VWの復活を告げるモデル

「フォルクスワーゲン ポロID」。カモフラージュを施したプリプロダクション・モデル(本格的な量産前に、量産ラインで試験的に生産されたモデルのこと)をバルセロナ郊外の山中で1時間ほど走らせただけだけれど、そのデキの良さは疑う余地なし。
「ゴルフ8.0」がデビューして以降、幾多のVWモデルで見られたホイールコントロール(VWの社内用語。車輪が激しく上下する際に微振動が感じられる現象。バネ下重量、ボディの局部剛性、タイヤやブッシュ類の振動減衰特性などが複雑に絡み合って発生する)から完全に解放されているうえ、ボディ剛性がバツグンに優れていて、ダート路を結構なペースで走らせてもすべてをガッシリと受けとめて「コトリ」とさえいわない。
おまけに乗り心地はタイヤの当たりがソフトでゴツゴツとした印象がごく薄い。また、サスペンションのストロークする様子は実に滑らかで、しかもサスペンションアーム類の頑丈さは舌を幕ほど。つまり、「ゴルフ7」までの、ファミリーカーとして理想的な乗り味が返ってきたのだ。
しかも嬉しいことに、コーナリング時のロール量は従来のVWにくらべていくぶん少ないので、スタンダードグレードでもワインディングロードは怖くない。むしろ、楽しみといってもいいくらいだ。モデル名を含め、VWの復活を高らかに告げるモデルといっていい。
コンフォートとスポーツの両立

2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーで僅差の2位に入ったくらいだから、いまさら「隠れた名車」でもなんでもないけれど、「ホンダ プレリュード」。コンフォートモードの乗り心地は本当に痺れる!
路面のうねりを乗り越えたり鋭い突起を乗り越えたときのやり過ごし方が見事で、直接的なショックをまったく伝えることなく、フンワリと走り抜けていくのだ。その際に乗員に伝える衝撃の度合いと上下動の速さのバランスも絶妙。まるで、これから発生する衝撃をすべて演算したうえで、それらを周波数的にどう分散させ、時間軸的にどう伝えるのがいちばん快適かの答えを導き出し、それにあわせて足まわりが振動を生み出しているかのように感じられるのだ。しかも、このコンフォートモードのままかなりハードなコーナリングも楽しめるのだから驚くしかない。
弱点は高速道路でのうねりと目地段差乗り越えのような単発の大入力の処理。これだけは苦手で、フラット感が失われたり直接的なショックが伝わってくる。この場合はGTモードもしくはスポーツモードにすれば不快ではなくなるものの、コンフォートモードの心地よさは失われる。次のマイナーチェンジでは、コンフォートモードの味わいを残したGTモードとスポーツモードのセッティングに期待したい。
1cm単位で移動できる

「フェラーリ ローマ」の後継モデル「アマルフィ」は「日常遣いできるフェラーリ」というテーマも先代から引き継いだ。ローマのデザインはたしかにエレガントで、スタイリング面では「日常遣いできるフェラーリ」を完璧に実践していたけれど、乗り心地はやや硬く(途中の年次改良で大幅に改善された)、ドライバビリティにも一定のクセがあったりして、「日常遣いしたくなるか?」と真顔で問われればやや疑問も残った。
まあ、その程度のことであれ、本来「非日常」が売り物のフェラーリとしては上出来といってもいいのだけれど……。でも、アマルフィはそういった日常遣いの領域が徹底的に煮詰められていて感銘を受けた。
たとえば、静かに発進するときのマナーがローマよりも格段に洗練されていて、本当にソロリソロリと動かすことも、たとえば1cm単位でクルマを移動させることもできるようになった。DCTとしては驚異的なコントロール性能といっていいだろう。
エンジンの反応はその後も従順そのもので、スロットルペダルの踏み込み量とそこで得られるパワーとレスポンスの関係はリニアそのもの。スロットルペダルを踏み込んでから、少し経ってからエンジンがグワッと吹け上がる傾向は完全に消え去った。
でも、いちばん感銘を受けたのはブレーキ。ブレーキ・バイ・ワイヤを採用したことで、高性能車でよくある「ブレーキの踏み始めで予想外に制動力が立ち上がる現象」が完全に解消。どんな状況でも狙ったとおりの制動力を引き出せるのには舌を巻いた。これなら「毎日乗りたくなるフェラーリ」として自信を持ってお勧めできる。

