連載

【歴史を飾ったライバル対決】

■モータリゼーションが進展する中で求められた高性能モデル

トヨタ2000GT vs日産フェアレディZ Z432

1960年代、日本は前例のない高度経済成長を迎え、所得倍増計画などによってサラリーマンの収入は激増、日本のモータリゼーションに火が付いた。

1966年にデビューしたサニーのライバルとしてデビューした「カローラ1100」
1966年3月にデビューした「サニー1000」

市場には、ホンダ「N360(1967年~)」に代表される軽自動車、日産「ブルーバード(1959年~)」&「サニー(1966年~)」、トヨタ「コロナ(1957年~)」&「カローラ(1966年~)」などの大衆車、そして日産「セドリック(1960年~)」、トヨタ「クラウン(1955年~)」のような高級車が続々と投入された。

とはいうものの、欧米車に比べるとまだまだ性能は劣っており、メーカーはアピール力のあるスポーツモデルの開発を急いだ。欧米のクルマづくりの技術に追いつき、さらに日本市場における自社の技術力の高さをユーザーに知らしめるという狙いがあったのだ。

そんな時代背景のなか、当時から日本市場をけん引していたトヨタと日産から2台のGTカーがデビューした。1967(昭和42)年5月にスピードトライアルで世界記録を連発したトヨタ「2000GT」と、1969年10月に米国市場をメインターゲットにしたフェアレディZのトップグレード「フェアレディZ432」である。

スピードトライアルで速さを見せつけたトヨタ2000GT

1967年5月にデビューした「トヨタ2000GT」

「トヨタ2000GT」は、発売前にプロトタイプカーで積極的にレースに参戦して名を上げたが、発売の前年1966年10月1日~4日には、日本初のスピードトライアルに挑戦した。

スピードトライアルにチャレンジした 「トヨタ2000GT」。世界記録を連発
スピードトライアルにチャレンジした 「トヨタ2000GT」。世界記録を連発

ここで、48時間/72時間/1万5000kmの世界記録と、13のEクラス国際記録を樹立し、トヨタ2000GTの性能が世界トップであることを実証。その実績を引き下げて、トヨタ2000GTは1967年5月に市場にデビューした。

スピードトライアルにチャレンジした 「トヨタ2000GT」。世界記録を連発
スピードトライアルにチャレンジした 「トヨタ2000GT」。世界記録を連発

空気抵抗の小さいロングノーズに日本初のリトラクタブルヘッドライトを組み込んだ流線型ボディに、インテリアはローズウッド材のインパネやレザーのリクライニング付のバケットシートなどを装備して、その美しさと卓越した走りによって圧倒的な存在感を放った。

「トヨタ2000GT」のエンジン

ヤマハ主導で開発したエンジンは、3M型2.0L 直6 DOHCにソレックス・キャブ3連装を装着し、最高出力150ps/最大トルク18.0kgmを誇った。トランスミッションはフルシンクロ5速MT、ステアリングはラック&ピニオン、サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン、ブレーキは4輪サーボ付きディスクと、当時の先進技術を惜しげもなく投入。最高速度220km/h、0→400mは5.9秒、0→100km/hは8.6秒と、その動力性能は世界トップクラスだった。

「トヨタ2000GT」

車両価格も破格で当時のクラウンの約2倍の238万円。大卒初任給が2.8万円(現在は約23万円)程度だったので今なら2000万円に相当し、まさしく庶民には手の届かないスーパーカーだった。また、人気映画007シリーズ「007は二度死ぬ」で活躍し、世界的にもその美しいフォルムが話題を呼び、一躍世界が認めるトヨタ2000GTとなったのだ。

「トヨタ2000GT」が活躍した映画「007は二度死ぬ」のオープン仕様
「トヨタ2000GT」のフロントマスク。ロングノーズ・ショットデッキに、ポップアップ式ヘッドライトを装備
「トヨタ2000GT」のリアスタイル。ファーストバックに上開きテールゲートを装備
「トヨタ2000GT」のコクピット
「トヨタ2000GT」のメーター

名機S20を搭載したZ432はレース仕様のスーパースポーツ

1969年第16回東京モーターショーでお披露目されたZ432

1969年10月、誰でも運転を楽しむことができるGTカーの要素を取り入れたスポーツモデル「フェアレディZ」が誕生した。フェアレディZは、米国をメインとした海外市場をターゲットに、スポーツカーらしいロングノーズ&ショートデッキの美しいフォルムを採用。インテリアについても、コクピットの眼前に2つ、センターコンソールに3つのメーターを配置するという凝りようで、多くのファンを魅了した。

日産「フェアレディZ432」のフロントフェイス

なかでも特に注目されたのが、トップグレードの「フェアレディZ432」である。Z432は、標準グレードとは異なるS20型エンジンを搭載した最強モデルであり、432は“4バルブ/3キャブレター/2カム”を意味するネーミングだ。

「フェアレディZ432」に搭載されたS20型(直6 DOHC)エンジン(画像はハコスカGT-R含む)

S20型エンジンは、もともとは日産に吸収合併される前のプリンス自動車が製作したレーシングプロト「R380」に搭載されたGR8エンジンがベースで、3代目(ハコスカ)「スカイランGT-R」用にアレンジされた名機である。3連装ウェーバー製キャブレターを装着した2.0L 直6 DOHCのS20型エンジンは、最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpmの驚異的な性能を発揮した。

日産「フェアレディZ432」

流麗なフェアレディZのボディに、高性能S20型エンジンと5速MTとを組み合わせたZ432の最高速度は210km/hに達し、0-400m加速は15.8秒を記録。車両価格は、標準グレードZの約2倍となる185万円、今なら1250万円に相当する、まさにフェアレディZが誇る最強モデルだった。

日産「フェアレディZ432」のサイドビュー

欧州のスポーツカーにも引けを取らない走りと流麗なフォルムを纏ったフェアレディZは、お買い得感を持って歓迎され、トップグレードZ432は憧れのスーパーGTへと昇華したのだ。

トヨタ2000GT vs. フェアレディZ432

最後に、ライバルの2つのモデルの主要スペックをまとめてみよう。

「トヨタ2000GT」

トヨタ 2000GT

:3連装ソレックス・キャブを装着した2.0L 直6 DOHCエンジン搭載、価格238万円
→最高出力150ps/6600rpm、最大トルク18.0kgm/5000rpmで、最高速度220km/h、0-400m加速は15.9秒

日産「フェアレディZ432」

日産 フェアレディZ432

:3連装ウェーバーキャブを装着した2.0L直6 DOHCエンジン搭載、価格185万円
→最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpmで、最高速度210km/h、0-400m加速は15.8秒

2つのスーパーGTの性能はほぼ同等だが、車両価格(2000GT:238万円、Z432:185万円)には大きな差がある。

トヨタ2000GTは、トヨタの技術力をアピールするためのシンボル的な位置づけであり、基本的には少量生産のハンドメイドモデル、一方の日産フェアレディZ432は誰でも入手可能な価格設定の量産スポーツモデルであるフェアレディZのトップグレードだったこと、これが両モデルの価格差の主因である。

【トヨタ2000GT画像ギャラリー】

【日産フェアレディZ Z432画像ギャラリー】

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生産台数は、トヨタ2000GTが約337台、日産フェアレディZ432が約420台。いずれも、庶民にはなかなか手の届かいない高級モデルだった。両モデルともいち早く世界に飛び出し、日本にもこんな速いGTカーがあることを世界に知らしめた貴重なGTカーなのだ。

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