そこはかとない違和感

近年のアンダー200ccクラスには、排気量以外の基本設計を共有する、125cc/150~160ccの兄弟車が数多く存在する。それらのどちらに好感を抱くかは人それぞれだが、個人的には兄貴分にグッと来ることが少なくない。

もっとも、僕はパワー至上主義のライダーではないので、当記事に協力してくれたオートサロンオギヤマが販売している、XSR155用の排気量拡大キットの存在を初めて知ったときは、そこはかとない違和感を覚えた。
僕の認識だと、XSR155の動力性能はノーマルで十分だし、ノーマル以上のパワーを欲するなら、+10万円前後で購入できるMT-25を選択したほうがいい気がするので。

ところが、オートサロンオギヤマのテスト車兼デモ車として活躍するXSR155改183を試乗したら、目からウロコをボロボロ落とすこととなった。その詳細の前に、同社の特徴とXSR155の関係を紹介しておこう。
2種類の排気量拡大キットを準備

国内外の車両を幅広く取り扱うオートサロンオギヤマでは、日本の4メーカーが正規導入していない軽二輪と原付二種の輸入販売にも積極的な姿勢を示している。
2006年にインドネシアのジャカルタに駐在事務所を設立した同社は、以後は現地のディーラーやパーツメーカーと密接な関係を構築し、これまでに多種多様な車両と純正/カスタムパーツを輸入販売を行ってきたのだ。

そんな同社にとって、近年の車両販売の柱になっているのがXSR155で、この車両のユーザーを楽しませることを念頭に置いて、多種多様なカスタムパーツも導入。
インドネシアのBRTと共同開発した排気量アップキットには、ボアのみを拡大する183ccキットと、ストロークも延長する206ccキットが存在し、組み付け工賃を含んでの価格は、183ccが25万円前後で、206ccは30万円前後(内容の更新や為替相場によって変動)。

いずれのキットにもカムシャフトやバルブスプリング、インジェクター、ECUなどが含まれることを考えると、決して高くはない。ただしどちらを選択しても、車両代を含めると、MT-25の価格を超えてしまうのだ。
ノーマルは十分ではなかった?

ここからはインプレ編で、まずはノーマルとの違いを記すと、実測後輪出力がノーマル+5ps前後の23.5psに向上しているだけあって、それはもう、明らかに元気がよかった。
前述したようにこれまでの僕は、ノーマルの動力性能を十分と感じていたものの、幹線道路で遅い4輪を余裕でパスできる力強さや、曲がり角やコーナーからの立ち上がでアクセルを開けた際の鋭い加速を実感すると、十分は言い過ぎだった気がしてくる。

そして改めて考えると過去にXSR125とXSR155のノーマルを同条件で試乗した際も、僕は似たような印象を抱いたのだが、この車両はマフラーをNORIFUMI GTX-PROに変更している効果もあって、元気の良さと力強さはXSR200?と言いたくなるほど。

なお念のために記しておくと、このバイクにエンジンチューニングという言葉から連想しがちなシビアさは一切なく、扱いやすさはノーマルとほとんど同等だった。
また、排気量の拡大と排気系の変更で、アンダー200ccクラスではなかなか感じづらい、単気筒ならではの鼓動が明確になっているのも面白いところで、この特性なら一定開度を維持してのまったり巡行も楽しめそうだ。

続いてはMT-25との差異を記すと、この車両を試乗中の僕は今さながらにして、MT-25がXSR155の比較対象にはならないことを把握。
と言うのも、車重と軸間距離は、XSR155:134kg・1330mm、MT-25は166kg・1380mmなのだから、MT-25ではXSR155のようなキビキビした走りは味わえないのである(逆に言うならXSR155では、MT-25ほどの安定性は実感できない)。

そんなわけでXSR155改183に乗って、、ノーマルともMT-25とも異なる魅力を実感した僕は、試乗前に排気量拡大に違和感を覚えていた自分が、何だか恥ずかしくなってしまった。それどころか今現在は、車両+チューニング代金がMT-25を超えようとも、XSR155改183には十分以上の価値がある、と感じているのだった。
ディティール解説








ヤマハ・XSR155 主要諸元(インドネシア仕様・ノーマル)
全長/全幅/全高 2,007mm/ 804mm/1,080mm
シート高 810mm
軸間距離 1,330mm
最低地上高 170mm
車両重量 134kg
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155.09cc
内径×行程 58.0mm×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 14.2kW(19.3PS)/10,000r/min
最大トルク 14.7N・m(1.5kgf・m)/8,500rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.05L
燃料タンク容量 10.4L
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー型式 YTZ4V
スパークプラグ MR8E9
クラッチ形式 湿式多板アシスト&スリッパークラッチ
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
フレーム形式 デルタボックス
タイヤサイズ(前/後) 110/70-17M/C(54S)/140/70-17M/C(66S)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク
懸架方式(前/後) テレスコピック(倒立式)/スイングアーム(リンク式)