全モデルに48Vマイルドハイブリッド「MHEV+」採用でレスポンス&燃費が向上

新型になったアウディQ5は第3世代だ。初代は本国ドイツで2009年にデビュー。アウディの中核モデルとしてデビュー直後から人気を集め、世界で160万台を販売した。ヒットの要因をアウディは、「手ごろなサイズ感と都会的なデザインを持ちながら、しっかりした走りを兼ね備えているところ」と分析している。

第2世代Q5は2017年にデビュー。国内ではこの世代からディーゼルエンジンのTDIが設定された。また、クーペスタイルのスポーツバックがラインアップに加わった。

2025年7月に国内で発売された第3世代は見てのとおり、キープコンセプトである。デザインは初代からのDNAを受け継ぎながら洗練させた格好。当初からSUVとスポーツバックのふたつのボディタイプを設定している。ボディサイズはほとんど変わっていない。SUVで新旧を比較すると、4715mmの全長は+35mm、1900mmの全幅は変わらず、全高は10mm低くなって1655mmだ。ホイールベースは5mm短い2820mmである。

アウディQ5 TDI quattro 150kW advanced
アウディQ5 TDI quattro 150kW advanced
右がSUV、左がスポーツバック。ボディは力強さを維持しながら、より流れるような滑らかな面構成へと進化した。

日本に導入されるモデルはすべてクワトロ(quattro)、つまり四輪駆動だ。縦置きに搭載するエンジンは3種類。2.0L直列4気筒ガソリンターボと2.0L直列4気筒ディーゼルターボ、それに3.0L V6ガソリンターボである。すべて、MHEV plusと呼ぶ48Vマイルドハイブリッドとの組み合わせになる。トランスミッションはすべてのエンジンで7速Sトロニックとの組み合わせ。いわゆるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だ。

つまり、パワートレーンの構成は2025年2月に登場した新型A5と同じ。新しいPPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバッション)を適用しており(初適用がA5)、A5のSUV版がQ5と理解することもできる。シャシー面ではFSD(完全自動運転を意味するFSD=フル・セルフ・ドライビングの意味ではなく、フリークエンシー・セレクティブ・ダンパーシステムの頭文字)を採用したのがポイント。

FSDはダンパー内のバルブ機構の工夫で、荒れた路面など細かく速い振動に対してはロッドが素早く動いて振動を吸収。乗り心地の向上につなげる。いっぽうコーナリングや制動時など低周波の動きに対しては適切な減衰力を発生して操縦安定性を高める仕組み。簡単に言えば、乗り心地と操縦安定性を両立するダンパーということになる。

FSD(Frequency Selective Damping)機構を備えたスチールスプリングサスペンションを標準装備。高周波の微振動を効果的に吸収する。先代からサスペンションのストローク量も増加している。

エクステリアはよりエッジが効いたデザインになった。幅広のシングルフレームは高い位置にあり、全体的に視覚的な重心が上がった印象。リヤも同様で、薄型のリヤコンビネーションランプの効果で視覚的な重心が高い位置にある。ライティングに凝るのが近年のアウディの特徴で、Q5も例外ではない。ヘッドライトは全モデルで、最大8つのライトシグネチャーから好みを選択することができる。

Q5では、アウディ初採用のリヤウインドウプロジェクションライトが適用された。ブレーキング時にリヤウインドウ上部にあるルーフスポイラーの下にグラフィックを表示し、ブレーキランプの表示を強調する仕掛け。ハイマウントストップランプをリヤウインドウに投影する仕組みになっている。

ハイマウントストップランプの光をリヤガラスに投影するアウディ初の新技術。ドライバーの視界の邪魔にならず、後続車への視界は妨げない設計となっている。

インテリアはA5と基本的には共通で、11.9インチサイズのアウディバーチャルコクピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイの組み合わせ。2つのディスプレイが湾曲したバイザーレスのクラスターに収まっており、ドライバー側に傾いた状態で設置されている。スタティックな状態でも多分に先進的だが、光の演出面でも先進さを感じさせるのが新型Q5のポイント。ハザードランプを点けるとフロントガラス下端両サイドが光る仕掛け。ダイナミックインタラクションライトと呼ぶ機能で、ドアのロック/アンロック時やウインカー作動時にも反応する。

