着手の順序はケースバイケース

当記事の素材は2021年型ヤマハMT-07。オーナーの清本さんは、筆者の古くからのツーリング仲間。

サーキットのような快走路は楽しいものの、見通しと路面状況が悪い県道や舗装林道などでは、フロントフォークは戻りが早すぎ、リアサスはストローク感が希薄で、コーナリングが組み立てづらい。

2021年型MT-07の足まわりをオザワR&Dでモディファイするにあたって、オーナーの清本さんと僕はそんな印象を抱いていた。

右がMT07のオーナーである清本さんで、中央がオザワR&Dの代表を務める小澤さん。左はメカニックの橘田さん。

そしてそれらの問題は、オザワR&D独自の新車整備と、フロントフォークへのカートリッジダンパー投入で、かなり解消できたのだが(第1/2回目で紹介。フロントの動きが落ち着いた波及効果か、リアのストローク感も適度に改善された)、今回はさらなる進化を目指して行った、リアショックのモディファイを紹介したい。

第2回目で紹介した通り、フロントフォーク内部にはビチューボのカートリッジダンパーを投入。

なお世の中には、“サスセッティングはリアからが基本で、フロントはリアが決まってから”という説があるようだが、小澤さんは必ずしもそんなことはないと言う。

作業効率と足腰への負担を考慮した、オザワR&Dの整備環境は独特。リフトに載せて持ち上げる一方で、天井からタイダウンで吊る形で車体を直立させる。

「予算が潤沢にあるとか、明らかにリアサスの動きが悪いとか、とにかくアフターマーケット製のリアショックを装着したいなら、リアからでもいいと思います。でも今回は、予算に限りがあって、動きとしてはフロントのほうに違和感を覚えて、一方のリアショックはそんなに悪くないと思えたので、フロントから着手しました。言ってみればケースバイケースで、私自身としては、絶対にどちらからという決まりはないと思いますよ」

20N/mmの違いで乗り味が激変‼

MT-07のノーマルリアショック。スプリングは最上部のみ、中心径が小さくなっている。上部にはプリロード、下部には伸び側ダンパーアジャスターを装備。

ここからは作業編で、リアサスのストローク感を阻害している原因は、スプリングレートの高さ(=硬さ)と推察した小澤さんは、まずはノーマルのリアショックを分解して計測に着手。

ちなみに一般的なスプリングなら、線径と中心径と有効巻き数を調べれば、計算式でレートが算出できるのだが、MT-07のノーマルリアショックのスプリングは、最上部のみ中心径が小さくなっているため、小澤さんが独自に製作したテスターを使用。

独自に製作したテスターを使って、ノーマルリアショックのスプリングレートを計測。ストロークさせながら小澤さんが数字を読み上げ、橘田さんが記録。

結果は115N/mmだったので、とりあえず95N/mmを装着して試してみたところ、なんと一発目でまさかの好感触‼ スロットルやブレーキの操作で発生するピッチングがナチュラルになり、乗り心地も良好になった。

オーリンズのリアショックスプリングには、レートが記されている。左は10.0kg/mm(98N/mm)で、右は95N/mm。

もちろんスプリングレートを前後に振れば、さらに良くなる可能性はある。そこで90N/mmと100N/mmをテストしてみたのだが、快適性と運動性のバランスを考えると、やっぱり95N/mmがベスト。

以後は実際にいろいろな場面を走って、プリロードと伸び側ダンパーを自分好み調整することを前提として、清本さんのMT-07の足まわり改善作業はひとまず完了となった。

清本さんの愛車のボディカラーはブラックなので、イエローのスプリングは程よいアクセントになる。

「当初の予想通り、リアショックに関してはスプリングの交換だけで済みましたね。スプリングレートが20N/mm下がっても、ダンパーの利き方は伸圧どちらも違和感が無いので、内部の見直しは必要ないでしょう」

オザワR&Dならではの仕事

ノーマルリアショックにオーリンズのスプリングを組みつけているところ。

第1/2回目で紹介した新車整備/フロントフォークへのカートリッジダンパー投入と同じく、今回の作業も至ってスムーズに進んだ。ただしよくよく考えてみると、それはオザワR&Dだから……と、言えなくはない。

右のノーマルと比較すると、オーリンズは全長が10mmほど短い。上部の中心径も異なる。

と言うのも、まず同店はノーマルショックのスプリングレートを計測できる態勢を整えているし、テスト用としてさまざまなレートのスプリングを準備しているのだ。

ノーマルリアショック+オーリンズ製スプリング用のカラーを、旋盤で削り出す小澤さん。

もっとも、オザワR&Dが在庫しているスプリングは大半がオーリンズ製で、ノーマルショックのスプリングとは各部の寸法が異なるのだが、同店はその問題にカラーのワンオフ製作で対応。

今回の作業では全長+内外径調整用として上側カラーのみを製作したが(実測スプリング長は、MT-07:169mm、オーリンズ:159.5mm)、上下のカラーを作ることも珍しくないと言う。

調整用のカラーはジュラコン製。金属製ではないことを不安に感じる人がいるかもしれないが、同店が過去に製作したジュラコン製カラーが破損した事例は無いそうだ。

いずれにしても今回の作業を通して僕は、MT-07の乗り味の激変ぶりと、オザワR&Dの仕事に大いに感心。

そして以下は余談だが、3回目の取材を終えて数週間後、僕は以前から乗り心地に不満を抱いていた愛車のモトグッツィV850GTを同店に持ち込み、アイコン製リアショックのスプリング交換を依頼。

標準の18-25-33N/mm(シングルレートと仮定して計算すると24N/mm)をオーリンズの22N/mmに交換したら、なかなかの好感触が得られたものの、さらなる上質さを目指して、今後は20N/mmを試してみようと思っている。

筆者の愛車であるモトグッツィV850GT。リアショックはアイコン製で、標準スプリングはトリプルレート。

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