連載

一代限りで消えた車名

多様性のある軽自動車市場の最後の時代?

ダイハツ・ソニカの販売期間である2006年〜2009年は、軽自動車に多様性があった最後の時代かもしれない。市場のメインストリームはスズキ・ワゴンR、ダイハツ・ムーヴ、ホンダ・ライフを中心としたハイトワゴンが占めているものの、2003年にダイハツ・タントがスーパーハイトワゴンへの扉を開いた。

スズキ・ワゴンR(3代目/2003年)
ダイハツ・ムーヴ(3代目/2002年)
ダイハツ・タント(初代/2003年)

一方で、ダイハツ・ミラやスズキ・アルトといったセダンタイプもダイハツ・エッセやホンダ・ゼストなどを加えて健在。そこに、三菱i(アイ)やスズキMRワゴン、スバルR2などのモノフォルムデザイン車も登場している。

スズキ・アルト(6代目/2004年)
ダイハツ・ミラ(6代目/2002年)
ダイハツ・エッセ(2005年)
ホンダ・ゼスト(2006年)
三菱i(2006年)
スバルR2(2003年)

さらに、伝統のスズキ・ジムニーを筆頭に、スズキKei(ワークス)、ダイハツ・コペン、ダイハツ・テリオスキッド、三菱パジェロミニといった個性派モデルも存在感を示していた。

スズキ・ジムニー(3代目/1998年)
ダイハツ・コペン(初代/2002年)

今回取り上げるソニカは、スズキ・セルボやスバルR1などの軽自動車のスペシャルティカー的な立ち位置と言えた。そんなソニカを振り返ってみよう。

スズキ・セルボ(5代目/2006年)
スバルR1(2004年)
ダイハツ・ソニカ「RSリミテッド」(2006年)

※なお、軽自動車の定番中の定番、軽ワンボックスや軽バン、軽トラックは相変わらずコンスタントに売れている。

SONIC SPEED CAR

ダイハツは、ライフスタイルの変化やスモールカーシフトの流れをとらえ、自分らしさや二人の時間を大切にする「フリースタイルカップルズ」をターゲットに、走りの質感革新を目指した新ジャンルカー。「爽快ツアラー」のコンセプトのもと、ロングドライブを快適に楽しんでいただける「爽快な走り」を徹底的に追求したクルマとした(ソニカのプレスリリースより)。

ダイハツ・ソニカ「RSリミテッド」(2006年)

ロー&ロングのモノフォルムデザインは全高こそ1470mmと抑えめだが、2440mmというロングホイールベースによる余裕のある室内空間(室内長1915mm×室内幅1320mm、カップルディスタンス860mm)を確保していた。

ソニカ寸法図(プレスリリースより)

パーソナルユースのツアラーらしいスタイルは、「Sonic Speed Car」あるいは「Soaring and Nimble Car=舞うように軽快なクルマ」から名付けられたソニカの車名は実に相応しい。

ソニカ「R」(2006年)

インテリアも軽自動車を超えたモダンなデザインになっており、トップグレードの「RSリミテッド」は専用色のシートやMOMO製ステアリングが奢られるなど、スペシャルティらしく仕立てられている。

ソニカ「RSリミテッド」のインテリア。シートは専用色。フロントシートの左右間もコンソールなどがなくシートは広々。折り畳み式のアームレストも備えている。
ソニカ「RSリミテッド」のインストゥルメントパネル。

意欲作が実験車か……

ソニカのパワーユニットは2005年に登場したダイハツの新世代エンジンKF-VEをターボ化したKF-DETが初めて搭載された。さらにトランスミッションも世界初のインプットリダクション方式3軸ギヤトレーン構造を採用したCVTを組み合わせるなど、ダイハツの新開発メカニズムが惜しみなく盛り込まれている。

ダイハツの新世代エンジンKF-VEをターボ化したKF-DERTエンジン。658cc直列3気筒DOHC12バルブインタークーラーターボで、64ps(47 kW)/6000rpm・10.5kgm(103Nm)/3000rpmを発揮。

このCVTのおかげでカタログ燃費はFF車で23km/L、4WD車でも21km/L(10・15モード)を実現。2007年には「省エネ大賞」の「資源エネルギー庁長官賞」を受賞している。

ソニカがダイハツ初搭載となった新開発のCVTが好燃費と静粛性に貢献。

駆動方式こそFFと4WD(スタンバイ式)が用意されたものの、パワートレインはターボ+CVTのみ。グレードも「R」「RS」「RSリミテッド」とシンプルなものだった。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リヤがトーションビーム式(4WDは3リンク式)とオーソドックスな設定ながらブッシュ類を専用チューニングして「爽快な走り」を実現している。