アウディQ5 TDI quattro 150kW advanced

試乗車はTDI(ディーゼルエンジン搭載車)だった。最高出力は150kW、最大トルクは400Nmである。先に触れたように、これに48VマイルドハイブリッドシステムのMHEV plusが組み合わさる。MHEV plusはパワートレーンジェネレーター(PTG)と呼ぶモータージェネレーターユニットを、縦置きに配置するトランスミッションの後端に付加した構造。ギヤトレーンでトランスミッションの出力軸とつながっており、ドッグクラッチで完全に動力伝達系から切り離すことができる。減速時に最大25kWで回生したエネルギーは、1.7kWhの容量を持つリチウムイオン電池(NMCではなくLFPだ)に蓄える。アシスト側の出力は18kW、最大トルクは230Nmだ。

2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジン。単体での最高出力は150kW(204PS)/5500-6300rpm、最大トルクは400Nm/1750-3250rpm。
カバーを外すと、こんな感じでエンジン本体が姿を現す。

そもそも(アウディの)ディーゼルエンジンは応答に優れているし、トランスミッションもトルコンを用いた多段ATに比べてダイレクト感の面で優位なDCTなこともあり、モーターアシストの恩恵は感じづらい。エネルギーフローのメーター表示がないことも、マイルドハイブリッドの恩恵を実感しにくい要因だ。今回は交通量の少ない郊外をドライブしたので確認する機会に恵まれなかったが、ゴー&ストップを繰り返す渋滞時はモーター走行の出番が多くなるはずで、その際はMHEV plusの恩恵を実感できるはずだ。

アウディQ5 TDI quattro 150kW advanced
アウディQ5 TDI quattro 150kW advanced

ドライブモードセレクトでダイナミック選択時、あるいはシフトをSレンジに入れるとエンジンは常時かかった状態となり、エンジン+モーターアシストによるパフォーマンスを重視した走りになる。MHEV plusの標準化によりアイドリングストップのキャンセルボタンがなくなったのは機能上の大きなポイント。大容量のバッテリーを搭載することでキャンセルする必要がなくなったからだ。電動コンプレッサーを採用したことでアイドリングストップ中もエアコンをフルに稼動させることができるし、ベルトスタータージェネレーター(BSG)により、エンジン再始動はスムース。アイドリングストップをキャンセルする気にはならないはずだ。

アウディQ5、見た目も機能も刷新され、新しくなった感が満載である。手に入れたあかつきには、それらが満足感につながること間違いなしだ。

撮影車はオプション(26万円)の「S line パッケージ]を装着。フロントはスポーツシートとなる。
試乗車はスポーツバックではなく、ルーフが後ろまで伸びるSUVだったこともあり、後席はゆとりのスペースを備え、快適性も上々だ。
荷室容量は520L、リヤシートを両方倒すと最大1473L に拡大が可能(スポーツバックはそれぞれ515L/1415L)。
グレードアウディQ5 TDI quattro 150kW advanced
全長4715mm
全幅1900mm
全高1655mm
室内長
室内幅
室内高
乗員人数(名)5
ホイールベース2820mm
最小回転半径5.7m
最低地上高
車両重量2040kg
パワーユニット2.0L直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン最高出力150kW(204PS)/3800-4200rpm
エンジン最大トルク400Nm(40.8kgm)/1750-36250rpm
燃料(タンク容量)軽油(68L)
モーター型式・種類
モーター最高出力18kW
モーター最大トルク230Nm
バッテリー種類LFPリチウムイオン電池
バッテリー容量1.7kWh
燃費(WLTCモード)16.1km/L
サスペンション前:5リンク式マルチリンク 後:5リンク式マルチリンク
ブレーキ前:ディスク 後:ディスク
タイヤサイズ235/60R18
価格788万円