2025年シーズンのMotoGP最終戦は、スペインのバレンシア、リカルド・トルモ・サーキットで開催された。スペインの高速道路事情やリカルド・トルモ・サーキットについてお伝えする。

スペインの高速道路はほとんどが無料

11月中旬、MotoGP最終戦バレンシアGPの取材のため、スペインのリカルド・トルモ・サーキットを訪れた。

じつは、スペインではMotoGPが複数回開催されている。多くの国は1シーズンに1回の開催だが、スペインはヘレス、カタルーニャ、アラゴン、そしてバレンシアの4回開催だ。イタリアがこれに続き、ムジェロ、サンマリノ(実際はイタリアのサーキットで開催)の2回である。スペインとイタリアではMotoGP人気が高いので、開催数が多いのもさもありなん、といったところだろうか。

バレンシアはスペイン東部の都市で、地中海に面している。サーキットは、バレンシアの街からクルマで25kmほど走ったところにある。高速道路を降りると間もなくサーキットなので、それはとても便利なのだが、その代わり、レース開催の週末、特に土曜日と日曜日はこの出口が大いに渋滞するのがちょっとした悩みの種。といっても、レースの週末はどこでもサーキットまでの道が混むのだけど。

金曜日、サーキットに入るところ。金曜日の時点ですでに渋滞していた©Eri Ito

ちなみに、スペインの高速道路はほとんどが無料である。一部は有料なのだが、割合として多くはない。例えば、バレンシアの街からサーキットまでは無料で通行できる。スペインに限らず、ヨーロッパの高速道路は無料であったり、有料であっても通行料金が日本に比べて安い国が多い。有名なところでは、ドイツのアウトバーン。一部区間が速度無制限ということでご存知の方も多いだろうが、アウトバーンは基本的に無料で通行できる。

ヨーロッパでレンタカーを走らせていると、日本の高速道路の通行料金はどうしてこんなに高いのだろうと思う。道路の状態にしてもヨーロッパのほうがひどく悪いわけでもないのだが。

そんなわけで、リカルド・トルモ・サーキットは、バレンシアに宿をとることができれば、比較的アクセスがいいサーキットである。

リカルド・トルモ・サーキットの特徴は、「スタジアム型」であることだ。このタイプのサーキットは珍しい。観客席が、コースを取り囲むようにレイアウトされている。コースには大きなアップダウンがあるわけではなく、遮蔽物もない。もちろんコースのすべてというわけにはいかないが、かなり先のコーナーまで見渡せる。

とても見晴らしのいいサーキットである©Eri Ito

リカルド・トルモ・サーキットでの最終戦バレンシアGPは、コロナ禍を除いて20年以上にわたって開催されてきたが、今回は2年ぶりの開催となった。というのも、昨年は直前にバレンシアを襲った洪水により、急遽バルセロナ-カタルーニャ・サーキットで最終戦が行われたからだ。

今季、MotoGPクラスでは日本GPでマルク・マルケス(ドゥカティ)がチャンピオンに輝き、Moto3クラスではインドネシアGPでホセ・アントニオ・ルエダ(KTM)がタイトルを獲得した。このため、最終戦までタイトル争いが持ち越されたのはMoto2クラスのみだった。また、MotoGPチャンピオンのマルク・マルケスは負傷により、最終戦を欠場していた。

こうした状況ではあったけれど、サーキットに足を運んだ観客の数は、週末通算で20万5,000人にのぼった。2025年日本GPの観客数は9万人だったので、約2倍のファンがバレンシアに駆けつけたことになる。この数字はスペインのMotoGP人気も要因だろうが、ヨーロッパは陸続きなので、他国のファンがやって来ることも珍しくない、ということもある。高速道路の出口が混み合うのも仕方がないだろう。

このため、MotoGPが開催される週末は、地元の警官が交通誘導に当たっている。また、高速道路上に三角コーンが立てられて、クルマ、バイクの流れが整理される。行政も協力しているわけだ。これはまったく珍しいことではなく、ヨーロッパではほとんどのMotoGP開催の週末で、警官が交通誘導をしている。

そんなバレンシアGPも、日曜日の決勝レースが終わって夜の帳が下りてしばらく経つころには、20万5,000人の影はもうない。昼間の熱狂とは打って変わって、サーキットは夜の静寂に包まれる。こうして、2025年シーズンのMotoGPは幕を下ろした。

リカルド・トルモ・サーキットのスタート地点©Eri Ito
パドックの風景。日曜日はかなりの人でごった返していた©Eri Ito
バレンティーノ・ロッシの壁画。引退した2021年に描かれたもの©Eri Ito
パドックへの入り口ではパスの確認が行われる©Eri Ito
コントロールタワー©Eri Ito
サーキットのエントランス©Eri Ito
サーキット内に、飲み物やサンドウィッチを売る自動販売機があった。ヨーロッパでは自動販売機はあまり見かけないので、珍しい©Eri Ito
バレンシア空港はMotoGPバレンシアGP一色だった©Eri Ito