タクシー配車アプリ「S.RIDE」

スマートフォンからタクシーを呼ぶ配車アプリ「S.RIDE」を利用してる読者も少なくないことと思われる。このアプリを提供しているエスライド株式会社は2018年に設立され、2019年に事業開始。大手タクシー会社を株主として、全奥に対応タクシーが2万台以上。すでに500万ダウンロード。年間乗車回数は1000万回を超えている。S.RIDEを使えば、アプリで最寄り最速のタクシーを手配できるので、道でタクシー待ちをする必要もないというわけだ。

タクシー配車アプリ「S.RIDE」

また、タクシー利用が多い法人契約も多く、2000社以上が「S.RIDE Biz」を利用している。確かに、不特定の移動のために固定費が発生する社用車の保有よりもコスト的にも効率が良い。

「S.RIDE」対応タクシー。

無人自動運転タクシー「ロボタク」へ

すでにアメリカや、自動運転先進国である中国では無人自動運転のタクシーのサービスが提供されている。日本ではより複雑で法規制も厳しい交通環境の中でこれらの国の後塵を拝している感は否めないが、研究・開発は着実に進んでいる。

S.RIDEは金沢大学初の自動運転研究スタートアップ企業、株式会社ムービーズ(moveez)と提携。無人自動運転タクシー「ロボタク」時代を見据えている。

ムービーズの実証実験車両。ルーフにはレーダー(LiDAR3機、ミリ波レーダー6機、GPSアンテナ)、制御ユニットを載せている。

ムービーズは法人としては2024年設立だが、1998年以来、自動運転を研究。2000年代から実走実験を進め、2015年には国内の大学では初となる公道での実証実験を開始。法人化以降は幕張新都心や上士幌町など、都市部や郊外、雨や雪などさまざまな交通環境での実験を進めている。

自動運転中。

タクシー乗車時間をエンタメ空間に

さらに、S.RIDEはやはり株主であるソニーグループの技術やコンテンツを利用して、タクシーをエンタテインメントモビリティとする事業も進めている。
すでに『バイオハザートレクイエム』(2026年2月)や『鬼滅の刃』(2025年7月)、映画『東京タクシー』(2025年11月)、『都市伝説タクシー』(2024年10月〜11月)といったコンテンツとのコラボタクシーを運行している。

2026年3月に実施された『バイオザードレクイエム』とのコラボ。(PHOTO:S.RIDE)

そして、今回はそこからさらに進んで、ロボタク時代に向けた移動とエンタメの連携を提案している。ドライバーがいない無人のロボタクの客室はよりプライベートな空間となる。その空間での移動時間にどのような車内体験価値を提供できるのかがテーマだ。

「自動運転×車内エンタメ」特別車両の客室。

乗車時間に新しい体験価値、思い出に残る感動を乗客に提供するために、ソニーグループの最新映像・音響機器とコンテンツを組み合わせる。スペーシャルリアリティディスプレイ(SPATIAL RIALITY DISPLAY)による3D映像、360度スペーシャルサウンドマッピング(360 Spatial Sound Mapping)による包み込まれるようなサウンド、グリッドセント(Grid Scent)による香り……これにより、視覚や聴覚のみならず嗅覚でも楽しめる環境が構築可能なのだ。

SPATIAL REALITY DISPLAY
360 Spatial Sound Mapping

「自動運転」×「車内エンタメ」特別車両出発式

2026年4月2日、これらのコラボによる実証運行の特別車両出発式が、運行エリアである横浜みなとみらいで実施された。

「自動運転×車内エンタメ」特別車両

運行車両は先代モデルのトヨタ・アルファード(ハイブリッド)で、ムービーズの実証実験車両だ。実証運行は音楽とエンタメのフェスである「CENTRAL2026」の開催エリアである横浜みなとみらい地区。ここに2台の特別車両が配置されている。

「自動運転×車内エンタメ」特別車両

利用可能な期間は「CENTRAL2026」の会期中である4月3日(金)〜4月5日(日)の3日間。配車アプリ「S.RIDE」から乗車予約が可能となっている。エリア内であればどこでも呼ぶことができるが、降車場所は「CENTRAL2026」の4箇所の会場となる(Kアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫・赤煉瓦パーク、KT Zepp横浜、臨港パーク)。

『CENTRAL2026』の会場マップ。基本的に運行はこの会場間移動で行なわれる。

安全や法規のためにドライバーは乗車しているが、進後は目的地に到着するまで基本的に自動運転。交通法規に則った安全第一で運行されるのだが、駐車車両の回避や流れに乗ったスピード、横断歩行者を検知しての停車などスムーズに運行される。車内で提供されるコンテンツに没入していれば、乗車時間はあっという間だ。