FF車の前後サスペンション(フロントは4WDも同様)。前後にスタビライザーを備え”爽快な走り”を実現。ただし、4WD車にはリヤスタビライザーが備わらない。

加えて「爽快ツアラー」だけに、レーダークルーズコントロールをオプション設定したほか、制振・防音性を高めており、4速ATのミラより3dB〜5dB静かになっているという(ソニカのカタログ掲載値)。

フロントバンパーに設置されたレーザーレーダーのセンサー。

それだけに価格は113万円(「R」FF)〜147万5000円(「RSリミテッド」4WD)と、ミラの87万1500円(「L」3AT/FF)〜118万6500円(「Xリミテッド」CVT/4WD)よりもかなり高めの設定だった。

ダイハツの軽自動車では最短の販売期間

2006年から2009年にかけての軽自動車販売台数の上位は大口の法人需要が見込めるアルトやミラこそランクインするものの、上位はワゴンR、ムーヴ、タント、スズキ・パレット、ライフなどで占められていた。

順位メーカー通称名2007年累計2006年累計前年年累計比
乗用           1スズキ  ワゴンR           224082220688101.5 
2ダイハツ ムーヴ            199924197496101.2 
3ダイハツ タント            113509107865105.2 
4ホンダ  ライフ            942989919495.1 
5ダイハツ ミラ             8840169443127.3 
6スズキ  アルト            738968382088.2 
7日産   モコ             573906712385.5 
8三菱   eK             566856705284.5 
9スバル  ステラ            489255291092.5 
10ホンダ  ゼスト            472747468963.3 
2006年度-2007年度軽自動車販売台数トップ10(全国軽自動車協会連合会)
順位メーカー通称名2009年累計2008年累計前年累計比
乗用           1スズキ  ワゴンR           19343020849492.8 
2ダイハツ ムーヴ            16242319335884.0 
3ダイハツ タント            161576159610101.2 
4スズキ  アルト            9924572971136.0 
5ダイハツ ミラ             9560378524121.8 
6スズキ  パレット           7018667411104.1 
7ホンダ  ライフ            660899271471.3 
8日産   モコ             566466061493.5 
9ホンダ  ゼスト            412474227697.6 
10ダイハツ エッセ            3474633679103.2 
2008年度-2009年度軽自動車販売台数トップ10(全国軽自動車協会連合会)

ソニカはというと、デビュー年の2006年度こそ1万8953台を販売するものの、2007年度は6158台と急減。2008年度に至ってはそこからほぼ半減の3881台となり、販売終了(2009年6月)となる2009年度は236台だった。
デビュー時の月販目標台数は2000台と軽自動車としては至極控えめな設定だったが、発売1ヶ月こそ5000台を販売したものの、平均月販台数で言えばデビュー初年度ですら1600台弱と目標に届いていない。

2007年8月に小変更されたソニカ「RSリミテッド」。

2007年にエクステリアとインテリアの小変更を行なっているものの、販売回復を見込めるようなものでもなく、グレード体型や価格の見直しも行なわれず(むしろ微妙に値上げ)、特別仕様車も設定されなかったことから、ダイハツは早々にソニカを諦めていたのではないだろうか?と思わずにはいられない。

小変更後のソニカ「RS」。フロントグリルがハニカムメッシュからバータイプに変更されたほか、「RS」系に装備されるリップスポイラーやサイドストーンガードが樹脂無塗装からボディ同色に変更された。
2007年の小変更を受けた「RSリミテッド」のインテリア。シート表皮材質が変更されたほか、インストゥルメントパネルとドアトリムの色がグレーからブラックに変更。

結局、2006年6月19日の発売から2009年6月30日までの3年で販売終了。これはダイハツの軽自動車では最短だったようだ。

軽自動車はハイトワゴン〜スーパーハイトワゴンの時代へ

ソニカはモノフォルムのロー&ロングなスタイルはスリークでカッコイイ。スポーティなモデルだけにMTがあればまた違った評価が得られたのかもしれないが、ソニカがターゲットとしたパーソナルな軽自動車ユーザーの嗜好はすでにスポーティよりもユーティリティに移っていたようだ。

2007年に小変更を受けた「RSリミテッド」のインテリア。スポーティかつスペシャルティらしい特別感のあるデザインだ。

結局、一部の超個性派モデル……本格オフローダーのジムニーや、唯一の軽オープンであるコペンを除けば、軽スペシャルティはこの後ほとんど消えていくことになる。時代の流れとはいえ、ソニカは惜しいクルマであった。

連載 一代限りで消えた車名

旧車 20時間前

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