


お話を伺った人
長谷川貴之さん Takayuki Hasegawa
チューニングショップ「BRE(ビーアールイー)」店主。数々のチャンピオンマシン製作は、何ごとも突き詰めないと気が済まない気性であればこそ。レース経験も豊富だ。
モンキーに終わりなし!「4MINI」の競技にどハマりしたキッカケ
今回はモンキーのエンジンチューンで数々の記録を打ち立ているチューニングショップ[BRE]へ訪問し、チューナーから見たモンキーエンジンの魅力についてお話を伺った。
―ストリートだけでなく、クローズドコースで開催されている周回レースや直線の速さを競うドラッグレースへも積極的に参戦されています。そもそもそうした競技に出るきっかけはなんでしょうか?
「モトチャンプに掲載されていたレース記事に興味を惹かれて、まずトライしたのがSS1/32マイルという0-50.29mの速さを競うドラッグレースです。これが本格的にモンキーに取り組んだ最初のレースで、4年目にしてやっとチャンピオンを獲得しました。その後はモンキーやゴリラで「モトチャンプ杯ミニバイクレース」や、最高速を競う「マックスゾーン」にも参戦し、ツインリンクもてぎ(現モビリティリゾートもてぎ)で開催された耐久レースの「DE耐」では、2018年・2019年の2年連続で優勝することができました(車両はホンダ・グロム)。そう考えると横型エンジンとの付き合いは長くてなかなか濃いですね」
エンジンチューンのキモは吸気系にアリ 50ccの場合は?
―その横型エンジンをチューンするうえでポイントを挙げるとしたらどこになるのでしょう? ことモンキーは社外製パーツが豊富で125cc化も容易。ここではあえて50ccに絞ったケースとしてチューニングのポイントを教えてください。
「吸気系、とくにキャブレターはかなり大事なパートと言えるでしょう。よく誤解される方が多いのですが、キャブレターの口径は大きければ大きいほど偉い、速いというわけではまったくありません。全開にした時にだけ高出力というのは基本的に公道でもレースでもあまり良くなくて、低〜中回転域からしっかりパワーが出ていないと〝乗れる〞マシンは完成しない。モンキーの場合、常用域が1万2000rpmまででよければPCφ20mmキャブレターで十分ですが、もうひとランク上を目指して高回転高出力を狙うのであればPEφ22mmキャブレターをチョイスというのがセオリーです」

―キャブレターの口径はもっと大きなΦ28mmやΦ36mmなんていうものもありますが何がダメなんでしょう?
「そうですね。大きくすればハイパワー確実、とならないのが難しいところ。もちろんレースの種類やサーキットのコースレイアウトにもよりますが、共通して言えることとして高回転まで回すことができればシフトアップの回数が減らせます。よって高回転までスムーズに回せるエンジンは結果的に扱いやすい、タイムが出せるエンジンとなるわけです。高出力も大切ですが、もっと大事なのはフラットトルクの方だと私は考えています。そのためただキャブレターの口径を大きくすればいいわけではなくバランスなのです。しかし、ドラッグレースのSS1/32マイルの時に限って言えばフリクションを減らすことに躍起で、とにかくピックアップが良くて回転がバンッ! と上げられるような過激な仕様ばかりを作っていましたけど(笑)」
「ボクはエンジンの中で何が起こっているかを常にイメージしています」

―やはり、50ccのチューンは排気量が小さいぶんシビアなのでしょうか?
「モンキーに採用されている横型エンジンは、本来タフで実直な特性だけに、ボアアップ(排気量アップ)によってパワーを稼ぐのはとても簡単です。でも一方で、排気量をアップせずにパワーアップを達成すのはかなり高度なことです。まずハイコンプピストン、点火、ハイカムに始まりクロスミッション搭載やクラッチ、フライホイール交換、エンジン内部の研磨など手法は多岐にわたります。それぞれのチューニングメニューのマッチングもまた重要で、ひと口に『これだけやっておけば大丈夫!』にはならない。そこが難しくもあり面白いところでもある。耐久性(ライフ)とのトレードオフも忘れちゃいけませんね」
―なるほど。50ccのまま速くするには吸排気系のほかにエンジン内部も手を入れないといけないんですね。まあ元々3.1psのエンジンですからイメージはできます。手を入れるといってもどれも社外製パーツで購入できるのはある意味ハードルが下がってありがたいのかも。そんなモンキーを触っていく上で、こっそり教えてもらえるようなコツってありませんか?
「たとえばピストンとシリンダーのクリアランス。経験的に、そこであまり数字を気にしすぎるとドツボにハマってなかなか前に進めなくなる。それよりもしっかりと自分の手で〝ピストンがシリンダーの中を落ちていく速度〞を感じて、そのフィーリングを信じてチューンしたい。ある種のアバウトさ(と失敗)が実はチューニングでは大切なんです。そうやってトライ&エラーを繰り返していくことで、やっと自分なりの〝正答〞が見つけられる。決して見ることのできないエンジン内部での〝爆発〞をどのくらい頭の中でイメージできるか。そこにも正否の分かれ目があるかと思います」
―頭の中でイメージ・・・・・・ちょっと難しいのでその際は相談に乗ってください(笑)。最後に、モンキーの横型エンジンの良いところを教えてください
「なんと言ってもシンプルな構造。簡単に組めて簡単にバラせて、パーツもたくさん売っていて、しかもそれらが自分で組める……最高に愉快なスペシャルエンジンです!」
―今回はお忙しいところありがとうございました。

長谷川さん自らライドしているモトチャンプ杯ミニバイクレースに参戦しているレース用マシン(ゴリラ改)。レギュレーションによって排気量は49cc以下となっており、ホイール径もノーマルと同じ8インチ限定。過度にイジリすぎないよう細かな制約がありエントリーしやすいクラスでもある。

取材協力
【BRE】公式サイトはこちら
埼玉県行田市に構える、モンキーやグロムなどの4MINIを中心に、新旧問わずさまざまな車種を手がけるプロショップ。エンスージャスティックかつ丁寧なチューニングに定評があり、レースフィールドでの高い実績に信頼を寄せるファンも多い
※この記事は月刊モトチャンプ2024年3月号を基に加筆修正を行っています


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