クラッチの構造は2枚の円盤を押し付けるイメージ

クラッチはエンジンの回転をタイヤへと伝えたり、切り離したりする橋渡しのような存在だ。

教習中は操作の手順だけに気を取られがちだが、最初に理解すべきはエンジンとタイヤの間に存在するクラッチの役割だ。マニュアル車の発進操作の鬼門となるクラッチ機構の理屈を理解することが取得の近道と言えるだろう。

クラッチの構造を理解するためには、表面がザラザラとした2枚の円盤を想像すると分かりやすい。ペダルから足を離した状態では円盤が圧着されるため動力が伝わり、ペダルを完全に踏み込んだ状態では円盤は離れて動力が遮断される。

ペダルから徐々に足を離していくと円盤が接触しはじめ、滑りながら力が伝わる。この接触の瞬間が発進操作に欠かせない「半クラッチ」の状態だ。スムーズは発進操作には、この半クラッチになるペダル位置を把握することが最重要となる。

クラッチペダルの踏み込みが深すぎるとエンジンの動力がタイヤに伝わらない。クラッチペダルを戻しすぎるとエンジンの回転が下がりすぎ、車体がガタガタと大きく揺れ始める。

エンジン音が低くなりはじめ、かつ車体が激しく揺れないポイントが最適な半クラッチの位置となる。この踏み込み量を維持することが発進操作の要だ。

半クラッチの役割は少しずつ力を伝えること

半クラッチの状態は、円盤が滑りながら回転を伝える状態をイメージすると理解しやすい。

発進操作は、重い荷物が載った台車を手で押す場面を想像してみよう。台車に大きな力を一気にかけて急に押そうとしても動かないが、動き出すのを確認しながら継続的に力を加え続けると、それほど大きな力を加えなくとも台車はスムーズに動き出す。

半クラッチを用いずにクラッチペダルから一気に足を離してしまうと、タイヤ側の抵抗が大きすぎてエンストしてしまう。これは大きな力を一気にかけて台車を押そうとする状態と同じだ。半クラッチを使うのは、エンジンの力を段階的にタイヤへと伝え続けてやることが目的となる。

一般的な車両であれば、半クラッチの位置さえ正確ならエンジンの回転を大きく上げずとも発進可能だ。

右足はエンストを防ぐためにアクセルペダルを少しだけ踏んで固定し、左足のクラッチ操作だけに集中しよう。両足を同時に連携させようとすると注意が散漫になるため、まずは左足での半クラッチ状態の保持に全神経を向けることがコツだ。

クルマが動き始める位置までクラッチペダルを戻し、その位置で足を止めて半クラッチ状態を保持する。クルマがしっかりと進み出した手応えを感じたら、クラッチペダルをゆっくり戻し、それから完全に足を離そう。これだけでスムーズな発進ができるはずだ。

坂道発進のコツはサイドブレーキを引いたまま発進してみる

適切な半クラッチ操作ができていれば、ハンドブレーキを引いたまま発進しようとしてもエンストはしない。ただし、アクセルを踏み込みながら長々と半クラッチ状態を維持すると、クラッチ板を傷めてしまうことだけは覚えておこう。

坂道発進の習得を早めるコツは、まずサイドブレーキ(ハンドブレーキ)を効かせたまま発進操作を行ってみることだ。

ハンドブレーキを効かせたままでは当然クルマは動かないが、適切に動力が伝われば車体には前に進もうとする力が生じ、車体の後側が沈み込むか、前側が浮き上がるような変化が現れる。

もし車体に変化がないのであれば、それはクラッチの戻し加減が足りずに半クラッチ状態を維持できていないか、アクセルペダルの踏み込みが浅いということだ。

適切な半クラッチの位置とアクセル量にさえ維持できれば、そのままハンドブレーキを解除するだけで後退することなく発進できる。

操作時は、発進できるペダルの位置で足を固定することと、ハンドブレーキを降ろす際にペダルを踏む力が変化しないように注意を向けよう。

マニュアル車は操作箇所が多いため、すべてを一度に操ろうとすると混乱してしまい上手くいかない。発進操作に慣れないうちは、集中すべき操作とそうでない操作を分けることが重要となる。

クラッチの仕組みを理解し、ポイントを絞って操作することで短い時間でもマニュアル車での発進操作をマスターできるはずだ。