連載

自衛隊新戦力図鑑

侵略者を洋上で撃破するミサイル

日本はこれまで2種類の車載式地対艦ミサイルシステムを配備してきた。ひとつが1988年より調達開始の「88式地対艦誘導弾」、もうひとつが2012年より調達開始の「12式地対艦誘導弾」だ。周囲を海に囲まれた日本にとって、侵略者は当然、海の向こうからやってくる。地対艦ミサイルは、そうした侵略者の艦艇を地上から攻撃するための装備だ。

こちらは2012年より調達が開始された「12式地対艦誘導弾」。陸上自衛隊でさまざまな装備のベースとして使われている重装輪回収車に最大6本のランチャーを搭載する。射程は200km程度と言われている(写真/陸上自衛隊)

88式はソ連/ロシアの脅威に備えるため、主に北海道や東北に配備された。一方で12式は中国の脅威の高まりから、九州・沖縄方面への配備が進んでいる。特に2019年以降は奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島に次々と部隊が新設され、これら島々の護りを固めている。

今年2025年6月の総合火力演習に姿を見せた「12式地対艦誘導弾能力向上型」。重装輪回収車に、4本のランチャーを搭載している。射程延伸のため、以前の12式よりミサイルを大型化し燃料搭載量を増やしたことで、車載出来る本数が減ったのだろう(写真/筆者)

名前は似ているが12式とはまったく違う!

さて、12式地対艦誘導弾能力向上型は名前だけ見ると「12式地対艦誘導弾の改良型」のように見えるが、完全新規設計と言えるほどに異なる。それはミサイルの形状からも明らかだ。以前の12式が円筒形+四方向に羽を備えた「いかにもミサイル!」というかたちであったのに対して、12式能力向上型は対レーダー・ステルス性が考慮された角ばったデザインで、大きな2枚の翼を持つ。

12式能力向上型(左)は長距離を飛行するため大きな2枚の翼を持つ。既存の12式(右)はシンプルな円筒型だ(写真左/筆者、写真右/米豪共同訓練公式Xアカウント)

また、射程ははるかに長い。12式能力向上型は、日本がいま力を入れている「スタンドオフ・ミサイル」(敵が反撃できない遠方から攻撃するためのミサイル)のひとつであり、射程は900~1500kmに達すると言われている。具体的にいうと、(仮に1000kmとした場合)東京から発射しても九州南端まで届く距離だ。

長距離を攻撃するため、目標である敵艦艇の位置情報を飛行中にアップデートできるよう、衛星経由のデータリンク機能を備えている。さらに、敵艦艇へと突入する段階では、複雑な飛行機動を行なって敵の迎撃を回避する能力も備えるという(なお、この回避機動は事前に組み込まれたもので、敵の反撃を感知して回避するというものではない)。

公開された発射試験の画像。10月と11月の2ヵ月間で合計7回の発射試験が行なわれた。ブースターによって勢いよく発射されるミサイルが確認できる。この後、ブースターを切り離し、ターボファンエンジンにより長距離を飛翔する(写真/防衛装備庁)

開発を完了した12式能力向上型は、今年度内に熊本県健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊に配備が開始される。以降は順次、九州・沖縄方面の地対艦ミサイル部隊への配備が進んでいくことだろう。また、この高性能ミサイルを空対艦ミサイル(空発型)、艦対艦ミサイル(艦発型)に転用する計画も進んでおり2027年度の配備開始を目指している。

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