スタッドレスタイヤを履き潰すメリットは経済性

新品スタッドレスタイヤの溝の深さは10mm前後となる。プラットフォームは50%摩耗した時点で露出するため、スタッドレスタイヤとして使えなくなっても、深さ5mmほどの溝が残る。

スタッドレスタイヤには2つの摩耗指標が存在する。ひとつは「プラットフォーム」と言い、スノータイヤとしての使用限界を示すサインだ。もうひとつは残り溝が1.6mmになったことを示す「スリップサイン」であり、保安基準で規定された全タイヤ共通の使用限界を示すサインとなる。

プラットフォームは溝の深さが新品時の半分まで露出した時点で現れるため、スリップサインが出るまではサマータイヤの代わりとして使用しても法律に抵触せず、車検にも問題なく通る。

スタッドレスタイヤの履き潰しは、買い替えサイクルの延長や交換工賃の節約など、経済面ではメリットばかりと言えるだろう。燃費悪化の懸念はあるが、新しいサマータイヤを購入する費用と比較すれば経済的な優位性は揺るがない。

サマータイヤに比べてケース剛性が低く、トレッドも柔らかいためハンドルを切ってから一拍遅れて車体が動き出すような特性もスタッドレスタイヤのウィークポイントとなるが、低速走行に限定すればこうしたデメリットは気にならないだろう。

また、低速走行ならスタッドレスタイヤ特有の高周波成分を含んだロードノイズも気になりづらい。経済性だけに着目すれば、スタッドレスタイヤの履き潰しは非常に魅力的な選択肢であることは間違いない。

もっとも苦手なシーンは雨の高速道路!履き潰しの危険性

スタッドレスタイヤはサマータイヤよりも雨に弱い基本特性がある。履き潰して溝の深さが減るとその特性がより顕著に現れやすい。

スタッドレスタイヤの履き潰しは経済的なメリットがある反面、安全面でのデメリットは無視できないレベルで多く存在する。

スタッドレスタイヤは低温下で柔らかさを保つ設計となっているため、夏の高温下ではゴムが過剰に変形し、路面との接地が不安定になりやすい。それによるグリップの低さは、加速・減速・コーナリングのいずれでも顕著に現れ、とくに制動距離は乾燥路面でもサマータイヤに比べて大きく延びることとなる。

さらに、構造的に熱がこもりやすい性質を持つため、高温下で高速走行を続けると熱によりトレッド面が剥離するヒートセパレーション現象が発生し、走行中のタイヤバーストを招く危険がある。

また、スタッドレスタイヤは雨にも弱い。スタッドレスタイヤの柔らかいゴムは路面の水をかき分ける力も弱いうえ、変形しやすいブロックが排水路を狭めてしまい排水性も低下しやすい特性を持つ。

その結果、溝の深さは十分であっても路面とタイヤの間には水膜が生じやすく、サマータイヤよりも低い速度でハイドロプレーニング現象が起きやすい。

サマータイヤとして使うなら低速・低負荷走行に限られる

あまりに古くなったスタッドレスタイヤや、ひび割れたスタッドレスタイヤは、グリップの問題以前に、低速走行時でもパンクのリスクが高まるため使用は控えるべきだ。

峠道や高速道路を頻繁に利用するなら、スタッドレスタイヤの履き潰しは絶対に避けるべきだ。

ある程度の速度や負荷までならサマータイヤと大差なく走行できる。しかし、スタッドレスタイヤは緊急回避や急ブレーキ時といった高負荷走行には耐えきれずスリップを起こしやすい。

一定のしきい値を超えると、タイヤとしては役立たずと言えるほど低性能な振る舞いを露呈してしまうのが、スタッドレスタイヤをサマータイヤとして使ったときの実態だ。

一方で、近所への買い物といった低速走行が中心の街乗りに限定するのであれば、履き潰しが許容できる運用と言えるだろう。ただし公道を走行する以上、不測の事態は起こり得る。サマータイヤを履いていれば防げたかもしれないと、後で悔やむことにもなりかねない。

スタッドレスタイヤの履き潰しに、経済性以外のメリットはない。それどころか、制動性能の低さが原因で事故などを起こせば、修理費や賠償によってかえって損失を増やす恐れがあることは覚えておきたい。