液体水素エンジンGRカローラ(#32 TGRR GR Corolla H2 concept)は、今年5月30日~6月1日の富士24時間耐久レースで、新充填バルブの採用による安全性向上と軽量化、そして水素エンジン燃焼切換技術の実証などにおいて進化を遂げている。

24時間レースで磨く水素エンジン TGRR液体水素GRカローラの挑戦 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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水素タンクの進化

2022年富士最終戦2023年富士最終戦2024年富士最終戦2025年富士最終戦(目標)
水素の種類気体水素(70MPa)液体水素液体水素液体水素
液体水素ポンプポンプなしタンク外置きタンク外置きインタンク(超電導)
タンク形状円形円形楕円形楕円形
タンク容量180L150L220L300L
水素搭載量7.3kg10kg15kg20kg
一充填航続ラップ数約12周約20周約30周約40周
一充填航続距離約54km約90km約135km約180km
※富士スピードウェイの全長は4563m

水素エンジンGRカローラは、当初気体水素を燃料としていた(2022年富士最終戦)。このときの水素搭載量は7.3kg、一充填航続ラップ数は、約12周(約54km)だった。

これが23年の富士最終戦では燃料を気体水素から液体水素に変更、大幅な性能向上を実現した。

水素エンジンシステム開発のロードマップ 将来技術としてトヨタの強みであるHEVとの組み合わせもすでに検証済みだという。

液体水素をエンジンで燃やす技術は確立している。2025年の富士24時間では高出力と低燃費を両立させる水素エンジン燃焼切換技術に挑戦。高出力が得られるストイキ燃焼(理論空燃比 λ=1)と低燃費を実現可能なリーン燃焼をドライバーの出力要求に合わせて切り換える技術だ。

従来型の液体水素システム
新型では常電動モーターを超電導モーターに変え、インタンク化

ここで課題となっていたのが、液体水素タンクから液体水素を圧送するポンプだ。これまでタンクの外に置いていたポンプを液体水素タンク内に収められると(インタンク化)とパッケージ効率が飛躍的にアップする。

液体水素タンク内はー253℃の極低温だ。これを利用することで超電導モーターを駆動する、というアイデアだ。

超電導とは、特定の物質を極低温に冷やすと電気抵抗がゼロになることをいう。液体水素のー253℃は、まさにうってつけの環境と言える。トヨタは極めて小型・高効率な超電導モーターを開発。この小型超電導モーターとポンプを一体化して液体水素タンク内に収めたわけだ。

超電導技術によるメリット
入熱源であるフランジがなくなった。
新型ではタンク容量が大幅に拡大している。

タンクの外にポンプを配置していた従来のレイアウトから超電導モーターで駆動するポンプをタンク内に収めることができると、スペース効率の向上でタンク容量を拡大できるほかにも、軽量・低重心化も実現できる。また、入熱源であるフランジがなくなることで、ボイルオフ(水素が気化すること)の量も低減できるという。

今回は、超電導モーターを使った液体水素システムのお披露目がなされたが、2026年シーズンには実戦投入されるだろう。技術開発の進展に期待したい。