連載

自衛隊新戦力図鑑

南西諸島の島々に陸自部隊を運ぶための輸送艦

3月31日、海上自衛隊呉基地において輸送艦「あまつそら」・「あおぞら」の両艦の艦旗授与式が実施され、正式に自衛隊に配備された。それぞれ「にほんばれ」型輸送艦の2番艦、3番艦にあたる。「にほんばれ」型は全長80m、排水量2400トンの、小型輸送艦であり、南西諸島の離島間輸送を目的に建造された。

艦旗授与式のため、輸送艦「あまつそら」の前に整列した両艦の乗員。ややわかりにくいが、紺色の陸自制服が大半を占めていることがわかる。なお、艦旗授与式は3月31日に実施されたが、実際の就役は「あまつそら」が27日、「あおぞら」は30日である(写真/筆者)

「にほんばれ」型輸送艦の最大の特徴は艦首が観音開きになる「バウドア(艦首トビラ)」と、中から伸びてくる「ランプウェイ(渡し板)」だ。「にほんばれ」型は、海岸に直接乗り上げて、ランプウェイを通して車両や物資を陸揚げすることができる。また、海岸に乗り上げるため船底が浅く平らなため、大型艦が入港できない小規模な港湾にも入港することができる。

バウドアを開いた1番艦「にほんばれ」。内部に折り畳まれた「ランプウェイ」が収納されている(写真/ふにに)

「にほんばれ」型輸送艦が配備されているのが、陸海共同部隊「自衛隊海上輸送群」である。南西諸島防衛に向けて、陸上自衛隊部隊の海上輸送や補給などを目的として2025年3月に創設された。

“陸海共同”と書いた通り、海上輸送群は陸上自衛官、海上自衛官が混成の部隊である。ただ、人員のほぼ大半は陸上自衛官であり、群司令も陸上自衛隊幹部が努めている。一方で海上自衛官は艦長など、艦艇運用の重要な役割を担っている。

「あまつそら」のシンボルマーク。カエル=両生類(amphibian)は、上陸作戦のような海と陸を繋ぐ「水陸両用作戦(amphibious operations)」を象徴する存在として知られている(写真/筆者)

名実ともに「陸上自衛隊の輸送艦部隊」へ

しかし今回、「あおぞら」艦長には、陸上自衛隊から岡崎健太郎3等陸佐が就任した。式典にあたり「あまつそら」艦長 武市純一3等海佐と並ぶ姿に、筆者は驚かされたが、実はすでに「陸上自衛官として初めての艦長」が誕生していると知り、さらに驚いた。

吉田防衛大臣政務官から艦旗を授与される「あおぞら」艦長 岡崎健太郎3等陸佐(写真/筆者)

取材に応じてくれた陸上自衛隊中部方面隊によれば、初の陸自艦長は「にほんばれ」艦長の岩田伸太郎3等陸佐だという。「にほんばれ」は昨年2025年4月に艦旗授与式が実施され、筆者も取材に訪れた。そのときは海上自衛隊幹部である伊藤洋隆3等海佐が艦長に就任したが、現在は岩田3佐が努めているという。

“陸海共同”でスタートした海上輸送群だが、予算面では陸上自衛隊の扱いとなっており、前述したとおり人員のほとんども陸上自衛官だ。艦艇運用のノウハウを伝えるため、少数の海上自衛官が加わっているものの、最終的には陸自単独運用の「陸上自衛隊の輸送艦部隊」となると思われる。

青空のもとの「あおぞら」。雨が心配された授与式だったが、開始直前に雨は止み、やがて雲の切れ間から青空がのぞき両艦を照らした(写真/筆者)

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