あくまでも競技で勝つための選択肢!
コンパクトSUVはドリフト向けのパッケージだった!?
2026年で創設35周年を迎えたカザマオートサービスは、パーツメーカーとしてのポジションをさらに強化するため、従来製品のブランド名を「カザマインダストリーズ」へ変更することを発表した。
そんなカザマインダストリーズにとって初のワークスマシンとなるのが、レクサス初のコンパクトクロスオーバーであるLBXをベースにしたドリフト競技車両だ。

2025年夏、EV時代へ舵を切ったレクサスは大幅な車両ラインアップの見直しを行い、約10モデルに及ぶ生産終了を発表。RC FやIS500といった現役レクサス車種をフォーミュラドリフトジャパン(以下FDJ)に投入してきたカザマにとって、この決定はまさに青天の霹靂だった。
また、2023年から2025年まで活躍したIS500 “F SPORT Performance”の存在により、レクサスが公式にサポートするモータースポーツ活動の中で、カザマのFDJ参戦は唯一の現役4ドアセダンスポーツモデルという立ち位置を確立していた。

もはやドリフト競技もレクサスにとって無視できない存在となる中、IS500の生産終了後、FDJ2026シーズンに向けてどのような体制を構築するかが大きな課題となっていたと、風間代表は語る。
「やるなら、これまでと同じようにレクサスのスポーツモデルで戦いたい。そう考えると、まず2ドアクーペのLCが候補に挙がりました。しかし、日進月歩でレベルが上がり続けるFDJの現状を考えると、ボディの重さやホイールベースの長さがネックとなり、現実的ではありませんでした。そこで他の車種を見渡したときに、LBXには『MORIZO RR』という面白いスポーツモデルがあるじゃないか、とひらめいたんです」。

LBXは、レクサスのSUVラインアップの中でも最小となるコンパクトクロスオーバーSUVだ。
そしてMORIZO RRは専用パワートレインを備え、リヤにGRヤリス同様のGA-Cプラットフォームを採用するなど、いわばレクサスの中に隠れたGRモデルとも言える存在である。サイズも、すでにFDJで活躍しているGRヤリスとGRカローラの中間に位置し、ドリフトベースとして高いポテンシャルを備えていることは明らかだった。

しかし、光明が見えた矢先に立ちはだかったのが、北米由来のFDJならではのレギュレーションの壁だった。車両規則の冒頭には「トラックやSUVでの参加は認めない」と明記されていたのだ。
「ここからは、日本のFDJ事務局を通じて辛抱強く交渉しました。もともとの趣旨は、アメリカで主流のフルサイズトラックやSUVが危険という理由だと思うんです。でもLBXは日本規格のコンパクトSUVで、すでに走っているハッチバック車両とサイズ的にも大きな差はない。その結果、レギュレーションの文言自体は残したまま、“特認”という形でLBXの出場を認めてもらうことができました」
GOサインが出て車両が到着したのは昨年9月。そこから始まったのは、4WDだったパワートレインをドリフト競技に対応するハイパワーFRへと作り替えるという大掛かりなプロジェクトだった。

エンジンは、シリーズ参戦でノウハウが豊富でパーツ供給面でも有利な東名パワードのキットを用い、3.6L仕様の2JZへスワップ。ボンネット高にも余裕があり、タービンのインテーク周りを除けば比較的余裕のあるレイアウトを実現している。

タービンは、昨年製作したGRカローラで好感触だったGT75100_BBを選択。ECUはLINKを使用し、NOSによる出力底上げも含めて、目標出力は1000psオーバーとなる。

ラジエターはトランクへ移設し、フロントにはトラスト製インタークーラーとオイルクーラーを配置した。

フロントサスペンションは、カザマインダストリーズのノウハウを最大限に活かし、アップライト、ナックル、ロアアーム、テンションロッドをすべて新設計。サスペンションタワー上部は純正位置を維持している。

リヤサスペンションはGRカローラと基本的なアームレイアウトが共通で、主にアーム長の違いによるものだという。ただし、ナックル側のアーム取り付け位置を変更するなど、トラクション向上を狙った独自加工が施されている。車高調はDG-5の特注スペックで、スプリングレートなどは今後のテスト走行で煮詰めていく予定だ。

リヤサスメンバーはクイックチェンジデフをマウントするため大幅な加工が施され、あえてメンバー位置を地面側へ数cmオフセットするなど、LBXならではの工夫も盛り込まれている。

ブレーキはウィルウッド製対向4ポットキャリパーを採用し、フットブレーキとサイドブレーキの2系統を装備。通過ライン指定が厳しいFDJでは、前後のフットブレーキは制動というよりも、角度を維持したままドリフト距離を伸ばす場面で使用されることが多いという。

ダッシュボードは規定により純正を残しつつ、ステアリングシャフトを新設。チルトン製吊り下げペダルと組み合わせ、ドライビングポジションはやや後方へオフセットされている。ステアリングはカザマインダストリーズ製で、メーターはLINK製を採用した。

シフトフィールの良さ、軽さ、使用頻度の高さ、そして現場での交換のしやすさを考慮し、ミッションはサムソナス製5速シーケンシャルドグを採用。クラッチはORCの1000F、デフはブルドッグ製クイックチェンジをスプール仕様で組み合わせている。

トランク内には、リヤクォーターから導入したエアを電動ファンでラジエター下部へ排出するエアフローを構築。オートサロン出展時点での車重は1340kgで、今後さらに軽量化が進められる可能性もあるという。

エクステリアは、IS500時代と同様にLBX用エアロパーツを展開するアーティシャンスピリッツによるボディキットを装着。この車両専用に製作された全幅2025mmの前後フェンダーを基準に、アンダーパネルも新設計されている。

足元には、ドリフト競技用として高い信頼を誇るグラムライツ57NR(F9.5J+12 R10.5J+22)とアドバンAD09(F265/35R18 R275/35R19)を組み合わせた前後異径仕様を採用。一見オーバーフェンダーに見えるフェンダーは、本体と一体成形されたブリスター形状である点にも注目だ。

モティーズとカザマインダストリーズの赤×黒を基調としたカラーリングは、アートファクトリーがデザインおよび施工を担当。ラッピングフィルムには、クリア塗装のような艶感を持つ新素材が使用されているという。

オートサロン会期中には、レクサスLBXにケン・グシ選手、GR86に大湯都史樹選手、そしてチーム移籍となる山中真生選手がドライブするレクサスRCという3台体制も発表。ブランド刷新に合わせ、チーム名も「カザマレーシングチーム」へと改められた。
惜しくも2024年のGR86、2025年のGRカローラに続く3年連続のカスタムカーコンテスト受賞とはならなかったが、FDJの舞台でその高い技術力を証明することは間違いないだろう。
●取材協力:カザマオートサービス TEL:048-745-2026
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