F-150でグラス大使をモリゾウがエスコート

観客は、NASCARの迫力を堪能したのではないか? スーパー耐久最終戦の決勝レース前に行なわれた「NASCAR Showrun」には、6台のNASCARマシンとドライバーが参加した。ドライバー陣もジミー・ジョンソン選手、ジョン・ハンター・ネメチェック選手、小林可夢偉選手、古賀琢麻選手、小高一斗選手、大湯都史樹選手と豪華だった。

ゲストも豪華だった。NASCAR Showrunには、ジョージ・グラス駐日米国大使も富士スピードウェイをがゲストとして訪れた。ホスト役は豊田章男会長。グランドスタンドウの裏のイベント広場で開催されていた「アメリカンパーク」を見て回ったグラス大使を豊田章男会長がフォードF150でお迎え。そのままモリゾウ選手としてフォード F-150のショーファードライバーとなり、グラス駐日米国大使を助手席に富士スピードウェイのホームストレートに現れた。

グラス大使(George Glass U.S. Ambassador)は2025年4月8日、議会上院より駐日米国大使として承認を受けた。1期目のトランプ政権では、2017年から2021年まで駐ポルトガル米国大使を務めた。著名な米国人実業家で、金融、投資銀行、テクノロジー分野に精通している。
豊田会長は、グラス大使と並んで、観客にこうコメントした。
「先日アメリカに行きまして、日本とアメリカの産業界のみならず、文化面やスポーツ面など、いろんなもので交流を考えています。その時に『モータースポーツもありますよね』という提案をさせていただきました。それでやっぱりNASCARです。大使たちも、来年の(富士)24時間レースでNASCARクラスを走らせるというのに、すごく盛り上がっています。
でも急に24時間レースでNASCARクラスと言われても大変じゃないですか。だからそれを『トライアル』として、今回2カ月の準備期間でこれができたと思います。そうしたら色んなことがわかってきて、実はこの富士スピードウェイは最初にNASCARを作るために作ったんですよ。それで30度バンクがあったりとか。本来はオーバルコースをここに作るはずだった。そこに初めてNASCARが並べられたとか、一番下のクラスであれば日本のモータースポーツ好きのレーシングチームも活動ができるかもしれない。大谷翔平選手とかいろんな選手がアメリカでやっていますが、そんな感じでモータースポーツもやれるような兆しというか、期待が持てるものになっていけばいいなと思います。
ここの広場やピットのNASCARガレージも、私の想像以上に人気がありますから。とにかく今日、音を聞いていただいて、何か感じるものがあると思います」
ジャケットの前を開いた豊田会長が着ていたのは真っ赤なTシャツ。胸にはTRUMP & VINCE MAKE AMERICA GREAT AGAINと書かれていた。

NASCARマシンの大迫力に驚き
NASCAR Showrunの走行前には、アメリカ・ノースカロライナ出身の歌手、安田レイさんによるアメリカ国歌斉唱。アメリカンモータースポーツのスタート進行を観客が体験。NASCAR恒例の“Drivers Start Your Engines”の発声は、グラス駐日米国大使と豊田章男会長がふたりで行なった。星条旗を振る多くの観客の前で、NASCARの5.8L V8エンジンに火が入った。
助手席にグラス大使を乗せて豊田会長がドライブするフォードF-150を先導に6台のNASCARマシンが富士スピードウェイを疾走。2周後、F-150がピットインすると、ペースを上げる。
腹に響くようなエキゾーストノートは、やはりこれまで聞いたことがない音量と音質で、それだけでもアメリカンモータースポーツ初体験の観客に響いたのではないだろうか。6周周回後にホームストレートに戻ってきたNASCARマシンは、”バーンアウト”まで披露。もうもうと巻き上がる白煙と音に観客は度肝を抜かれていた。


日本自動車会議所は、今回のNASCAR招聘は日米関係への一度きりのサービスとは考えていないという。「クルマを(和食やアニメのような)文化にしたい」という長期的な展望に沿って、アメリカのクルマ文化の象徴であるNASCARを、日本で継続的に走らせることを目指しているという。
NASCARは1990年代に日本開催があった。インディカーシリーズもツインリンクもてぎで開催された経緯がある。しかし、アメリカンモータースポーツが日本に根付くことはなかった。
今回のNASCAR Showrunは、アメリカンモータースポーツの魅力を多くの人に知ってもらう最高の機会になった。
