潤滑油の将来を考えた新たな提案
「いい意味で従来品と何も変わらない」と佐々木雅弘選手がコメント!
モータースポーツ直系の高性能オイルブランドとして知られる「Moty’s(モティーズ)」。そのブランドを展開するトライボジャパンが、カーボンニュートラル時代を見据えた新たな一手を打った。
キーワードは「RRBO」。再精製基油=Re-Refined Base Oilを採用したエンジンオイルを、日本市場へいち早く投入することを「大阪オートメッセ2026」の会場で発表したのだ。

では、再精製基油とは何か。
一度使用された潤滑油を回収し、再び“基油”として生まれ変わらせたもの…それがRRBOである。ただし、そのプロセスは単純なものではない。いわゆる「ろ過して再利用する」といったレベルの話ではないのだ。

工程自体は、原油からバージンベースオイルを製造するプロセスと本質的に変わらない。蒸留し、精製し、不純物を徹底的に取り除き、分子レベルで再構成する。単に汚れを落とすのではなく、“もう一度つくり直す”という思想のもとで生まれる基油なのである。
原油は多種多様な成分が混在した状態からスタートするが、使用済み潤滑油は劣化や汚染こそあるものの、出自や成分をある程度把握できる。高度な設備と精製技術があれば、高純度な基油として再生することが可能だ。とくに硫黄分を極限まで抑え、飽和度を高めたRRBOであれば、高度精製鉱油と同等レベルの性能領域に到達できるという。
欧州ではすでに再精製基油の活用が進んでおり、義務化の動きも出てきている。モータースポーツでの実用例も珍しくない。しかし日本では、RRBO自体がほとんど流通しておらず、これを採用した市販エンジンオイルも存在していなかった。

そこでトライボジャパンは、マレーシア最大級の総合廃棄物管理企業「PENTAS FLORA」と提携。現地で高度精製されたRRBOを輸入し、それをベースに主力ハイパフォーマンスオイル「M110」と「M110 LSPI」を開発した。製品ラベルに刻まれた緑色の「RRBO」ロゴが、従来品との識別ポイントとなる。
重要なのは、このオイルが“エコ仕様の別ライン”ではないという点だ。目指したのはあくまで既存製品と同等の性能水準。サーキットでの高温・高荷重・高回転といった極限環境でも耐えうる耐久性と潤滑性能を確保し、その基準を一切崩さずに環境性能を上乗せするという発想である。
実際にRRBOベースのオイルをテストしたレーシングドライバーの佐々木雅弘選手は、「いい意味で従来と何も変わらない」とコメント。環境対応を掲げながら、体感上の違和感がない―これは最大級の賛辞と言えるだろう。

同社が再精製基油に取り組む背景には、潤滑油を取り巻く構造変化がある。従来、潤滑油はガソリンなど燃料を精製する過程で生まれる副産物という側面が強かった。しかし電動化の進展により燃料需要は減少傾向にある一方、潤滑油の需要は大きく落ち込んでいない。将来的には「潤滑油を得るために原油を使う」という構図が強まる可能性も指摘されている。
だからこそ、使用済み潤滑油を回収し、再び基油として循環させる仕組みが重要になる。日本は廃油の回収率こそ高いものの、その多くは燃料として利用されているのが現状だ。欧州では約半数が再精製基油として再生されているのに対し、日本はまだ発展途上の段階にある。
もちろん、再精製基油であれば何でもよいわけではない。品質は設備と精製技術に大きく左右される。だからこそトライボジャパンはパートナー選定を慎重に進めた。コスト面では決して有利とは言えないが、販売価格は極力据え置く方針だという。限定商品ではなく、主力製品へ順次展開する計画も明確だ。少量の採用では循環は生まれない。市場規模で動かしてこそ意味があるという考えだ。

将来的には、日本国内での廃油回収から再精製、製品化までを一貫して行う循環モデルの構築も視野に入れている。品質の高い日本の廃油を、日本で再び高性能オイルへと生まれ変わらせる。その流れが確立すれば、新たなスタンダードとなる可能性は十分にある。
なお、製造コストはバージンオイルよりも高いというが、普及を優先し、その差額はメーカー側が吸収。同等価格での販売を予定しているという。
RRBOは「環境のために我慢して使う」オイルではない。性能を担保したうえで、資源を循環させる新しい選択肢だ。サーキットで鍛えられてきたブランドが、環境という新たなフィールドへ踏み出す。性能か、環境か…そんな二者択一を超える時代が、静かに始まっている。
日本初のRRBO採用オイル。その一歩は、想像以上に大きい。
●取材協力:トライボジャパン TEL:03-3806-8277
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