トヨタとレクサス、ブランド別に分けたパワーソース作戦

トヨタ GR GT

数年前、世界の主要自動車メーカーの多くが内燃機関の終焉を予測し、BEVへ舵を切る一方で、トヨタは高度なV8エンジンの開発に没頭していた。
当時のトヨタ社長、豊田章男氏は、ESG規制に固執するメディアや投資家から厳しい批判を浴びたが、EVと並行して内燃機関にも注力するという戦略は、現在のEV市場の鈍化を見れば、最終的に正しかったことが証明されと言っていいだろう。

トヨタ GR GT

トヨタは、サーキットを制覇するだけでなく、息を呑むようなスポーツカーのステアリングを握るスリルも追求した設計を目指したのだ。
そのスポーツカーこそが、今世紀初頭のレクサスLFAや1960年代のトヨタ2000GTといった、時代を象徴する高性能マシンの後継車として、世界デビューを果たしたトヨタGR GTだ。
GR GTは、GR GT3と並行して開発され、4.0リッターV8ツインターボエンジンをサーキットマシンと共有するとともに、ハイブリッドシステムも搭載している。

新型V8エンジンの開発に着手するにあたり、トヨタはまずエンジンの搭載方法を検討した。
エンジニアたちは、限界域でのハンドリング性能だけでなく、メンテナンスの容易さも考慮し、フロントミッドシップレイアウトを採用した。
また、GR GTと並行して開発されていたレースカーにも搭載する必要があったため、超低重心を実現するためにエンジンを極めて低い位置に搭載する必要があった。
GR GTの全高がわずか120cm弱で、ボンネットラインもさらに低いことを考えると、これは特に困難な課題だったという。

トヨタはエンジンのV字角を明らかにしていないが、ホットV型の構成を採用していることは認めている。
ホットV型では、両方のターボチャージャーをシリンダーバンク間に配置。
これにより、エンジンはよりコンパクトなパッケージとなり、排気管の短縮によってターボレスポンスが鋭くなるのだ。
また、エンジン高を低く抑えるため、ドライサンプ潤滑方式、通常より薄いオイルパン、そしてわずか83.1mmのストローク(ピストンがシリンダー内で移動する距離)を採用している。

この短いストロークは87.5mmのボアと組み合わされ、オーバースクエアレイアウト(ボアがストロークを超える)となっている。
これにより、低速域でのトルクは犠牲になるものの、レスポンスに優れた高回転型エンジンが実現されている。

前述の通り、GR GTはレクサスLFAと同系に位置している。
LFAは、自然吸気V10エンジンを搭載し、史上最高のサウンドを誇るスポーツカーの一つと世界で評価されている。
GR GTがその評判に応えられるよう、通常はエンジンのサウンドを抑制しがちなターボチャージャーを搭載しながらも、トヨタは車体のサウンドを微調整することに多大な開発時間を費やしたようだ。

これは、単に素晴らしいサウンドを実現するだけでなく、エンジン回転数の変化を正確に反映するサウンドを実現するために、排気システムの構造に多大な改良を加えたことを意味している。
これは、スポーティな運転時に重要であり、下を向くことなくエンジンの回転速度を的確に把握できるのだ。

トヨタは加速性能の予想数値を公表していないが、最高速度は199mph(約310km/h)以上になると示唆している。

GR GTの発売は、2027年以降と予想されているが、トヨタはすでにパワートレインのテストを路上とシミュレーションの両方で実施している。
プロトタイプはドイツのニュルブルクリンクを含む複数の場所で目撃されている。
トヨタによると、これらの車両は限界まで繰り返しテストされ、故障するまで運転され、再構築されることで、最も過酷な条件下でもエンジンとドライブトレインの揺るぎない信頼性を確保しているという。

GR GTと同時に、LFAの名称を復活させたコンセプトカーもプレビューされた。
これにより、生産モデルも「LFA」の名称を維持することが確定しましたわけだ。
しかし、搭載するエンジンはV8ではなく、バッテリー電気システムだ。
つまり、レクサスは電気自動車の道を歩み、V8エンジンはトヨタに託すということになる。

トヨタは、レクサスが傘下ブランドの中で電動化のリーダー的存在であると位置付けており、同社初の電動スポーツカーの発売にレクサスが選ばれたのは当然のことだと述べている。

トヨタは、この新型V8エンジンのその他のモデル搭載については言及していない。
しかし、GR GTの発表時にトヨタは、このエンジンはますます厳しくなる排ガス規制に対応するために開発され、トヨタが言うところの「継続的な販売」を確保するものだと述べていた。

トヨタ最高傑作とも言われるV8エンジンに関して続報があるのか、東京オートサロン2026が注目される。