連載
今日は何の日?■ファッショナブルなスペシャリティカーのリーザ

1986年(昭和61)年11月21日、ダイハツはユニークで可愛いいスタイリングの軽スペシャリティカー「リーザ」を発表(発売は12月1日)した。リーザは“プライベート感覚”、“ファッション感覚”など、感性を重視して新しいカーライフを演出するクルマとして開発された。
女性にも好まれるスタイリングを意識して開発されたリーザ
1980年後半の好調な日本経済を背景に、高性能&高機能化は軽自動車にも波及。ダイハツは、1986年11月のこの日、スペシャリティカー「リーザ」をデビューさせた。当初は、乗用セダンと商用ボンネットバンの2つのタイプが存在していたが、当時市場を席巻していた物品税がかからず価格が下げられるボンネットバンが主力だった。

リーザは、前席を重視した4人乗り3ドアハッチバック車で、半球形(タマゴ型)の曲線基調の親しみやすいスタイリングが特徴。女性にも好まれるスタイリングを意識して開発したとされている。

パワートレインは、最高出力32ps/最大トルク4.4kgmを発揮する550cc 直3 SOHC、50ps/7.0kgmの空冷インタークーラーターボ仕様の2種エンジンと5速MTの組み合わせ、駆動方式はFF。一部グレードには、女性を意識して2速ATが用意された。

サスペンションは、フロントがストラット式コイルスプリング、リアがセミトレーリング式コイルスプリングの4輪独立懸架で、フロントにはスタビライザーが装備された。また一部グレードには、フロントにディスクブレーキが標準装備された。
車両価格は、ボンネットバン仕様で59.8万~74.0万円(NA車)/85.5万~89.3万円(ターボ車)の設定。当時の大卒初任給は、14.6万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で約94万~117万円/135万~141万円に相当する。
オープンモデルのリーザスパイダーも登場

1980年代終盤になると日本経済はさらに加速し、ついにバブル景気を迎えた。これを背景に、ライバルメーカーはさらにスペシャリティ感を高めた軽スポーツカーの開発に取り組み始めた。具体的には、ホンダがミッドシップ・オープンスポーツ「ビート」、スズキはFRスポーツ「カプチーノ」、マツダはガルウイングドアを組み込んだ「オートザムAZ-1」を企画した。

対抗してダイハツは、リーザのスポーツグレードTR-ZZをベースにオープンボディ化した「リーザスパイダー」を1991年11月に投入。オープン化にあたっては、帆の収納やボディ剛性の確保を考慮して2シーターとなった。さらに、1990年の軽新規格(排気量660cc化、全長100mm拡大)に準じて仕立てられた。

オープンボディ化によって車重が90kg増したことから、パワートレインは最高出力64ps/最大トルク9.4kgmを発揮する660cc 直3 SOHC インタークーラーターボエンジンのみとし、トランスミッションは5速MTと3速ATが組み合わされた。
車両価格は、145.3万円(5速MT)/150.8万円(3速AT)と、ベースのリーザよりも60万円程度高額だった。短期で作り上げたリーザスパイダーだったが、同時期にデビューした上記のビートやカプチーノ、AZ-1に較べると販売は伸びずに、1993年に生産を終えた。
後継車は女性をメインターゲットにしたお洒落なオプティ
オプティは、「リーザ」の後継として、また当時のダイハツの基幹モデル「ミラ」よりワンランク上のモデルとして1992年に誕生した。

スタリングは直線基調のミラとは対照的に、大きな楕円形状のヘッドランプを装備したキュートなラウンディッシュなフォルムを採用。張りを持たせたフェンダーラインや曲線形状のルーフが優しい雰囲気を醸し出し、メインターゲット層は女性だった。また、インテリアもお洒落なだけでなく、シートなどは質感へのこだわりが随所に見られた。

パワートレインは、最高出力55ps/最大トルク5.8kgmを発揮する659cc 直3 SOHCエンジンと5速MTおよび3速/4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFと4WDが設定された。
上質に仕上げられたオプティは、女性だけでなく男性にも好感を持って受け入れられ、5ドアを追加するなどバリエーションを充実させながら好調な販売を続けた。しかし、1990年代後半にはスズキ「ワゴンR」が火をつけたハイトワゴンブームに圧倒され、2002年に生産を終えた。
・・・・・・・・・・
当時、比較的実用的な軽を作っていたダイハツにとって、初めてスペシャリティカーが「リーザ」だった。さらにオープンモデルの「リーザスパイダー」を投入するなど、ダイハツとしては思い切った戦略のクルマだった。発売時期のタイミングの悪さもあり大成功とはならなかったが、これで得られたノウハウは2002年に登場するコペンに生かされることになったと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。



