「1」は、1割スピードダウン。雪道走行の基本的なルール

滑りやすい路面では、ほんの数km/h速度を上げただけで制動距離が大きく延びる。

冬の走行において最も基本的なルールとなるのが、通常よりも走行速度を落とすことだ。雪道や凍結路ではタイヤのグリップ力が著しく低下するため、乾燥したアスファルトと同じ感覚で走行することはできない。

クルマが持つ運動エネルギーは速度の2乗で増加するため、速度が高いほど制動距離も延びることになる。また、速度が高いほどスリップした際の立て直しも難しくなる。

乾燥路であっても、冬季はグリップ力に劣るスタッドレスタイヤの装着や路面温度の低下、局所的な凍結などにより、夏場と同じ速度での走行は事故のリスクを引き上げる要因になりがちだ。

走行速度を抑えることは、制動距離の短縮やスリップの防止に加えて、周囲の状況を把握するための視覚的な余裕を生むことで総合的な危険防止にもつながる。

ただし、スピードダウンの1割という数値はあくまで目安であり、凍結などの路面状況や吹雪による視界不良によっては、さらに速度を落とすべきだ。

速度の抑制は自分を守るだけでなく、周囲の車両を事故に巻き込まないようにするための基本的かつもっとも効果的な手段となる。

「2」は、2倍の車間距離。物理的なマージンを確保

路面や視界の状況にもよるが、雪道では最低でも夏場の2倍の車間距離を確保したい

雪道の走行では、速度を落としたうえで車間距離という物理的なマージンを確保することが不可欠だ。

雪道での制動距離は乾燥路面の数倍にまで延びるケースがあり、どれだけ高性能なスタッドレスタイヤを装着していたとしても急には止まれない。また、路面が圧雪路から滑りやすいアイスバーンへ急変したり、前を走行するクルマが急に挙動を乱すことも珍しくない。

冬季の事故を未然に防ぐためには、通常の2倍、場合によってはそれ以上の車間距離を保つのが理想だ。十分な車間距離を確保しておけば、前を走るクルマが急減速したりスリップしてスピンしても落ち着いて対処できる。

加えて、車間距離の十分な確保は先行車が巻き上げる雪煙から視界を守ることにも役立つ。とくに大型車の後ろを走行する場合は、舞い上がった雪で前方が見えなくなることもあるため、十分な車間距離の確保が安全運転には欠かせない。

前走車との距離を保つことは、心のゆとりと同義と言ってもよいだろう。何があっても余裕をもって確実に止まれる距離を維持することが雪道走行の鉄則だ。

「3」は、3分早めの出発。滑りやすい凍結路では焦りは禁物

焦る気持ちが出発前の準備作業や運転操作、車間距離や車速にも表れる。時間に余裕がないと操作ミスを招き、それだけ事故も起こしやすい。

最後の原則は3分早めの出発を心がけ、時間に余裕を持つことだ。冬場の移動は出発前の除雪や暖機運転、さらには路面凍結による渋滞など、思いのほか時間を要する場面が多い。

なにより、時間に追われて焦りが生じると「1割のスピードダウン」や「2倍の車間距離」といった基本事項が守れなくなる。とくに滑りやすい凍結路では、アクセルやブレーキ、ハンドル操作が雑になるだけでスリップを誘発しやすいため、焦りながらの運転は禁物だ。

わずか3分であっても、早く行動を開始する意識を持つだけで心にゆとりが生まれ、適切な操作と冷静な判断力を保ちやすくなる。

また、この3分という時間は単なる移動時間の余裕だけではなく、フロントガラスの霜取りや、屋根の雪下ろし作業の質にも関わってくる。

「走行しているうちに雪が溶けるだろう」と、視界不良のまま運転することが危険であることは明白だ。屋根に雪を載せたままでの走行はブレーキ時に前方へ落下した雪が視界を遮り、追突などの事故を誘発する恐れがある。

積雪による走行前の準備や、通勤渋滞が当たり前に起こる降雪地域では3分と言わず、30分以上の余裕を持ちたい。滑りやすい雪道では、精神的な余裕が安全運転に直結すると心得よう。