ホンダ・レブル250 Sエディション・Eクラッチ……731.500円

レブル500とシャシーの基本設計を共有しているだけあって、従来の250ccクラスの基準で考えれば、レブル250の車体は大柄な部類。軸間距離は1490mmで、車重は171kg(Eクラッチ仕様は174kgで、Sエディション・Eクラッチ仕様は175kg)。

大ヒットモデルになれた理由

2017年4月から発売が始まったレブル250は、2018年から7年連続で250ccクラスの販売台数でトップを堅守している。そしてこのバイクが大ヒットした理由を周囲の友人知人や同業者と話すと、誰もがシートの低さ(250ccクラスではダントツに低い690mm)を主因とする超良好な足つき性を挙げるものの、以前から僕はそれだけでこんなにヒットするわけはないと感じていた。

と言うのも、レブル250はスポーツライディングが楽しいバイクなのだ。などと書くと、“タイヤが前後16インチのクルーザーでスポーツライディング?”というツッコミが入りそうだが、このモデルは乗り手の操作に対する反応がきっちりしているし、フロントまわりにスランテッドアングル(フロントフォークの角度は30度だが、フレームのヘッドパイプの角度=キャスター角は28度)を採用した効果で意外によく曲がるし、アクセルを開けた際のトラクションもなかなか明確。さらに言うなら着座位置とライダーの視点が低い効果で、車体を傾ける際の不安は少なくて済む。

もちろん基本的な構成はクルーザーだから、ワインディングをムキになって走るとバンク角や乗車姿勢など、いろいろな面で不満が出てくるのだけれど、常識的な速度で走っているぶんには十分にスポーツライディングが楽しめる。つまり、良好な足つき性だけではなく、操る楽しさを備えているからこそ、レブル250は大ヒットモデルになれたのだろう(ヨーロッパではシャシーの基本設計を共有するレブル500が好セールスを記録)。

レブルの問題を解消したCL

ただし、過去にこのモデルでロングランに出かけた僕は、あまりの乗り心地の悪さに落胆。約300kmを走った時点で尻と腰の痛みに耐えられなくなり、できることなら途中でトランポに積載して帰りたいと思った。もちろん身体の痛みの感じ方は乗り方や体格などによって異なるから、300kmくらいは余裕と言う人もいるだろう。

とはいえ、2023年にレブル250の派生機種としてスクランブラーのCL250が登場したことで、僕の不満は意外な形で解消された。レブル250のエンジン+フレームを転用しながら、外装に加えて、ライポジ関連パーツや足まわりを専用設計したCL250は、足つき性を追求しすぎないことで、良好な乗り心地を獲得していたのだ(シート高・前後ホイールトラベルは、レブル250:690mm・120/95mm、CL250:790mm・150/145mm。ただしレブル250のフロントのホイールトラベルは140mmという説もアリ)。

いずれにしても近年の僕の中では、足つき性を何よりも重視するライダーにはレブル、快適なロングランを楽しみたいライダーにはCL、という図式が出来上がっていたのだが、2025年型レブル250は快適性を意識した仕様変更を受けている。具体的には、シート内部のウレタンを高密度素材に変更し、リアショックのバンプラバーの形状を見直し、ハンドルは絞り角を微妙に強くして幅狭化。その内容から推察すると、従来型よりはマシになっていそうだが、快適性の劇的な改善は期待できないだろう。

悪路を含めた守備範囲の広さを意識したCL250のタイヤサイズは、F:19/R:17インチ。エンジンは低中回転域重視の特性で、最高出力は24ps/8500rpm、最大トルクは2.3kg-m/6250rpm。

まさか⁉の進化を遂げた2025年型

ところが僕の予想に反して、2025年型レブル250の変化は劇的だったのである。いや、この件については第1回目に記したEクラッチとの相性以上に驚きだったのだけれど、今回の試乗期間中に2度のロングランに出かけた僕は、腰と尻に露骨な痛みは感じなかったのだ‼

