ホンダ・レブル250 Sエディション・Eクラッチ……731.500円

今回の試乗車は、ヘッドライトカウル、フォークブーツ/カバー、ダイヤモンドステッチ風ワディング加工が施されたシートなど、純正アクセサリーパーツを標準装備するSエディション。

7年連続で250ccクラスの王者に君臨

2025年3月からホンダがレブル250/Sエディションに追加したEクラッチ仕様に関して、世間には“待ってました‼”と感じた人が大勢いたようで、5月の時点では新車購入者の約8割が選択しているらしい。そしてその事実を知った僕の心境は、なかなか微妙だった。

デビュー当初はオーソドックスなハロゲンバルブ式だったヘッドライトが、4灯LED式に変更されたのは2020年型から。同時に前後ウインカーとテールランプもデザイン変更とLED化が行われた。

と言うのも、現在のホンダのラインアップにはレブル250の基本設計を転用して生まれた派生機種、スクランブラースタイルのCL250が存在し、足つき性よりも快適性や運動性を重視する身としては、CL250のほうが好みなのである(シート高・前後ホイールトラベルは、レブル250:690mm・120/95mm、CL250:790mm・150/145mm。ただしレブル250のフロントのホイールトラベルは140mmという説もアリ)。しかも僕は過去にガチ1000kmで取り上げたCBR650RのEクラッチ仕様に対して、普段からクラッチ操作を苦にしていない自分にとっては、マストの装備ではないという印象を抱いたのだ。

パワーユニットの右側に備わるEクラッチのモーターユニットは、CBR650Rではまったく気にならなかったけれど、レブル250ではちょっと当たるかな……という印象。なお水冷単気筒エンジンのルーツは2011年から発売が始まったCBR250Rで、トレールバイクのCRF250Lシリーズも同系ユニットを搭載。

というわけだから、レブル250のEクラッチ仕様を当企画で取り上げることにノリ気ではなかったものの、2輪メディアで仕事をしている人間が、2018年から7年連続で250ccクラスの販売台数でトップを堅守しているモデルに対して(デビューは2017年4月)、そんな認識でいいのか?という気がしないでもない。そこで、ホンダからレブル250のEクラッチ仕様を借用し、約2週間に渡ってじっくり付き合ってみることにした。

Eクラッチの美点とは?

本題に入る前にEクラッチの概要を説明しておくと、この機構の美点は発進・変速・停止時にクラッチ操作が不要になること。もっとも、上図を見ていただければわかるように、ギアチェンジはライダーが行うので、オートマチックのDCTほど楽チンではないのだが、既存のMT:マニュアルトランスミッション車と比べれば、ライディングは相当にイージーになる。

なおDCTを含めた他のオートマチックとは異なり、Eクラッチはクラッチレバーを握れば即座にMTモードに変身する。つまり、クラッチを自分で操作するかしないかは、ライダーに任されているのだ。ただし、Eクラッチの第1号車となったCBR650R/CB650Rが、電子スイッチで完全なMTモードへの切り替えができるのに対して、レブル250にそういった機構は備わっていない。試乗前の僕は、その点が気になっていたのだが……。

レブル250とEクラッチの愛称は抜群‼

まったく問題がなかった。と言うより、今回の試乗期間中に僕がクラッチレバーを握ったのは、車両を借用した直後の数回だけで、MTモードの必然性は微塵も感じなかったのである。それどろこかロングランの後半では、Eクラッチの利便性に大いに感心してしまったのだ。

うーん。我ながらとんでもないレベルの変節だが、べつにCBR650RのEクラッチと比べて、作動性が良好になったわけではない。レブル250のほうが点火カットと半クラッチの時間は長いようだけれど、CBR650RのEクラッチもナチュラルでスムーズだったのである。

ネイキッド仕様のCB650Rと共に、Eクラッチ採用第1号車となった2024年型CBR650R。

では何が違うのかと言うと、最大の原因は車両のキャラクターではないだろうか。ツアラー的なところがあっても、CBR650Rが本領を発揮するのは峠道で高回転域を使ってスポーツライディングしたときで、僕はそういう場面でEクラッチの優位性をあまり感じなかった。ところがレブル250は、エンジンが低中回転域重視で、峠道ではそんなにアグレッシブに走らないからか(と言っても、スポーティな走りは十分に楽しめる)、クラッチ操作を伴わないギアチェンジが何だか心地良く、車両のキャラクターにマッチしている……と思えたのだ。

