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自衛隊新戦力図鑑

派遣されるのは海軍・海兵隊

2月28日に開始されたアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃は、終わりが見えない状況に陥りつつある。イランは報復として湾岸諸国の石油施設へのミサイル・ドローン攻撃に加え、ホルムズ海峡を通過する船舶への攻撃まで開始した。日本船籍を含む、複数のタンカーや貨物船に被害が出ている。

こうしたなか日本に配備されているアメリカ軍の中東派遣が報じられているが、いったいどのような部隊が派遣され、何ができるのだろうか? 今回派遣される部隊は海兵隊の「第31海兵遠征隊(31MEU)」と、これを含めた海軍の「水陸両用即応グループ(ARG)」だ。順番に説明していこう。

「エピック・フューリー」と名付けられたアメリカ軍のイラン攻撃作戦。ミサイル・航空攻撃により激しい打撃を加えているが、イラン指導部はなおも抗戦の姿勢を示している。ホルムズ海峡は地図の右下、UAE(アラブ首長国連邦)から海に突き出た半島の先にあり、もっとも狭い場所で30km程度しかない(画像:Office of the Chairman of the Joint Chiefs of Staff)

小規模だが機能的な機動展開部隊

海兵隊は、陸・海・空軍と並ぶ軍事組織で、上陸作戦のような「海と陸をつなぐ」戦いを専門とする。こうした戦いは、専門用語で「水陸両用戦」と呼ばれる。今回派遣される31MEUは、海兵隊が「いつでも・どこへでも送り出せるように準備している部隊」であり、以下がパッケージとなっている。

①大隊規模(800人程度+アルファ)の地上部隊
②F-35戦闘機や攻撃ヘリ、MV-22輸送機などを持った航空部隊
③これらを支援する補給・兵站部隊

全体として2500人程度と小規模な戦力ではあるが、一定期間は単独で戦闘できるように組織されている。

海兵遠征隊(MEU)は、小規模ながら多様な戦力・装備を組み合わせた独立戦闘集団となっている。今回派遣される第31海兵遠征隊は、日本の沖縄県に配備されている(写真:US Marine Corps)

次に海軍のARGは、MEUを目的に送り込むための艦艇部隊で、上陸作戦母艦となる「揚陸艦」3隻で構成される。大量の人員、車両、物資を搭載して、海上を移動できる揚陸艦の存在が、MEUの「いつでも・どこへでも」を支えている。報道では佐世保配備の強襲揚陸艦「トリポリ」の名前が挙がっている。

海軍両用戦グループ(ARG)の構成の一例。航空機運用能力の高い強襲揚陸艦に、部隊輸送力の高いドック型揚陸艦2隻がセットとなる。写真は2021年頃の佐世保配備ARG艦艇であり、手前の「ニューオリンズ」(艦番号18)は現在も佐世保配備にあり、「トリポリ」とともに中東に派遣されると思われる(US Navy)
佐世保配備のドック型揚陸艦「サンディエゴ」の艦内。艦の後部にある「ウェルデッキ」という設備から、上陸部隊を搭載した水陸両用車や小型艇を発進させることができる(写真:US Marine Corps)

本格的な地上戦をする戦力ではない

では、これら部隊で何をするのだろうか? 現時点で詳細は明らかにされていないが、少なくともこの規模で「本格的な地上戦」は不可能だ。おそらく、喫緊の課題となっているホルムズ海峡危機に対して、イラン側の船舶攻撃や機雷敷設を阻止するための、何らかの行動を実行するのではないだろうか。具体的には以下のような手段がある。

①海峡周辺の島嶼や沿岸部の限定的な占領と、そこを拠点にした海域の安全確保。
②海峡攻撃を実行する沿岸部イラン軍拠点への短時間の強襲攻撃。

「海と陸をつなぐ」戦いは、大規模な上陸作戦だけではない。小規模・短時間で打撃を加えて、すぐに撤収するような戦い方もある。これは「アンフィビアス・レイド」と呼ばれる。ボートやヘリなどで奇襲的に実行される場合もある(写真:US Marine Corps)

海兵隊の派遣は、まだ「地上戦」に直結する事態ではない。しかし、これまでの航空機や防空ミサイル部隊の派遣に比べ、より直接的に相手と交戦する地上部隊の派遣は、危機の段階がひとつあがったと考えることができる。イランが抗戦の意志を表明するなかで、戦火がおさまる気配は見えない。

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