目的地の選択画面。

コラボコンテンツは『ぼっち・ざ・ろっく』

『ぼっち・ざ・ろっく』仕様の「自動運転×車内エンタメ」特別車両。

コラボするコンテンツは音楽アニメとして人気を呼んだ『ぼっち・ざ・ろっく』で、「CENTRAL2026」のコンテンツにも含まれているのが今回のコラボの理由のひとつだ。

『CENTRAL2026』出演アーティスト。(『CENTRAL2026』オフィシャルサイトより)

車内は作品のタペストリーやキャラクターのぬいぐるみを配し、各会場間の移動時間に合わせて6〜7分の映像がサウンド、香りとともに楽しめるようになっている。

「自動運転×車内エンタメ」特別車両の客室。

映像は3Dだが、視聴者の目に合わせて位置がリアルタイムで調整されるため、車内で映像を見るのが苦手な人でも酔わずに楽しめる。サウンドの臨場感はもちろん、キャラクターイメージによる香りの演出など、まさにソニーの映像・音響の最先端を体感できるのだ。

ディスプレイ上部に設置されたカメラで視聴者の頭や目の位置を捉え、それに合わせた3D映像を映すため、多少動いても違和感の無く見ることができた。
センターコンソールに置かれたハニカム状の機器がグリッドセント=アロマディフューザー的なもの。その上に360度スペーシャルサウンドマッピング置かれてている。スピーカーはこれを含め3機設置。キャラクターのもいにフィギュアも飾られている。
香りはキャラクターのイメージに合わせて既存の香水を組み合わせたもの。

映像と音楽自体は既存の再編集だが、案内時の音声やエフェクトは今回のために用意されたもの。作品のファンならぜひチェックしておきたい。

車内で流れる映像。写真ではわからないが、ゴーグルや根金なしに飛び出す3D映像だ。
CENTRAL MUSIC&ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026
会期:2026/4/3(金)、4(土)、5(日)

会場:
Kアリーナ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい6丁目2-14)
横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場(神奈川県横浜市中区新港1丁目1)
KT Zepp Yokohama(神奈川県横浜市西区みとみらい4丁目3-6)
臨港パーク(神奈川県横浜市西区みなとみらい1)

各公演名・開催日時:
CENTRAL STAGEK(アリーナ横浜)
4/3(金) 開場16:30 / 開演18:00
4/4(土) 開場15:00 / 開演16:30
4/5(日) 開場15:00 / 開演16:30

Echoes Baa 2026(横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク特設会場)
4/4(土) 開場11:00 / 開演12:30
4/5(日) 開場11:00 / 開演12:30

CENTRAL LAB.(KT Zepp Yokohama)
4/4(土) 開場15:00 / 開演16:00
4/5(日) 開場15:00 / 開演16:00

CENTRAL FIELD(臨港パーク)
4/3(金) 開場12:00
4/4(土) 開場11:00
4/5(日) 開場11:00

オフィシャルサイト:https://central-fest.com

自動運転ロボタクシーの次の段階へ

前述の通り、ロボタクシーはすでにアメリカや中国で実用化されている。日本でも早晩実用化されるだろう。では、実用化された時にその空間で何をするか、何ができるかが今回の実証運行のテーマであり、最新AV機器による没入感のあるコンテンツが用意されたわけだ。

交差点で横断歩行者を待つ自動運転。交差点で横断歩行者に反応するブレーキがやや強かった印象。

今回は短時間の実証運行に合わせて短時間のコンテンツが用意されたわけだが、長時間乗車のようなケースなら映画やライブ映像などのコンテンツも楽しめそうだ。

乗車中の映像。

また、コンテンツのみならずCMなどで広告収入に繋げるということも考えられる。五感に訴えることができるのだがら、たとえば外食産業系なら調理映像に加え、肉の焼ける音や匂いも組み合わせれば、視聴者への訴求力はかなり高くなるのは間違いない。ただ、産業倫理的(サブリミナル的)な問題はありそうだが……。

Grid Scent

ロボタクは当然AIアシスタンスが搭載されることになるだろうが、CMで刺激された欲求に対して「目的地付近の美味しい店を教えて」といった連携も容易に想定される。

現在、レクサスLMのようなハイエンドミニバンには前席と後席を完全に隔てる大型ディスプレイを用意した車種も出てきている。そうした車種のオプションとして今回のようなシステムが設定される可能性もある。さらに言えば、ディスプレイに限らずパッセンジャースペース全体が360度モニタとなり、ゴーグルを使わないVRエンタテインメントが楽しめるようになるだろう。

レクサスLM

もちろん、これらはおそらく現行で公開されるレベルに無いだけで確実に研究・開発が進んでいるだろう。今回はいわばその初期段階が実験として提供されたわけだが、自動運転×没入型エンタメによる新たな乗車価値は、まだまだ大きな可能性を秘めていると感じられた。

株式会社エスライの橋本洋平代表取締役社長(左)と株式会社ムービーズのエリック・ウェイ代表取締役CEO(右)。
自動運転の様子を動画で見る。