驚異的な乗り心地の良さと静かさ

メルセデス・マイバッハ「EQS 680 SUV」が発売されたのは、2024年8月1日。筆者はメルセデス・ベンツ「GLC Core(コア)」とともに開催されたプレス試乗会で2025年4月末に試乗した。
ベースとなるメルセデス・ベンツ「EQS SUV」には、登場時から何度か乗る機会はあったが、マイバッハ・ブランドになった「EQS 680 SUV」は、2790万円にふさわしい風格はもちろん、すさまじく良好な乗り心地や静粛性も別格だった。路面の凹凸をまったく感じさせないしなやかさは、空飛ぶ絨毯のような(乗ったことはないが)夢心地を与えてくれる。同時に、高速道路や山道でのコーナーでの安心感、しっかり感も備えていた。
こうした一見ソフトな乗り味を示すハイパワーモデルは、得てしてクルマ酔いを誘うような素振りも感じさせるのだが、おそらく後席の同乗者の酔いを誘うようなことはないだろう(運転席以外に走行時に乗る機会はなかった)。

ベース車のシステムトータルの最高出力400kW (544PS)、最大トルク858Nmに対し、システムトータルの最高出力484kW (658PS)、最大トルク955Nmというパワー、トルクアップの恩恵もすさまじい。3tを超える車両重量を軽々と加速させるだけでなく、回生ブレーキとメカブレーキの調律も完璧そのもの。
ベース車のメルセデス・ベンツ「EQS 580 4MATIC SUV Sports」は、2032万円(2025年モデル)という価格設定だが、約760万円アップでマイバッハの世界感を味わえるのなら、リーズナブルと思える人が心底羨ましく感じた。
「R」ではなく「GTI」が良いと思ったワケ

8代目のフォルクスワーゲン「ゴルフ」は、2024年7月に8.5世代が発表され、2025年1月から発売が開始された。ハイパフォーマンス仕様の「ゴルフR」は、東京オートサロン2025でお披露目されている。最も印象的だったのは、速さで圧倒するRではなく「ゴルフGTI」だった。8.5世代GTIの最高出力は20PSアップの195kW(265PS)で、動力性能は公道ではもちろん必要十分以上。
スポーツモードにすると、Rよりも勇ましいかも!? 感じさせると咆哮とともに、急な上り勾配でも加速感は伸び続ける。同時にピーキーさを抱かせないのも美点で、1600〜4500rpmという低回転域から最大トルクの370Nmを発揮する(Rは420Nm/2100〜5500rpm)ため扱いやすい。アダプティブシャーシコントロールの「DCC」はオプションで、併せて225/40R18サイズから235/35R19にインチアップされるが、「DCC」ありの「コンフォート」モードは、GTIらしい、しなやかさまで感じさせる。

GTIの価格は549万8000円だが、信号待ちなどで万が一隣に704万9000 円のRが並んでも下を向く必要はない。ハードでスポーツカーそのものであるRも刺激的で楽しいが、毎日乗るなら快適性も併せ持つGTIが伝統のタータンチェックとともに好みという方も少なくないはずだ。
BYDが初めて日本に導入したPHEVの仕上がり

日本向けではBYD初となるプラグインハイブリッドモデルである「シーライオン6」は、スーパーハイブリッドを名乗り、FWDから先に上陸。FWDは満充電時に100kmのEV(モーター)走行が可能ということで、エンジン始動時の音や振動を確認できるかも気になる点だった。
確かに、街中では大半を静かでスムーズなEVとして走行する。高速道路に入り、速度を上げたり、急加速を試みたりするとエンジンが始動するものの、エンジン始動時の音や振動はよく抑えられている。
1.5リッターのNAエンジン(燃料はレギュラーガソリン)を搭載し、エンジンの最高出力は72kW(98PS)、最大トルクは112Nmと驚くほどではないが、モータースペックは145kW(197PS)、300Nmと十分にパワフルで、新東名高速の120km/h区間でも流れを容易にリードできた。
ストローク感のある乗り心地も美点だが、一方で加速時と制動時のスムーズさ、静粛性の高さではベンチマークの1台だったという三菱アウトランダー(529万4300〜671万6600円)には少し及ばない印象を受けた。

ただし、マイナーチェンジ後のアウトランダーは、EV度合いや静粛性、乗り味の良さは1000万円級のSUVに迫るといっても過言ではないからシーライオン6が物足らないというワケでは全くない。むしろ、乗り味と静かさも驚くほど平均的が高い。
BYDのポリシーなのか分からないものの、ほかのEVモデルと同様に、回生ブレーキセレクター(シフト)が備わらず、センターディスプレイで回生レベルの強弱を選べるだけ(強にしてもそれほど回生ブレーキ量というか回生ブレーキ力は強まらない)なのは、せっかくの電動車に乗っているありがたみが薄いようにも感じるが、逆にいえば、ガソリン車などの内燃機関の乗り替えでも違和感は少ないだろう。なお、シーライオン6は、ガソリン満タンで1200kmという足の長さを誇り、FWDの価格は398万2000円(CEV補助金は現時点では未公表)とBDYらしい価格破壊ぶりも強烈だ。
