれを回収できずに必然的に価格アップが避けられない。それなら、ユーザーのために年次改良で少しずつ魅力を高めて延命すれば良いと考えたのだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


