あくまで不要なのはアイドリング状態での暖機運転

トヨタでは「暖機運転=アイドリング暖機」と前置きをしたうえで、極寒冷地などの特別な状況を除いて「暖機運転は必要ありません」と説明している。他のメーカーもおおむね同様だ。

かつては、エンジンをかけるとすぐに走り出さずにしばらく停車したままアイドリングをして温める、いわゆる「アイドリング暖機」が必要不可欠とされていた。

これは、当時のクルマのエンジンに「キャブレター」が用いられていたことに起因する。機械式の燃料供給装置であるキャブレターは、冷えている状態だと燃料と空気の混合比率が適切にならず、走行すらままならなかったためだ。

しかし、現在のクルマのエンジンは、コンピュータによる電子制御の燃料噴射装置が主流であり、外気温やエンジンの温度に応じて自動的に燃料噴射量などを適切に調整してくれる。

このため、エンジンをかけた直後でも安定した走行が可能となり、長時間のアイドリング暖機が不要となった。むしろ長時間のアイドリングによる暖機は、エンジン内部へのカーボンやスラッジ堆積を助長して調子が崩れやすくなるばかりか、燃料希釈によるエンジンオイルの劣化も促す。

近年のクルマは、かつてのような長々としたアイドリング回転での暖機運転は不要だ。しかし、暖機運転そのものが不要になったわけではない点には注意したい。

現代のクルマは走行しながらの暖機運転が基本

クルマを長持ちさせるには暖機運転が必須となる。長々としたアイドリングを避けつつ暖機運転をするためには、ゆっくりと走りながらクルマの各部を温める「走行暖機」がベストな方法だ。

暖機運転が不要とされている現代のクルマでも、発進直後に急加速をしたり、高回転までエンジンを回す行為は避けるべきだ。

十分に熱が入りきっていない状態での高負荷運転はエンジンに大きな負担をかけ、異常摩耗や内部破損などを引き起こす可能性が高まる。とくにターボ車は、暖機完了前に高負荷運転をするとターボチャージャーの寿命を極端に縮める恐れがある。

そのため、現代のクルマにおいては、エンジンをかけてすぐに走り出し、低回転を維持しながら走行する「暖気走行」が推奨される。

最低でも水温計が適正位置、もしくは低温時の水温警告灯が消えるまでは急な操作を控え、エンジンの回転数を2000回転程度に抑えた穏やかな運転が具体的な暖機走行の方法だ。

ただし、MT車の場合は走行回転数が低すぎるとエンストしたり、不安定な燃焼や振動によってエンジンの負担は増すことになりかねない。走行暖機の際に注意すべきは、スムーズに走行できる速度域を保ちつつ、回転数を上げすぎないことだ。

こうした走行暖機は、エンジンを温めるだけの行為ではない点も留意しておきたい。トランスミッションやフロントデファレンシャルにはエンジンの熱が伝わるが、走行しながらの方が早く温まる。

タイヤおよびサスペンション熱が入らなければ本来の性能が発揮できないうえ、足回りはクルマが走り出さなければ温めることができない。こうしたクルマ全体のウォームアップが望ましいのは、ハイブリッド車やエンジンがない電気自動車も同様だ。

住まい環境に応じて「アイドリング暖機」と「走行暖機」を併用

実際問題、寒冷地や降雪地では車内がある程度まで温まらなければ安全な走行ができないため、アイドリング暖機をせざるを得ない。アイドリング暖機によって車体が被るデメリットは適切なメンテナンスを行えば、ある程度相殺できる。

暖機運転が不要と言われるのは、あくまで長々としたアイドリング暖機であり、クルマも機械である以上ウォームアップが必要だ。

しかし寒冷地や降雪地では、クルマに積もった雪の除去や、窓の凍結や結露などによって運転に必要な視界が確保できないため、停車したままで長時間アイドリングが必要となることもある。またマニュアル車では、トランスミッションが冷えた状態では操作性が悪く、安全な走行ができない場合も多い。

アイドリング暖機は、アイドリング禁止条例に抵触する可能性はあるものの、明言されているのはあくまで「必要以上なアイドリングの禁止」だ。視界確保や安全確保のためのアイドリングはこれに該当しない。

住まいの環境に応じて「アイドリング暖機」の時間を最低限に抑え、極力「走行暖機」主体でクルマの各部を温める方法が、実際に即した手段と言えるだろう。

なにより重要なのは、エンジンが適正温度になるまで高速道路の合流のような強い加速を控えることだ。