
旧車と呼ばれる古い国産車を現代の路上で「普通に」走らせることは、想像する以上に難しい。エアコンがないのは当然としてもパワーステアリングがなければパワーウインドーもない。さらにはタイヤサイズが細くて径が小さいため、選べるタイヤも限られている。最大の問題はエンジンやミッションの調子がしっかり維持されているかどうかで、信号が多く慢性的に渋滞している街中ではエンジンがストールしてしまうことだって考えられる。

だから、街中で古いクルマが普通に走っているのを見かけたら、オーナーの苦労や努力に敬意を表してもいいくらい。特に排気量が360ccまでしかない「サブロク」と呼ばれる軽自動車ならなおさら。小さなエンジンだから手入れも簡単だろうと思われるかもしれないが、何しろ補修部品が手に入りづらいため直したくても直せないことだってある。

NATS、日本自動車大学校のブースに1台のサブロク軽自動車が展示されていた。ノーマルのままだしカラーリングも当時のものを再現しているため、一見すると非常に地味。来場者の流れも滞留することなく、別のクルマに向かう人が多いように感じられた。そのクルマこそホンダの初代ライフだ。

ライフはホンダN360の後継車として1971年に発売された。N360との大きな違いがエンジンで、N360は空冷2気筒OHCだったものをライフでは水冷2気筒OHCとしていた。そのためエンジン音が静になり夏のオーバーヒートや熱ダレとも無縁になった。現在でも数多くの個体が残されていて、派生車であるホンダZやライフ・ステップバンなどとともに旧車イベントに展示されていることも多い。

このライフは日本自動車大学校に以前からあった個体で、鮮やかなイエローに塗装されていた。それを「家族が楽しくドライブする、当時の風景を思い浮かべながら、新車以上の輝きを目指して仕上げました」という。鮮やかなイエローも悪くはないが「当時の風景」とあるように、できればボディカラーは純正色が望ましい。そこで全面的な剥離作業を経て現在のカラーリングにされたのだ。

「楽しくドライブする」という点もポイントで、家族旅行へ安心して向かえるようにするなら万全のメンテナンスが不可欠。単に全塗装するだけでなくしっかりとエンジン・ミッションの整備を施されている。それはエンジンルームを見れば明らかで、徹底的に磨き込まれたヘッドカバーや塗装し直されたエアクリーナーケース、タイミングベルトカバーに表れている。

キャブレターのオーバーホールと調整がエンジンの状態を左右するもので、もちろんしっかりと調整されている。また安心してドライブするならブレーキのメンテナンスも欠かせない。4輪ともドラムブレーキのライフだからホイールシリンダーのオーバーホール作業は必須だし、マスターシリンダーも同様。さらに学生たちはマスターシリンダーの注意書きまで複製して当時の様子を再現している。このライフで「テストランキャラバン」という卒業旅行を満喫することが最終目標だとか。いい思い出が作れそうだ。
