本実証の背景

交通事故の多くは、ドライバーの認知・判断・操作の誤りによる人為的ミスが原因となる。警察庁の統計によると、運転中に注意力が散漫になり、周囲の状況を適切に把握できない「漫然運転(ぼんやり運転)」が、死亡事故原因の第1位となっています。これまでパナソニックは、ナノイー(帯電微粒子水)技術の清潔(除菌・脱臭など)や美容分野での効果を中心に検証してきたが、今回の研究では新たな可能性を探るべく、ドライビングシミュレーターを用いて、運転環境における生体への影響が科学的に分析された。本検証では、脳波およびアイトラッキングによる生体データと、アクセル・ブレーキなどの運転操作データを組み合わせて分析。その結果、以下のような効果が確認された。

  • 危険環境下で集中状態の高まりを示す脳波パターンを確認
  • 注視すべき対象への視線が安定し、不要な視線移動が減少

このことから、ナノイー(帯電微粒子水)技術は、ドライバーの集中力向上を支援し、運転パフォーマンス向上に寄与する可能性が示唆された。本研究は実車とは異なる試験条件下で、インド在住者を対象に実施されたものであり、日本国内でのさらなる研究が必要となる。しかしながら、ナノイー(帯電微粒子水)技術は、運転をはじめとする高度な情報処理・操作を必要とする作業において、人の集中力を支援する技術としての発展が期待される。

本実証のポイント

  • IITB交通システム研究室教授監修の下、運転者に対するナノイー(帯電微粒子水)技術の運転中の集中力向上効果を検証
  • 生体データ(脳波およびアイトラッキング)と運転操作データ(アクセル、ブレーキなど)を組み合わせ、認知・判断・操作の運転タスクの一連のプロセスを科学的に分析
  • ナノイー(帯電微粒子水)技術が、集中状態の高まりや視線行動の安定化など、運転者のパフォーマンス向上を支援する可能性を確認

本検証の試験概要

  • 試験実施者:IITB交通システム研究室教授
  • 試験空間:IITB実験室チャンバー内
  • 被検者:インド在住の21歳~42歳の男女20名
  • 試験装置:ナノイー(帯電微粒子水)技術発生装置、ドライビングシミュレーター(DS)
  • 試験条件:A. ナノイー(帯電微粒子水)技術なし(送風のみ)
    B. ナノイー(帯電微粒子水)技術あり
  • ナノイー(帯電微粒子水)技術濃度:被検者位置 約250×108(個/cc)
試験イメージ
DS走行イメージ
(1)歩行者の飛び出し、(2)交差点右折進入、(3)片側道路封鎖、(4)低速車両の追従、(5)看板による注意散漫
  • 測定項目:脳波(α波)、アイトラッキング(注視回数、停留時間)、車両スピード、進行方向加速度、車体横加速度、ブレーキフォース

試験結果および考察

交差点右折進入時

送風のみと比較して、ナノイー(帯電微粒子水)技術の方が、脳波のパワースペクトル解析においてα波のレベルが有意に低下することが確認された。これは、運転時の集中力向上を示唆する。

α波の値:運転中の変化(有意差

歩行者飛び出し時

送風のみと比較して、ナノイー(帯電微粒子水)技術の方が、視線の注視回数が減少する傾向を確認。これは認知負荷の軽減と視覚処理の効率化を意味し、注意力の向上を示唆する。

注視回数

ナノイー(帯電微粒子水)の発生原理

霧化電極をペルチェ素子で冷却し、空気中の水分を結露させて水をつくり、霧化電極と向き合う対向電極の間に高電圧を印加することで、OHラジカルを含んだ、約5~20 nmの大きさのナノイー(帯電微粒子水)が発生。(図6)

ナノイー(帯電微粒子水)発生装置