BEVの方が魅力的な場合も

おかげさまで今年もたくさんの個体を試すことができた。新型車はもちろん、マイチェンや特別仕様、さらには新旧オーナーカー、激レアモデルまで。総数は数えていないけれど、200以上はテストした。自慢はうち33台を東京〜京都の長距離テストに供したこと。これだけの距離を、しかも軽からスーパーカーまで多種多様に試乗するライターは他にいないと自負している。少なくとも日本で唯一無二だろう(その活動の一端は「ゲンロクWeb」で始まった新連載『西川淳の自動車1Weekダイアリー』をぜひご覧ください)。
それはさておき、京都までのテストで乗った33モデルのうち、今年はなんと1/3、つまり11モデルがBEVだった。欧州の政治戦略に翻弄されるBEVだが、確実に進化しており、経済戦略や環境問題、エネルギー問題、インフラ問題といった(個人的に悩むには)大きすぎる課題を一旦傍にさえおけば、そのうちに「BEVの方が魅力的」だとシンプルに気づく人が増えるような気もする。若い世代では実際にそうなってというし、長距離テストに用いた11台の中には確かに自分で買ってもいいと思えるBEVも数台あった。
京都ドライブ33モデル
せっかくなので「2025年の隠れた名車を」を選ぶに当たり、私は京都ドライブに供した33モデルの中から選んでみることにした。ちなみにその33台とは、
1月 LBX MRR、G580 byEQ
2月 シビックRS
3月 M330i、LBXビスポーク、パサートヴァリアントTDI、アルピナB4GT
4月 A5 TFSI、ヴァンキッシュ
5月 コンチネンタルGTC、アバルト500e、Q4イートロン、アルファードPHV
6月 グランカブリオ、モデルY、280SL(パゴダ)
7月 220dグランクーペ、ウルスS、ID:Buzz
8月 クーパーE
9月 フォレスター、ジュニアエレットリカ
10月 GT-Rニスモ、12チリンドリ、リリック
11月 ヴァンテージロードスター、LX700h、LM500h、M5ツーリング、iX
12月 X3 20d、タイカンGTS、A6イートロンアバント
というものだった。
私的1位には驚かされたあのクルマ

このなかから3台を選んでみよう。西川的第3位はマイナーチェンジした「BMW iX」だ。顔つきなどが変わったというが、相変わらずスタイルはピンとこない。けれども乗ってみればこれが驚きで、ヨーロッパのBEVがいよいよ新たなフェーズに入ったと実感させる出来栄えだった。なかでも肝心要のバッテリーコントロールが素晴らしい。
第2位には「マセラティ グランカブリオ」を挙げておこう。V6ネットゥーノになって熱狂的なファン(V8咆哮好き)がいなくなったぶん、目立たない存在になってしまったが、そこがかえって通好みぽくって良い。クルマとしての完成度の高さは旧型と比べるまでもなく、乗り味も素晴らしい。よくできたGTであると同時に楽しいFRスポーツカーでもあった。
そして私的1位は「キャデラック リリック」だ。このクルマには本当に驚かされた。どうしてカー・オブ・ザ・イヤーの10ベストに入らなかったのか、不思議なくらい(みんなちゃんと乗ってください)。入っていたら間違いなく25ポイント(1位)を与えたと思う。内外デザイン性の高さ、バッテリー消費のうまさ、きめ細やかな動的制御、などなど、さすがは巨人GMの最新作だと納得の出来栄えだ。
そのほか「BMWアルピナ B4GT」の懐深い乗り味には感動したし、「ミニ クーパーE」には(小さな高級車などという使い古された表現の似合わない)上質な実用車としての魅力にあふれていた。アストンマーティンやフェラーリ、そしてランボルギーニの最新モデルからは最先端のラグジュアリーのあり方を学べたような気がする。アウディの新型勢はそれぞれに見所があって、再び注目のブランドになるのではという期待を抱かせるに十分で……。
とはいえ全体的にみれば国産も輸入も“粒揃い”、裏を変えれば“どんぐりの背比べ”だった。2026年もたくさんのモデルデビューが予定されている。2025年に登場してテストできる新型車も含めてこれまで以上の盛り上がりに期待したいと思っている。