その主な原因はシートとリアショックの見直しだが、ハンドルグリップの位置がライダーに近くなって乗車姿勢に余裕が生まれ、路面の大きな凹凸を通過する際にシートから尻を浮かせやすくなったことも、快適性に貢献しているに違いない。さらに言うなら、純正タイヤをダンロップD404→IRC GS23に変更したことも、乗り心地が良好になった一因ではないだろうか。

まあでも、2025年型レブル250の快適性がCL250に及ぶのかと言うと、そこまでではない。とはいえ既存のレブル250に対して、このバイクではツラサが先行して、ロングツーリングの楽しさを味わいづらいんじゃないか?という印象を抱いていた身としては、2025年型の仕様変更は大歓迎。超良好な足つき性を微塵も損なうことなく、しかも大がかりな刷新を行うことなく、よくぞここまでの快適性を実現したものである。

まったり巡航の楽しさを認識

なお快適性向上による恩恵と言えば、一番は心身の疲労が少なくなることだが、楽しさが長く持続することも大きなメリット。そのうえ今回の試乗で僕は、CBR250R用をベースとする水冷単気筒が程よい鼓動感を備えていて、まったり巡航が楽しいことを認識。この点については、オーナーにとっては何を今さらの話だが、僕の場合はある程度の快適性が確保されたことで、ようやくレブル250のエンジンの魅力に気づけたのである。

いずれにしても、第1回目で述べたEクラッチの導入に加えて、快適性が大幅に向上したレブル250に対して、僕の好感度メーターは急上昇。と言っても、自分の好みがCL250であることに変わりはないのだけれど、これまでの僕はレブル250を購入しようというライダーから相談を受けたら、CL250推しの返答をしてきたのだが、今後は両車の美点を平等に語ろうと思う。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1100kmを走っての実測燃費を紹介します。

Eクラッチは導入していないものの、2025年型レブル250で行われた各部の改善は、並列2気筒エンジンを搭載する兄貴分のレブル500も共通だ。

2週間、1000km乗った感想|レブル250のEクラッチ仕様は、もはやスーパーカブである⁉ 1000kmガチ試乗【1/3】

最初に告白しておくと、筆者はレブル250よりCL250のほうが好みで、左手の操作が不要となるEクラッチには必然性を感じていない。ところが、2025年から発売が始まったレブル250のEクラッチ仕様を体験したら、意識がガラリと変化することとなった。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ロングランに適した資質が整ってきた、2025年型レブル250|1000kmガチ試乗【3/3】

フレンドリーではあるけれど、旅に向いているとは言い難い。先代以前のレブル250に、僕はそんな印象を抱いていた。とはいえ、各部の改善で快適性が向上し、利便性に優れる純正アクセサリーを追加した2025年型は、ロングランに適した資質が徐々に整ってきたようだ。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

主要諸元

車名:レブル250 Sエディション Eクラッチ

型式:8BK-MC49

全長×全幅×全高:2205mm×810mm×1090mm

軸間距離:1490mm

最低地上高:134mm

シート高:690mm

キャスター/トレール:28°/110mm

エンジン形式:水冷4ストローク単気筒

弁形式:DOHC4バルブ

総排気量:249cc

内径×行程:76mm×55mm

圧縮比:10.7

最高出力:19kW(26ps)/9500rpm

最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm

始動方式:セルフスターター

点火方式:フルトランジスタ

潤滑方式:ウェットサンプ

燃料供給方式:フューエルインジェクション

トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン

クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング

ギヤ・レシオ

 1速:3.416

 2速:2.250

 3速:1.650

 4速:1.350

 5速:1.166

 6速:1.038

1・2次減速比:2.807・2.571

フレーム形式:ダイヤモンド

懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm

懸架方式後:スイングアーム・ツインショック

タイヤサイズ前:130/90-16

タイヤサイズ後:150/80-16

ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク

ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク

車両重量:175kg

使用燃料:無鉛レギュラーガソリン

燃料タンク容量:11L

乗車定員:2名

燃料消費率国交省届出値:47.0km/L(2名乗車時)

燃料消費率WMTCモード値・クラス2-2:34.9km/L(1名乗車時)