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自衛隊新戦力図鑑国産開発の地対空ミサイルシステム
配備が計画されているのは陸上自衛隊の「03式中距離地対空誘導弾(通称、03中SAM)」だ。陸上自衛隊では地上部隊を護るため、近距離-短距離-中距離の三層にわたる地対空ミサイルを配備している。03中SAMは、このうちもっとも射程の長い中距離域を担当し、方面隊レベルの部隊に付属している(なお、長距離防空は航空自衛隊のペトリオットの役割だ)。

陸上自衛隊は1960年代からアメリカ製のホーク・ミサイルを中距離防空に用いていたが、圧倒的空軍力を持つアメリカは長距離防空(ペトリオット)以下をバッサリ切り捨ててしまったため、日本は独自に後継ミサイル開発を行なって03中SAMを作り出した。調達開始は2003年からだ。ミサイル発射車両のほか、レーダー車両や射撃統制装置を載せた車両など複数の車両でシステムを構成する。

レーダーは、アクティブ・フェイズドアレイ方式。ざっくり言えば同時に複数の目標を捕捉・追跡できるレーダーだ。そして、ミサイル本体にもレーダーが搭載されており、最終的にミサイル自身が目標をレーダーで捉えて命中する「アクティブ・レーダー誘導(ARH)」方式であるため、地上のレーダーが捕捉した複数目標に対して、同時に迎撃する能力がある。また近年は、03中SAMの発展型であり、探知・捕捉能力が向上し、複雑化する巡航ミサイルへの対応が考えられた「03式中距離地対空誘導弾 改善型(03中SAM改)」の配備がはじまっている。

相手のレーダーを妨害する電子戦システム
南西方面の防衛強化を進める自衛隊は03中SAM(および03中SAM改)の配備を進めており、沖縄本島はもちろん、宮古島や石垣島にも配備されており、与那国島配備も2年前から計画されていた。03中SAMの射程は公表されていないが、60km程度だと言われている。地対空ミサイルの射程としては充分だが、あくまで島の上空を防衛するだけの能力しかない。
また、与那国島については新しい動きもあった。「24式対空電子戦装置」の配備だ。電子戦とは、電磁波領域(レーダー波や通信機器などの電波)をめぐる戦いであり、たとえば有事には、相手のレーダーや通信を妨害してその能力を低減・無効化することが考えられる。自衛隊の電子戦機材については、あまり情報が明らかになることがないが、今回の24式対空電子戦装置は、防衛省の説明によれば、相手の早期警戒管制機(空中の大型レーダー機)を妨害して、その探知能力を大幅に低下させることができるという。