ただし、同業者の中にはCBR650R/CB650RのEクラッチ仕様に対して、左手の操作が不要になるおかげでブレーキングやライン取りに集中でき、MT車より速く・楽しく走れると言う人が数多く存在する。その意見を否定するつもりはないのだけれど、CBR650RのEクラッチ仕様で峠道を走っているときの僕は、レブル250のEクラッチ仕様ほど無心にはなれなかった。

車両のキャラクターに続く原因は、パワーとトルク。2台の数値にはかなりの差があるので(CBR650R:95ps/12000rpm・6.4kg-m/9500rpm、レブル250:26ps/9500rpm・2.2kg-m/6500rpm)、同じようなペースで走るとなったら、ギアチェンジの回数はレブル250のほうが圧倒的に多くなる。となれば、レブル250のほうがEクラッチの恩恵は感じやすいのは当然だろう。

もっとも、前述したように僕はクラッチ操作を苦と認識した記憶がないし、ある程度のスピードを維持するために行う頻繁なギアチェンジは、250cc以下の醍醐味のひとつと感じていた。でも今回の試乗中に2度のロングツーリングに出かけた際は、Eクラッチが疲労軽減に大いに貢献してくれることをしみじみ実感したのだ。

また、CBR650Rとレブル250のEクラッチで、僕が大きな違いを感じたのは未舗装林道での扱いやすさとUターンの容易さ。CBRR650Rは恐る恐るになりがちで、個人的にはクラッチレバーを握ってMTモードにしたほうが安心できたものの、レブル250はEクラッチのままで全然OK。その背景にあるのは、おそらく車格とエンジン特性で、レブル250のEクラッチ仕様で未舗装林道を走っているときの僕は、同系エンジンを搭載しているのだから、CRF250L/ラリーのEクラッチ仕様を作ってもいいのではないか……という夢想していた。

スーパーカブに通じる操作感

1958年の時点で、すでに左手の操作を不要としていた初代スーパーカブC100

そんなわけで以前の姿勢とは一転して、このモデルではEクラッチ肯定派になった僕が、試乗の途中から頭に思い浮かべていたのはスーパーカブだった。もっとも、スーパーカブのクラッチは自動遠心式で、ギアチェンジを行う際はスロットルを戻す必要があるのだけれど、左手の操作を必要とせず、シフトアップ&ダウンが小気味よく行えることはEクラッチとスーパーカブに共通する要素。改めて考えるとCBR650RのEクラッチ仕様にもそういう資質は備わっていたはずだが、エンジンがパワフル&トルクフルな並列4気筒だからだろうか、僕はその事実に気づけなかったのである。

さて、あまり深く考えずに書き進めていたら、Eクラッチに関する話だけでかなりの文字数になってしまったが、2025年型レブル250は快適性という面でも劇的と言いたくなるレベルの進化を実現していた。その詳細は、近日中にアップする予定の第2回目で紹介したい。

2025年型レブル250は、スタンダードのマニュアルトラスミッション車(カラーリングはマットディムグレーメタリックみ)、スタンダードのEクラッチ仕様(マットガンパウダーブラックメタリック、マットフレスコブラウン)、SエディションのEクラッチ仕様(パールシャイニングブラック、パールカデットグレー)という3機種を展開。

長距離移動でお尻が痛い、は過去の話。快適性を大向上していた2025年型レブル250 1000kmガチ試乗【2/3】

2025年型レブル250の最大の注目要素は、第1回目で紹介したEクラッチ仕様の追加である。でも従来型の乗り心地に不満を抱いていた筆者にとっては、シート・リアショック・ハンドルなどの刷新で快適性が向上したことのほうが、インパクトは強烈だった。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ロングランに適した資質が整ってきた、2025年型レブル250|1000kmガチ試乗【3/3】

フレンドリーではあるけれど、旅に向いているとは言い難い。先代以前のレブル250に、僕はそんな印象を抱いていた。とはいえ、各部の改善で快適性が向上し、利便性に優れる純正アクセサリーを追加した2025年型は、ロングランに適した資質が徐々に整ってきたようだ。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

主要諸元

車名:レブル250 Sエディション Eクラッチ
型式:8BK-MC49
全長×全幅×全高:2205mm×810mm×1090mm
軸間距離:1490mm
最低地上高:134mm
シート高:690mm
キャスター/トレール:28°/110mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程:76mm×55mm
圧縮比:10.7
最高出力:19kW(26ps)/9500rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:3.416
 2速:2.250
 3速:1.650
 4速:1.350
 5速:1.166
 6速:1.038
1・2次減速比:2.807・2.571
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック
タイヤサイズ前:130/90-16
タイヤサイズ後:150/80-16
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:175kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:11L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:47.0km/L(2名乗車時)
燃費消費率WMTCモード値・クラス2-2:34.9km/L(1名乗車時)