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自衛隊新戦力図鑑

自爆ドローンによる空爆戦術

2月28日午前より開始されたアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃に対し、イランは湾岸地域一体への報復攻撃で応じた。その攻撃手法は、強力な弾道ミサイルと安価・低性能の自爆ドローンを組み合わせるというものだ。アラブ首長国連邦(UAE)が発表した3月4日時点の戦果に、それが表れている。

・弾道ミサイル186発を確認、うち172発を迎撃
・ドローン812機を確認、うち755機を迎撃

UAE国防省による3月4日付発表。弾道ミサイルとUAV(ドローン)が主体の攻撃であり、特にドローンの投入数が突出していることがわかる(画像/UAE国防省Xより)

イランはもともと対イスラエルを想定し、弾道ミサイルの開発と保有に力を入れてきた。さらに近年は、軍事用ドローンの製造にも力を入れていた。同国からロシアに提供された「シャヘド」自爆ドローンは、いまやウクライナ都市爆撃の主力となっている。 攻撃の“本命”は高価で破壊力のある弾道ミサイルだろうが、安価なドローンを大量投入することで、相手の防空システムの対応能力を飽和させ、本命の攻撃成功率を高めよう…という戦術だろう。

 

イラン製「シャヘド136」自爆ドローン(より専門的には「一方通行攻撃ドローン」という)。最大速度は時速185kmで、ミサイルよりはるかに低速であり迎撃することは難しくない。弾頭重量は50~90kg程度で攻撃力も限定的(写真/Behrouz Ahmadi〈Fars News Agency、CC BY 4.0〉)

アメリカ製「シャヘド」を実戦投入

今回の戦争では、実は「シャヘド」型自爆ドローンをアメリカ軍も投入している。アメリカ軍のドローンは「LUCAS(低コスト無人戦闘攻撃システム)」と名付けられている。過去に捕獲した「シャヘド」を参考に開発したものだ。中東地域を担任するアメリカ中央軍司令官クーパー大将は、「もともとイランのドローンでしたが、アメリカで中身を作り直し『メイドイン・アメリカ』のシールを貼り付けて、イランに向けて発射してるんです」と記者会見で述べている。

「シャヘド」をコピーしたアメリカ軍の「LUCAS(Low-cost Uncrewed Combat Attack System)」。2025年7月に公開され、12月に運用部隊「スコーピオン・ストライク任務部隊」が編成されたばかりだった(写真/US CENTCOM)

安価・低性能な自爆ドローンは、どちらかといえば“持たざる者”の兵器だと考えられてきた。しかし今回、“持てる者”たるアメリカが、宿敵イランの製品をコピーしてまで投入したのはナゼか?

それは費用対効果の問題だ。ウクライナ戦争の実例を見てみよう。ロシアはウクライナに対する都市爆撃で、ますます「シャヘド」型ドローンの比重を高めている。その大半は撃ち落とされているが、大量投入によって一機あたりの成功率の低さを補っている。つまり、量が質を圧倒しているのだ。また、量的優位の戦術は防衛側に対し、絶え間ない警戒維持の心理的負担と防空システム弾数の消耗を強いる。

今回のイラン攻撃のため洋上から発射されるトマホーク巡航ミサイル。アメリカの長距離攻撃兵器の代名詞だ。一発あたり250~360万ドルといわれる。一方でLUCASは一機3万5000ドルだ。もちろん、攻撃力(弾頭重量)や命中精度、攻撃成功率は圧倒的にトマホークが上ではある(写真/US CENTCOM)

ウクライナ戦争は「消耗戦」という概念を復活させた。そこでは生産に金も手間もかかるハイエンドな兵器より、低性能だが大量投入できる兵器に優位性が生まれる。アメリカ軍の低価格自爆ドローン導入は、戦力整備の考え方が変化していることを示した一例といえるかもしれない。

戦闘艦「サンタバーバラ」の飛行甲板から発射されるLUCAS。背面に見える四角い物体はスターリンクのアンテナだ。シャヘド136は、もともと通信機能を持っていなかったが、ロシア生産型でスターリンクの搭載が確認されている(写真/US CENTCOM)

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