「HRC」のプロダクトをユーザーに届けたい。から開発が始まった

−−この「シビックタイプR HRCコンセプト」を作ろうと決定された経緯は?

柿沼さん ホンダにはF1を頂点として連綿とモータースポーツを続けてきた、歴史と技術と知見がすごくある会社です。しかもHRC(ホンダレーシング)というブランドも、二輪から発祥していますが、今では四輪も一緒になってモータースポーツ活動をしています。

ホンダにそういう大きな財産があり、「タイプR」はホンダの四輪のスポーツとして頂点を極めるというコンセプトで作られ続けています。

そこで改めて、ホンダにあるそういう技術や知見をより合体させて、もっとすごいクルマを、「HRC」という名前も使いながら、お客さんに届けたいというところが、この開発をスタートさせた起点になります。

ホンダ・シビックタイプR HRCコンセプト

−−同時に発表された「プレリュードHRCコンセプト」とは立ち位置が違うように感じられましたが、棲み分けはどうなっているのでしょうか?

柿沼さん 今回の2台で言いますと、「プレリュードHRCコンセプト」はあくまでホンダアクセスとHRCがタッグを組んで、エアロパーツをスタディする、あくまでコンセプトとしての展示ですが、こちらの「シビックタイプR HRCコンセプト」はあくまで市販化を前提として、実際のところ今まさに実走もそうですし、HRCさくらでのシミュレーターや風洞テストを含めて実際に開発している、その現車そのものになります。

−−「プレリュードHRCコンセプト」が純正用品を装着したコンプリートカーとすれば、「シビックタイプR HRCコンセプト」はグレードの一つ、ということになるのでしょうか?

柿沼さん 今売っているシビックタイプRをベースとして、さらにHRCという冠を戴いて…どういう名前にするかはまだ決まっていませんが、1台の形として設定したいと考えています。

ホンダ・シビックタイプR HRCコンセプト

北米アキュラの「インテグラ」HRCプロトとの違いは?

−−北米には「インテグラタイプS HRCプロトタイプ」がありますが、それとの違いは?

柿沼さん あれも位置付けはあくまでコンセプトで、量産前提ではないと思いますが、「シビックタイプR HRCコンセプト」は商品を作る、お客さんに渡す、そのためにHRCという冠を被ることに恥じない、ホンダ vs HRC商品の第一弾、フラッグシップモデルという位置付けですね。

アキュラ・インテグラタイプS HRCプロトタイプ

−−「シビックタイプR」ベース車に対する「HRCコンセプト」の具体的なモディファイのポイントは?

柿沼さん 一番はやはり、レーシングエアロダイナミクステクノロジーを、量産車としてホンダが売れる…衝突安全や歩行者保護などの法規制をしっかり守りながら、かつダウンフォースを増やすような仕組みを随所に散りばめて、しっかりパフォーマンスを上げています。

さらに、テストや検証を佐藤琢磨選手や岩佐歩夢選手のように超一流のトップドライバーにも、サーキットでもシミュレーターでも乗ってもらいながら、開発をしています。

そこが、タイプRから大きく進化するうえで、HRCならではの技術と知見がしっかり投影できているモデルだと思います。

−−見た目の部分だけを取っても、フロントフェンダーの造形が非常に凝っていますよね。これにはどういった狙いがあるんですか?

柿沼さん これは見ての通り、風を上方に流してダウンフォースを稼ぐことですね。フロントのチンスポイラーも、カナードの部分を含めて、とにかくダウンフォース、エアロダイナミクス効果を取れる所では取り切ろうというのが、随所の形状に反映されていますね。サイドシルもそうです。

風を上方へ流す形状が与えられたフロントフェンダー
カナード形状を持つフロントバンパーサイド
よりワイドな形状となったサイドシルガーニッシュ

一番大きなリヤスポイラーも専用の形状になったので、それを起点としてサスペンションも専用のチューニング、アップデートを入れています。ホイールも幅を広げています。

専用形状のテールゲートスポイラー
リム幅を広げたというホイール。タイヤは265/30R19 93Yのミシュラン・パイロットスポーツカップ2を装着

インタークーラーもHRC専用に容量を大きくして、かつ「HRC」と分かりやすくロゴを入れています。

見て分かる範囲でも、これらの箇所が変更されています。

「HRC」ロゴ入りの専用インタークーラー

−−エンジンやボディにも手が入っているんでしょうか?

柿沼さん それはまだ言えませんが、当然軽量化の観点でも併せて取り組んでいます。

−−今回配布されたパンフレットの中には、佐藤琢磨選手のコメントとして「さらに高められた車体剛性により…」といったことも記載されていますが…。

柿沼さん 多分そう感じたんでしょうね。一緒にテストしていても「まるでノーマルのタイプRと違う」と、佐藤琢磨選手もおっしゃっていますね。車体剛性が大幅に上がったかのように、すごくダイレクトに操れるということをおっしゃっているんですが、その表現がこういう形で書かれたのだと思います。

−−「シビックタイプR HRCコンセプト」の市販化はすぐと考えてよろしいんでしょうか?

柿沼さん それは…「お楽しみに待って下さい」としか言い様がないんですが(笑)、できるだけ早くお渡しできるように、いま開発しています。

−−現行のシビックタイプRは、なかなか欲しくても買えない状況が続いていると思いますが、今後どうなる見込みでしょうか?

柿沼さん それは私が一番歯がゆく思っていますね。欲しいと思って下さるお客さんがこれだけいらっしゃるのに、すぐお渡しできていないことが、一番反省しなければならないところです。このクルマを正式発表する時には、もっと生産体制などを含めて、選んでいただける方、買っていただける方にお渡しできるようにしていこうと考えています。

−−ベースのシビック自体の世代交代がそろそろ近付いている時期だと思いますが、それはもう少し先になりそうですか?

柿沼さん このモデルでいえば、アメリカが第二次トランプ政権になってから、規制緩和や法規制の後ろ倒しといった流れになっているので、このパワートレインで売り続けられるまで、まずはしっかり売り続けていこうと考えています。

−−それは非常に嬉しいニュースですね。今後の進化も含めて楽しみにしています!