ラリー技術の思想を受け継ぐ、クロカン系ミニバンというデリカのDNA

三菱「デリカ」といえば、オフロードを走れるミニバンとして独自のポジションを築いている。振り返れば、デリカに「クロカン系ミニバン」というイメージが生まれたのは2代目「デリカ」が発売された1979年以降のことだ。まだミニバンという言葉さえ広まっていなかった時代に、パジェロ譲りのメカニズムによる高いオフロード性能と3列シート&スライドドアの利便性を合わせ持つ唯一無二のモデルとして認知度を高めていった。1BOXカーとは思えないゴージャスな内外装は、クロスオーバーSUVというムーブメントを先取りしていたともいえる。

2026年現在、「デリカ」は単一車種ではなく、デリカD:5とデリカミニという親子モデル、さらにコンパクトハイトワゴンのデリカD:2を加えてファミリーを形成しているのは、ご存知の通り。そして、2025年にフルモデルチェンジを果たした「デリカミニ」と、2026年にビッグマイナーチェンジを受けた「デリカD:5」がラインアップの中心となる。これら最新モデルでは、より一層オフロード性能を高めている。
オフロード性能を高めるキーデバイス「ドライブモード・ダイヤル」

その象徴であり、キーデバイスといえるのが、インパネ中央に堂々と配置された「ドライブモードセレクター」だ。デリカミニではパワー/エコ/ノーマル/グラベル/スノーと5つのモード、デリカD:5ではエコ/ノーマル/グラベル/スノーと4つのモードから、直感的にドライブモードを切り替えることができる。

オフロード性能&スライドドアというデリカの伝統を進化させたことの証明といえるのはグラベル・モードの設定だ。グラベルとは砂利道などの未舗装路を示す言葉で、モータースポーツではラリーで使われることが多い。まさにラリーによって技術を鍛えてきた三菱自動車の矜持を感じさせるドライブモードである。

現在のデリカ・ファミリーはいずれもエンジン横置きのFFベースであり、本格的なクロカン4WDと比べるとオフロード性能における素性の部分では見劣りすると思うかもしれない。しかし、一見すると不利に感じるハードウェアに、モータースポーツでの知見を活かした電子制御をプラスするというのは、ある意味で三菱自動車らしいアプローチといえる。
オフロード性能&スライドドアの利便性に、ドライブモードセレクターを操作する楽しみと電子制御によるサポートを加えた点が、最新のデリカ・ファミリーの共通要素であり、ユーザーにとっては積極的に選ぶ理由となっている。

ドライバーの意思を反映する電子制御4WD、S-AWC新採用で進化したデリカD:5の走り
まずは、マイナーチェンジにより電子制御を大きく進化させたデリカD:5の走りを磨くハードウェアを見ていこう。
ポイントは「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」の新採用だ。S-AWCといえばラリーウェポンとして生まれたランサーエボリューションにルーツを持つ電子制御4WDで、エンジン出力とブレーキ制御、そして前後駆動配分を協調させることで、スタビリティとリニアリティという両立が難しい要素を高次元でバランスさせるテクノロジーである。

しかも、ドライバーの操作をセンシングすることで操作する意図を感じ取った制御となっているのが、最新S-AWCのストロングポイント。人間の感覚に寄り添う電子制御4WDであることも見逃せない。

前述したドライブモードセレクターを切り替えることも、ドライバーの意思を示すひとつとなるが、ダイヤルを回すと目前にあるデジタルメーター全面に、各モードに合わせたイラストが表示される。切り替えたことをしっかり確認できるし、それぞれの味付けも直感的に理解できるというものだ。

この8インチフル液晶メーターは、今回のマイナーチェンジにおいて採用された新デバイス。S-AWCによる制御をグラフィックとして表示する機能も持ち、制御系の進化を実感できる。2.2Lディーゼルと8速ATを組み合わせた基本的なハードウェアはキャリーオーバーだが、ディテールアップに抜かりはない。

ワイド化でタフさを増した、デリカD:5の新デザイン



ルックスにおいても、デリカD:5は大きく進化している。最大のポイントは片側10mmのワイド化に寄与するホイールアーチモールを新設したこと。タフネスなデザインとなった18インチアルミホイールや専用設計のタイヤと合わせて、足元の力強さが増している。ボディがワイド化したといっても、全幅は1815mmに収まっており、取り回し性をスポイルしていない点も見逃せない。




あらためて外観を眺めれば、ブラック系にリフレッシュされたフロントマスク、ワイド感を強調する新デザインのテールゲートなどが、デリカの伝統と進化を具現化している。とくに「DELICA」のロゴが目立つようになった後ろ姿には、新たにS-AWCやドライブモードセレクターを得たことで走りを磨いたデリカの自信が感じられる。




フルモデルチェンジしても受け継がれたデリカミニの個性
つづいて、2023年5月の誕生から、わずか2年半でフルモデルチェンジを果たしたデリカミニの、“デリカらしさ”についてチェックしてみよう。

完全なるフルモデルチェンジでありながら、初代デリカミニからルックスのイメージはしっかりと引き継いでいる新型デリカミニ。新しくなっても4WD車には大径タイヤ&専用サスペンションを与えることで悪路走破性を高めているという伝統は守っている。加えて、兄弟車のeKスペースとは異なる形状のフロントフェンダーやボンネットなど、アウターパネルについても専用デザインとなっている点も進化ポイントだ。








その上で、冒頭でも紹介したように、ダイヤルタイプのドライブモードセレクターを新設定したことが、デリカミニらしさを高めている。
ドライブモードセレクターには、左からパワー/エコ/ノーマル/グラベル/スノーと並んでいるが、この順序にも意味がある。中央のノーマルを基準に、左側に日常的に使うモード、右には非日常を感じさせるモードを並べている。だからなのか、ダイヤルを右に回すときには、ちょっとしたときめきを感じてしまう。

未舗装路で試す「グラベル」モードの実力、パワーモードで感じる軽快な走り

そこで未舗装路でグラベル・モードを選び、実際に走らせてみた。
アクセル操作に対するエンジンレスポンスが鋭くなるとともに、トラクションコントロールやブレーキLSDがスリッピーな路面を想定した制御となることで、アクティブな走りを楽しめる。レスポンスについてはパワー・モードを選んだときと変わりない印象だが、砂利や土を跳ね上げて姿勢をコントロールする余地を残しているようだ。おそらく、トラクションコントロールの介入を抑え気味にしているのだろう。こうしたアグレッシブな味付けは、オフロード系ミニバンというデリカの伝統を感じさせるものだ。

ちなみに、舗装のワインディングにおいてパワー・モードを使って走ってみると、エンジンとCVTのレスポンスを高めながら、絶妙な電子制御によって滑らかな走りとなるように味付けられていると感じた。背の高い軽スーパーハイトワゴンで、なおかつ専用サスペンションでストロークを伸ばしているネガティブな印象は、まったく感じられなかった。

たしかにデリカにはオフロード系ミニバンというイメージが強い。しかし、スライドドアの採用や余裕のキャビンといった利便性と、安心して走れるパフォーマンスを両立しているのもデリカの伝統である。最新のデリカD:5とデリカミニにおいても、デリカのDNAは確実に受け継がれている。
ドライブモードセレクターという新たな武器を手にしたデリカ・ファミリーは、これからも唯一無二のポジションを築き続けていくはずだ。

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