エンジン高が低いのが水平対向エンジンの特徴。その代償としてロングストローク化には限界がある。

スバルは完全新設計の水平対向エンジンを開発している。2025年6月のスーパー耐久富士戦の現場で、同社の藤貫哲朗CTOが明らかにしたものだ。

開発中の新型水平対向エンジンは、現行のFA型・FB型・CB型とは異なる新基軸となるもので、カーボンニュートラル燃料に対応する。藤貫CTOは「スーパー耐久と新型エンジンの開発の関係を近くしたい。次の標準エンジンとして開発しているこのエンジンを、スーパー耐久で鍛え上げられたら」と語っていた。

では、どんなエンジンになるのか? ジャパンモビリティショー2025前の説明会で藤貫CTOと雑談した際のヒントを元に考察してみたい。

現行スバル水平対向エンジンのラインアップ

現行のスバル・エンジン・ラインアップは

FB25型水平対向4気筒。かつては、1.6LのFB16もあったが、現在は2.0LのFB20と2.5LのFB25の2本立て。

FB型(2010年~)
FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比12.5 燃料噴射:DI(燃料筒内直接噴射)
FB25 排気量:2498cc ボア×ストローク:94.0mm×90.0mm 圧縮比11.9 燃料噴射:DI(燃料筒内直接噴射)

自然吸気のFA24型2.4L水平対向エンジン。BRZ/GR86が搭載する。

FA型(2012年~)
FA24型(NA)排気量:2387cc ボア×ストローク:94.0mm×86.0mm 圧縮比12.5 燃料噴射:DI(燃料筒内直接噴射)+PFI

FA24型(ターボ)排気量:2387cc ボア×ストローク:94.0mm×86.0mm 圧縮比10.6 燃料噴射:DI(燃料筒内直接噴射)ターボ過給

CB18型水平対向4気筒エンジン

CB型(2020年~)
CB18 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm 圧縮比10.4  燃料噴射:DI(燃料筒内直接噴射)ターボ過給

新型エンジンはどんな姿になるのか

新開発水平対向エンジンがどうなるか。
新しい水平対向エンジンは、基本的に1種類でモーターの大きさや数でバリエーションを作っていくという。

まずは気筒数だ。現在はすべて4気筒。かつてはポルシェと同じく水平対向6気筒エンジンを持っていたが、現在はディスコン(生産中止)になっている。発電用の水平対向2気筒の可能性もなさそうだから、必然的に4気筒になる。

次は基本骨格だ。「基本骨格をこれ以上コンパクトにするのは難しい」(藤貫CTO)という。熱効率を追求するならさらなるロングストローク化(ストローク/ボア比のアップ)したいところだが、ストロークを伸ばす=エンジンの全幅が広くなりエンジンルームに収まらなくなる。現行最長の90mmが新エンジンでも踏襲されるのではないか。排気量はできるだけ大きくしておきたい。となれば、2.5L(94.0mm×90.0mm)になるのではないか。

発電専用エンジンにはしない理由

少し前の中期経営ビジョン「際立とう2020」では、「熱効率40%以上」がうたわれていた。

新世代エンジンとなれば、当然「発電専用」も視野に入るはず。藤貫CTOは「新規の水平対向エンジンは電動化とのセットを考えている」と語った。では、発電専用の水平対向エンジンを開発しているのか? 

藤貫CTOは、「水平対向を発電だけに使うのはすごくもったいない。水平対向は熱容量が大きいので、始動時にエンジン自体を暖めるためのエネルギーは直列エンジンよりどうしても大きくなります。だから、(発電用に)エンジンを作動/停止を頻繁にやるのはあまりメリットが出ない。レンジエクステンダーのような使い方なら、もう少し熱容量が小さいエンジン、直列4気筒、あるいは直列2気筒エンジンを寝かせて載せたほうがいいのではないか、と個人的には考えています」という。

つまり、新開発の水平対向エンジンは発電専用エンジンではないということだ。

構造上、熱効率が直列エンジンより劣るとされる水平対向エンジンだが、「暖まってしまえば、熱効率は悪くない。振動の小ささは水平対向エンジンの長所。回していたときの振動の小ささ、S:HEVの2.5Lの水平対向エンジンも直4と比べて圧倒的に回したときの振動が小さいです」という水平対向エンジンのメリットは次世代型でも活きる。

BYDの上級ブランド「仰望(YangWang)」は、発電用の2.0L水平対向4気筒エンジンを開発した。

電動化との組み合わせで燃費を良くするというのは基本ラインだが、ただでさえ、部品点数が直4より多いのでコスト高になりやすい水平対向だからコストを下げるのも至上命題だろう。

また、Euro7などのこれからの排気規制にミートしていくのも次世代水平対向エンジンの課題だろう。

「基本的に1種類」である次世代水平対向エンジンだが、「パワーレンジは拡げたい」という。そこはモーターの大きさや種類で対応するとのことだが、「ターボ(過給)」はどうするのか? そこを藤貫CTOに尋ねると「……」と言葉を濁していた。

勝手な想像だが、次世代水平対向エンジンにも「ターボ」はあると予想する。

同じ水平対向エンジンを持つポルシェは、911GTSで「T-Hybrid」というシステムを開発した。電動ターボ(eTurbo)を使ったマイルドハイブリッドシステムだ。

「いつかは911」と再び思わせてくれたポルシェ911GTS。JCOTYテクノロジーカー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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「T-Hybridは単純な燃費ではストロングハイブリッドに敵わないが、エミッションを良くするという意味では必要になってくる。ハイパー系のエンジンとマイルドハイブリッドはスポーツカーとしては理に適っている。λ=1(ストイキ)燃焼で出力が落ちた分(リッチ領域を使わない)、排気量を2割上げて(911GTSは排気量を3.0L→3.6Lにアップしている)ハイブリッドにする。後輪だけの回生では足りないから、ターボ排気で回生する。理屈上、その通り」とT-Hybridを説明してくれた藤貫CTO。

スバルファンとしては、新世代水平対向エンジンにも電動ターボを採用してほしいが、コストを考えると難しいだろう。

では、結論。

新世代水平対向エンジンは、2.5Lで自然吸気/過給があり、自然吸気はS:HEVと組み合わせて、現行のFB25+ストロングハイブリッドを大幅に超える燃費性能を発揮する。マイルドハイブリッド化(現行では12Vのe-BOXER)されるバージョンでは、48V化してモーターの出力も上げる。
ターボ過給は、そのマイルドハイブリッドと組み合わせて、次期スバルのスポーツフラッグシップモデルに搭載する……と予想する。

2026年中に、おそらく次世代水平対向エンジンの技術説明会は開催されるはず。2027年には新しい水平対向エンジンを積んだスバル車が登場する……はず。楽しみだ。